2017/2/18 日本選手権20km競歩前日
4年連続1時間18分台が出るのか?
3連覇を目指す
高橋は記録には慎重な姿勢
ハイペースをイメージしてきた
藤澤
カギを握る
西塔のスタート直後の歩き

 前日会見の席上、男子のリオ五輪代表だった高橋英輝(富士通)と藤澤勇(ALSOK)は目標を次のように話した。
高橋「優勝(3連勝)することが目標です。記録は1時間19分台が出せれば」
藤澤「明日は優勝を目指して歩きます。記録は1時間18分台を」
 スピードに関しては、2連勝中の高橋の方が上と見られているが、ターゲットタイムは藤澤の方が高い数字を口にした。その理由は、2人の目下の課題(の意識の仕方)に違いがあるからだ。

 高橋は瞬間的なスピードは世界記録保持者の鈴木雄介(富士通)をもしのぐと言われ、過去2回の優勝タイムは1時間18分台と世界トップレベルだった。その高橋が今回は「1時間18分台は鈴木さんがいるから出せるタイム。そんなに簡単には出せない」と慎重だ。
「例年のように絶好調というわけではないので、これまでのようにドカンと行くことはできないかもしれません。そういうなかでも、私の課題であるゆっくりしたペースのなかでのフォームとかを意識したい」
 高橋は国際大会での失敗が続き(北京世界選手権47位、リオ五輪42位)、コンディショニングやメンタル面など、スピード以外の要素が改めて課題として浮き彫りになった。
 その1つが、高橋自身が話すスローな展開のなかで動きが悪くなってしまうこと。明日はスピードで前半から押して行くのではなく、駆け引きをしながら勝機を探り、どこかで持ち味のスピードを爆発させるつもりなのだろう。

 藤澤はリオ五輪の21位という結果を「10km過ぎで、毎回のごとく3分50秒、45秒に上がる展開に対応できませんでした」と振り返る。
 レース中のペースアップという点では高橋と同じ課題だが、そこに対応できなかったのはスピード不足だと藤澤は考えた。11月、12月と「切り換えを意識した練習」をかなり取り入れたという。
「(リオ五輪前は)3分55秒で押すイメージでやり過ぎたのかもしれません。原点に返って、3分45秒を切ったり、400 mで90秒切り、200 mで45秒切りのメニューにも取り組みました」
 1月3日から2月5日の豪州合宿は、例年と同じ距離系のメニューが中心だったが、「ちょっとした意識の変え方」も試したという。
「明日はハイペースを予測して、3分50秒で入っても後れをとらない準備をしてきました。(松永大介=東洋大=が欠場して)人がいなくなったらペースもゆるくするのでなく、1時間18分台のペースは崩さないようにしたい」
 昨年も中盤で前に出たのが藤澤だった。勝負を考えたらマイナスだったかもしれないが、レース中に気合いの声を発するなど、闘志を前面に出した歩きは藤澤を支えている部分でもある。

 鈴木がまだレースに復帰できない現状では、高橋が行かなければペースは速くならないと思われたが、藤澤がハイペースに持ち込む可能性が出てきた。さらに、西塔拓己(愛知製鋼)の復調も、速い展開になる可能性を大きくしている。
 西塔は12年ロンドン五輪代表で、13年世界陸上モスクワ大会では6位に入賞した。その後は故障が多くなり代表から遠ざかったが、昨年の全日本競歩能美大会で1時間19分44秒と、3年ぶりに自己記録を更新した。
「(同学年の高橋と小林快=ビックカメラ、東洋大の後輩の松永大介の活躍は)気にしないようにしています。自分はあがり症で、意識するとプラスにならない。結果を見てすごいと思いますし、荒井(広宙・自衛隊体育学校)さんの銅メダルは自分もうれしかったのですが、荒井さんは荒井さんにしかできないレースをされてメダルを取りました。僕も自分にしかできないことを見つめ、自分に合った強化をして東京オリンピックにピークを持っていきたい」
 この先の強化策は「探しているところ」だが、“西塔にしかできないこと”といえば、スタート直後のダッシュのような歩きが挙げられる。6位に入賞した同年世界陸上でもスタート直後にすごい速さで歩いていた。
「良いリズムをつかむために、ある程度、突っ込んでいく攻めのレースをしたい」
 西塔は松永、高橋、藤澤のことを「レベルが上の3人」と言い、その3人に対して「攻めていく」という気持ちも、久しぶりに発揮したいようだ。

 高橋も、西塔が攻撃的な歩きをすれば、そのリズムに合わせるだろう。「最初にドカンと行ってくれたら嬉しいですね」と話していた。
 2年前の2015年は、最初の5kmこそ20分04秒と抑えめだったが、その後、鈴木がペースアップし、それについた高橋が1時間18分03秒の日本新(当時)をマークした。前回は高橋、藤澤、西塔が最初の5kmを19分31〜33秒で入り、高橋と藤澤が1時間18分台をマーク。3年前は鈴木と高橋、藤澤、西塔、松永らが19分32秒で入り、鈴木と高橋が1時間18分台だった。
 西塔の出方次第だが、明日も19分30秒台で入る可能性がある。



寺田的陸上競技WEBトップ