2016/6/14 ALSOKリオ五輪代表内定選手記者会見
藤澤が“2度目”の五輪に意欲
経験を生かしてメダルに挑戦


「前回大会に出ていて2大会連続ということになりますから、今回はメダルを目指してしっかり頑張ってきます」
 会見冒頭の挨拶で、男子20kmW代表の藤澤勇(ALSOK)は“2回目”のオリンピック出場を強調した。

 ロンドン五輪に出場した2012年は実業団3年目。09年に世界陸上(30位)、10年にアジア大会(4位)と経験も積んでいた。ロンドン五輪の18位という順位は卑下するほど悪くはないが、初のオリンピックは緊張しまくっていたという。今年の日本選手権前日に、次のように話していた。
「恐怖心が勝ってしまって、なんとかゴールしただけ。コースに行くのも怖くて、競技生活一番のつらさでした」
 だが、その翌日の日本選手権で1時間18分45秒(日本歴代3位)と派遣設定記録を突破。高橋英輝(富士通)に次いで2位に入り、連続代表を確定させた。

 自身のトレーニングに迷いがあったことも、ロンドン五輪でプレッシャーを感じた遠因だったのかもしれない。
 同学年の鈴木雄介(富士通)が、前年のテグ世界陸上で8位に入賞。藤澤は当時、長い距離を歩くことをトレーニングの中心に据えていたが、鈴木は短い距離のメニューや動きづくりのドリルを重視し、失格の心配がないフォームを武器に世界で戦い始めていた。
 藤澤も12年から豪州へ頻繁に渡り、留学中の裄V哲コーチ(山梨学院大の先輩で01年世界陸上20kmW7位入賞者)とともにトレーニングをするようになり、練習量だけでは強くなれないと感じ始めた。長い距離と短い距離のバランスを見直し、ウエイトトレーニングにも積極的に取り組み始めた。

「ロンドン五輪の頃はインターバルなど、すごく速いペースで行っていました。練習でもタレント選手(豪州。ロンドン五輪50kmW銀メダル)に勝てばメダルだ、と思って、1000m×15本を、タレント選手の前で歩きました。その翌日に左ヒザに痛みが出てしまった。練習後に浮かれていたことも確かです」
 4年前は1000m4分を切ることに執着したが、今は5分ペースで練習していても、レースになったらスピードを出すことができる感触もつかんでいる。

 インターハイ4位だが、希望した大学には進めなかった。だが、山梨学院大の上田誠仁監督の指導は、自身の目指す方向と一致すると判断して入学。大学4年間は、ミーティングで重要だと感じたところはノートにメモしていたという。
「雑草魂を植え付けられました。その精神で地道に一歩ずつ上がってきた」ところには自負も持っている。
 ロンドン五輪以降は、トレーニングと自身の進歩に手応えを得ている。5〜6月の豪州でのトレーニングでは、30kmを週に2回行うなど、長めのメニューも行った。長い距離中心ではなくなったとはいえ、自身にプラスとなると思う部分は取り入れている。

 昨年の北京世界陸上は13位だが、終盤まで入賞圏内で歩くことができた。
「国際大会の経験から“この辺りで動くだろう”という予測は立てられますが、北京世界陸上では1回、10kmで自分から出てみました。今年を見据えてのトライでした」
 先頭集団の選手の息づかいや、帰国後にビデオも見て、どう追いつかれたのかをつぶさに観察できた。
「(世界大会は)10kmまでは助走で、15km以降で仕掛け合いになる。周囲に惑わされず、15kmまでゆとりを持てるかが結果を左右しそうです」

 藤澤にとってリオは、4年前とは全く違う五輪になる。


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