2002/5/18 関東インカレ最終日 1部成績一覧
内藤、決勝の13秒84は過去1年間で最低記録
走力アップに対応できず、“壁”に当たっているのか?
昨年110 mHで日本選手権優勝(世界選手権代表決定)、世界選手権準決勝進出、ユニバーシアード決勝進出、日本記録更新(13秒50)と、破竹の進撃を見せた内藤真人(法大)。その快進撃の第一歩が5月の関東インカレだった。準決勝で13秒77と学生記録に0.01秒と迫ると、決勝では13秒69で学生記録を更新。のみならず、昨年のエドモントン世界選手権A標準をも突破した。
「去年のシーズン当初はユニバーシアードが最大目標でしたが、関東インカレの結果で世界選手権が目標に変わりました」(内藤)
世界に目が向くきっかけとなったのが、関東インカレだったのだ。
ところが今年は、同じ関東インカレで“壁”にぶつかっている(後述するが、内藤自身は“壁”という表現を使おうとしていない)。大会3日目の準決勝では13秒76(+1.3)だったが、最終日の決勝は13秒84(+0.8)。スタートから序盤こそよかったが、後半はまったく伸びが見られなかった。2位の吉川善崇(日体大3年)とは0.10秒差。13秒84は「決勝で出した記録の中では、この1年間で最低」(内藤)だというし、学生選手相手に0.10秒差しかつけられないのも、昨年の関東インカレ(2位の山田真利に0.03秒差)以来ではないだろうか(未確認)。
「去年の大阪の84より悪いですね。この条件で、この記録は…。水戸では13秒5台でしたから、短期間でここまで変わってしまうのかと、自分でも驚いています。連戦で疲れがあるのかもしれませんが…。今日は後半が伸びませんでした。1台目は行けてるのですが、それが加速につなげられなかった。去年の関東インカレは序盤はドベ(最下位)で、1台1台加速していった展開で、それが持ち味でもありました。それが今は、1台目でポーンと出て、あとはヒューって(減速する)感じです。スタートは格段に上達したんですが…(寺田注:去年の国体頃に大きな技術改善をしている)。逆に、5台目までを楽に行って、そのあと加速するイメージの方がいいなじゃないかとも、今、思ったところです。そんなこと、できないと思うんですけどね」
原因は、走力がアップしたこと。冬期はハードルをまったく跳ばず、スプリント練習に明け暮れた。200 mのトライアルなどでも、大きく自己記録を更新している。
「走力は格段にアップしたと思うんですが、技術と噛み合っていない感じです。走力をハードル間の9.14mで使い切れていません。踏み切り位置の問題だと思うんですが、去年までは“上から下に”という感じでハードルに入れたのですが、今は“下から上へ”という感じのハードリング。スピードが出ても、ハードリングでのロスが大きくなっています。
水戸国際のビデオを見たら、中国選手と同じタイミングで踏み切っていたんです。僕の方が踏み切り位置がハードルに近く、着地位置が遠いんです。ホントは、より近い位置に着地したいんですけど…。(ポイントは)踏み切ってからいかに巻き込んでいけるか、です。外人選手はハードルを嘗め回すようなリード脚の降ろし方をしますからね。近くに接地した方が、着地したあと、体重を乗せやすいんです。今まではそんなに考えていなかったのですが、これからはハードル上のことも考えていかないと…。
走力は重要です。外人を見ても、スプリント力に比例して(110 mHの)記録も上がっています。世界のハードラーはインターバルを全力で走っていませんから。僕はすべて全力なんですが、あの人たちは刻む感じなんです。でも、これからは走力と並行して(技術やハードリングとの)マッチングも重要になってくると思います。いける感覚はあるんですが、なかなか思うようにいきません」
内藤の話を聞いていると、かなり深刻に悩んでいるように聞こえるが、織田記念で13秒60(+1.2・予選)と13秒56(+2.2・決勝)、水戸国際で13秒55(+0.6)のセカンド記録を出したばかり。好調という言葉を躊躇なく使っていい結果を出しているのだ。次のコメントからわかるように、本人も壁に当たっているという認識ではない。
「スランプじゃないと思うし、そんなに落ち込むことなくやっていけると思います。平均したら、去年よりも0.2〜0.3秒は上がっています。安定性は悪くないですから、あとはここぞというレースで、(走力と技術を)噛み合わせられるかどうか、です。
もしも踏み切りとかが合ってくれば、今の体力でも13秒4台、3台は可能だと思います。でも、今の動きでは、見えてきません。出せる気もするんですが、全てが噛み合わないと難しいですね」
壁に当たっているような印象をこちらが受けるのは、内藤の目指すところが高くなっているからではないだろうか。
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