2002/3/10 全日本実業団ハーフマラソン
川上の言う“新しい目標”のヒントとは……
『誰よりも早く(1万mで)30分台を出したい気持ちはあります。新しい目標もできましたし…』


 川上優子(沖電気)に久しぶりに笑顔が見られた。
 アトランタ五輪&シドニー五輪連続1万m代表(アトランタは7位入賞)、98年アジア大会1万m金メダル。2000年には日本記録(31分09秒46)もマーク。トラックを代表する選手として活躍してきた。しかし、昨年は故障(座骨神経痛)のため、日本選手権を欠場し世界選手権へ出られなかった。それどころか、5000mも1万mも、日本100傑に入っていないのだ。駅伝シーズンも間に合うことは間に合ったが、とても完調とはいえない走り。12月の全日本実業団対抗女子駅伝は3区で区間10位、チームは15位に沈んだ。
 今大会、練習が継続して積めていない影響か、終盤は決して楽ではなさそうだったが、京セラの若手トリオには意地でも離されない。そしてトラックまで勝負を持ち込めば川上のものだった。すでにマラソンにも出場している川上だが、ハーフマラソンにはそれほど多く出ていない。2年前に出した1時間10分33秒の自己記録を1時間9分38秒と大幅に更新した。

「ここにきてやっと、競技者らしい練習が続けて1カ月できて、やっとみんなと同じスタートラインに立てました。(福士さんの活躍は)いい意味で刺激になっています。負けたくありませんし、早く追いついて一緒にレースをしたいですね。誰よりも早く(1万mで)30分台を出したい気持ちはあります。新しい目標もできましたし…(具体的には)内緒なんですが。
 2月頭の宮古島での2週間の合宿が転換期でした。そう思って行った合宿でしたし、そこでうまく我慢ができ、宮崎に戻ってリズムよく、ガンガン練習が継続してできました。目標がはっきりして、練習をクリアする苦痛がなくなったんです」

 川上の言う“新たな目標”とは何なのだろうか。具体的にはどうしても教えてもらえなかったが、「早く30分台を出して……」と言っていることから、専門種目の1万mで早めに大きな目標を達成し、別の種目で頑張りたいという意味にもとれるが……。
 谷口浩美副監督も、具体的には聞いていないという。しかし、宮古島の合宿については以下のように説明してくれた。
「これまでよりも(1日)3回練などで動く回数を増やしました。走るだけでなく、いろいろなトレーニングを組み込んで。3回のうち1回は遊びにしたり、でも、2〜3日遊びは入れなかったり。集中するときと抜くとき、追い込んだりストップさせたりを、選手を見ながら判断しました。結果的に1週間で200kmとか、“気づいたらこれだけ走っていた”と選手が感じるような流れになったと思います。海外のマラソン選手なんかがやっていることを参考にしました」
 ……これだけの材料で断定するのは危険なので、ここでは(推論の)結論は避けたい。

 ともかく、川上が復調したことで、春のトラックシーズンがますます楽しみになった。渋井陽子(三井住友海上)に福士加代子(ワコール)、そして川上。新旧(まだ26歳だが便宜的に川上は“旧”とさせてもらった)のタイプの違う3選手による30分台先陣争いは、2002年のトラックシーズンの大きな話題となる。サッカーのワールドカップよりも、10倍は面白いはずだ(見る側の主観による)。

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