2018/2/12
飯塚翔太が初の高地トレーニングに出発
冬期のテーマは「いつでもスピードを出せる身体にすること」
200 m日本歴代2位(20秒11)を持つ飯塚翔太(ミズノ)が12日、自身初の高地合宿に出発した。場所はメキシコのケレタロで標高は1800〜1900m台。世界遺産にも登録されている美しい街並みの都市だが、ミズノの中村哲郎監督によればナショナルトレセンのような施設で、トラックや筋力トレーニングの設備も整っているという。
競泳の塩浦慎理が中大の同学年で親交もあり、競泳の高地トレーニングについても聞いていた。飯塚の希望を実現するために、ミズノ関係者が場所を探した結果、冬期も寒さの心配がないケレタロに決まったという。
「(高地トレーニングは)ずっとやりたいと思っていたんです。この冬のテーマはスピードを常に出すことですし、200 m後半の筋持久力にも生きる。長距離だけでなく、短距離にも高地トレーニングは良いと聞いています。ウエイトトレーニングも大変みたいです」
昨シーズンまではスパイクを履き始めるのが1月末だったが、今シーズンは11月末から。冬はスピードを出すために「週3回」くらいはスパイクを履いて練習しているという。100 mで10秒08の自己新を出した昨年の布勢スプリントの後、ダメージが出て1週間ほど練習が滞った。
「それも理由の1つですし、やはり世界陸上でもオリンピックでも、何本も走らないといけません。ヨーロッパ遠征で4試合したときも、僕は最後の試合は動かなくなりましたが、世界のトップ選手はみんな元気に動いています。自分に足りない部分はそこかな、と感じていました。寒いのですが、履き続けることで体の準備ができて、いつでもスピードを出せるようになる。試合を重ねるときは、そういう体にしておく必要がある」
豊田裕浩コーチによると、昨年は「お尻周りの筋肉がついた」が、上半身がそこまでついていなかった。この冬は上半身の筋力強化にも取り組み、上半身と下半身のバランスも良くなっているという。
高地トレーニングは長距離で多く取り入れられているが、合わない選手もいる。今回の飯塚も「試しにやってみる」(豊田コーチ)という部分もある。飯塚自身も「何本も何本もできないでしょう。スピードを上げ、1つ1つの練習の質を上げて、自分にプラスになればと思っていますが、どうなるか」と話した。
どのくらいの負荷がかかり、体がどう反応するかは未知数だ。生活環境も(トレーニング環境も)、実際に行ってみたら聞いていた話と違うこともあるだろう。
「予測できないことがあるかもしれませんが、予測以上の発見があったり、予想以上の成長のきっかけになったりします。100%こうなるとわかっている範囲でやったら、そこまでしか到達しません。求めていたことと違っても、自分で(前向きに)やっていくことが大事だと思います」
これまでも飯塚は、そうしたリスクを怖れずに飛び込んできた選手である。高校時代から冬期は海外でトレーニングを行い、常に新しい刺激を求めてきた。大学1年で世界ジュニア選手権に優勝し、ノビしろという点では普通の選手より少ないのは事実。それでも挑戦を続けることで、モチベーションを高く維持し続けた。毎年自己記録を更新し続けることはできないが、長い目で見れば右肩上がりの競技人生を可能にしている。
2018年シーズンの最大目標として「アジア大会ですね」と、ジャカルタでの快走を挙げた。
「個人でどれだけ勝負できるか。200 mは前回4位で悔しい思いをしましたから」
記録的には100mは「10秒1台を何回も出すこと。200 mは自己新、日本記録」だ。
アジア大会では「リレーももちろん頑張ります。4年前はマイルと両方出ましたが(4×100 mR2走銀メダル、4×400 mR3走金メダル)、マイルも頑張って欲しい」と言う。
日本の短距離陣は近年4×100 mRが先行し、4×400mRは国際大会で好成績がない。自身の4×400mR出場については触れなかったが、「マルチに行きます」と話したし、豊田コーチは「飯塚は100mから400mまで抵抗がない。いつでも準備はしている」と言う。
五輪&世界陸上のないシーズンは新しい取り組みや挑戦がしやすい。“チャレンジャー飯塚”に注目すべきシーズンが始まっている。
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