2016/2/7 丸亀ハーフマラソン
安藤がスズキ浜松AC勢3年連続日本人トップ
快挙達成も反省の言葉が続く意識の高さ


 女子は昨年の名古屋ウィメンズマラソン優勝者のユニス・キルワ(バーレーン)が1時間08分06秒で優勝し、外国勢が3位までを占めたが、日本人トップは今年もスズキ浜松AC勢だった。
 ここ3年の丸亀ハーフの上位成績は以下の通り。

2014
1 牧川 恵莉 スズキ浜松AC 1:10:27
2 ヨランダ・カバレロ コロンビア 1:10:45
3 高山 琴海 シスメックス 1:11:19
4 ジェシカ・アウグスト ポルトガル 1:11:56
5 堀江 美里 ノーリツ 1:11:57
6 清田 真央 スズキ浜松AC 1:12:44

2015
1 イロイス ウェリングス オーストラリア 1:10:41
2 清田真央 スズキ浜松AC 1:10:59
3 水口侑子 デンソー 1:11:03
4 牧川恵莉 スズキ浜松AC 1:11:04
5 堀江美里 ノーリツ 1:11:06
6 田中花歩 第一生命 1:11:12

2016
1 ユニス・キルワ バーレーン 1:08:06
2 ダイアン・ヌクリ ブルンジ 1:09:23
3 イロイス ウェリングス オーストラリア 1:09:29
4 安藤友香 スズキ浜松AC 1:10:10
5 小原怜 天満屋 1:10:42
6 高山琴海 シスメックス 1:11:14

 同一チームの選手が3年連続日本人トップで、同じ選手は2回勝っていない。チームの充実ぶりを物語っているが、安藤の口から出てきた言葉は、反省が多かった。

「1時間8分台を目標に、強豪外国人選手にしっかりついて行き、どこまで勝負していけるかと挑みました。しかしスタートしたら外国選手のスピードに怖じ気づいてしまい、弱さが出てしまった。タイムも、外国勢につくことも、どちらも課題が残りましたが、今日の結果は今の実力として受け止め、何をしていかないといけないか、確認できたレースになりました」

 安藤の最初の5kmは16分14秒で、決して遅かったわけではない。キルワが15分45秒というハイペースで飛ばしたからで、ヌクリは15分52秒、ウェリングスは15分53秒だった。
 安藤は「10km過ぎにペースが遅いと気づき、難しくとも自己記録(1時間09分51秒・2015山陽女子ロード)を更新したい」と後半でギアを入れた。15kmまでの5kmは16分54秒で、10kmまでの5kmより1秒遅かったが、実質的なペースアップだった。20kmまでの5kmは16分34秒まで上げ、ヌクリとウェリングスを上回った。最後の1.0975kmは3分35秒で、優勝したキルワの3分33秒と2秒しか違わない。
 もう少し前半が行けたのではないかと、という見方もできるのかもしれないが、後半の走りは評価すべきところだろう。

 だが、2年前に優勝した牧川恵莉も、昨年2位の清田真央も、外国勢と同じ集団で走って結果を出している。安藤の不満は、同じ戦い方ができなかったところにあった。里内正幸コーチは「2、3位の外国人選手にはついて行ってほしかった」と話した。
「最後でペースダウンしても、外国選手のレベルを体感してほしいと思っていました。安藤もフィニッシュしてすぐに、悔しいと言ってきたので、そこはわかってくれている」

 スズキ浜松ACの強さは、競技意識の高さにある。
 里内コーチはチームが、実業団駅伝に参加しなくなった2010年以降に指導を任された。チームの目標はマラソンであり、世界と戦うことだった。
 三郷実沙希だけが実業団駅伝も経験していたが、1500mのスピードを生かして3000mSCで日本代表&日本選手権優勝を実現し、駅伝に参加しなくなってから入社した牧川らの世代には、スカウト時から世界を目指す意識を持つようにうながしてきた。
 もちろん、駅伝をやっているチームでも、世界を目指す意識を持たせることはできる。歴代のメダリストたちを輩出したチームの指導者は、駅伝と個人種目を上手く両立させて世界でも結果を出してきた。
 里内コーチの手腕は、置かれた状況を最大限に利用して、選手の意欲を高めていることだろう。日体大長距離競技会で目標記録に到達できず、泣いているスズキ浜松ACの選手も見かけたことがある。

 会見中に自身が強くなった理由を問われ、安藤は「以前は自分のことが好きじゃなかったのですが、自分を好きになることを少しずつやってきたから」という答え方をした。
 里内コーチの説明は次のようなものだった。
「自分が嫌いだったというのは、1回選んだチームをやめて来たからだと思います。自分も選手時代に移籍を経験しています。彼女が来たときに『移籍には、自分のわがままが多かれ少なかれある』ということを話しました。だからこそ、人に感謝していくことが大事だと。それをしっかりと受け止めてくれたのでしょう」

 スズキ浜松AC勢の躍進は丸亀ハーフだけではなく、牧川や清田がトラックで先頭を積極的に走ったり、安藤が全国都道府県対抗女子駅伝で区間賞を取ったりして実証されている。
この3人の丸亀日本人トップ選手は、同学年でもある。清田は3月の名古屋ウィメンズで初マラソンに挑戦し、本気でリオ五輪のマラソン代表を狙っていく。牧川と安藤はリオ五輪に関してはトラック代表が目標で、来シーズンには初マラソンに出る予定だ。
「東京オリンピックのマラソンが3人の大目標で、そのためには(どの種目でも)、リオ五輪の代表争いを経験することが重要です。(3年連続日本人トップは)マラソンを目標に掲げている以上、ハーフを走れないようではダメだと、この大会を位置づけているから。牧川が優勝したときから、日本人同士の争いにしたらいけないと言い続けてきました」
 次は3月の名古屋ウィメンズマラソンで、清田がどんな走りをするかが注目される。


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