2015/5/3 静岡国際
ヨンパーは松下が、セカンド記録で日本人トップ
十種競技から本格転向2シーズン目で前半の13歩に手応え


 男子400 mHは最終3組から優勝(49秒65)の杉町マハウ(日本ウェルネス)、2位の(49秒76)マギ(エストニア)が出たが、3組3位(49秒98)の小西勇太(住友電工)を2組1位(49秒78)の松下祐樹(チームミズノアスレティック)が上回り、タイムレースの日本人1位は松下となった。
 順大4年時の2013年国体3位のときにマークした49秒71には惜しくも届かず、49秒50の北京世界陸上の標準記録も破ることはできなかった松下。だが、実業団1年目は50秒07がシーズンベストと苦しんだことを考えると、自己記録に0.07秒差は上々の出だしと言える。

「(天候的に)どんよりしている大会で、全体的に記録が出ていなかったようですが、そういうところは気にせず、自分のレースができたと思います。400 mHはまだ誰も標準記録を切っていません。最初に破ってプレッシャーをかけたい」

 松下は学生時代は十種競技選手で、4年時には関東インカレと日本インカレに優勝した(自己記録は7508点)。しかし体格や、400 mや110 mHなどへの適性の高さから、世界で戦えるのは400 mHだと決断。4年時6月の日本学生個人選手権に50秒11で優勝すると、最後の十種競技となった日本インカレ翌月の国体で、自身初の49秒台をマークしたのだった。

松下の年次別ベスト記録
年月日 学年 記録 日本リスト 高校・大学リスト
2007/9/16 高1 55.33 - -
2007/11/25 4819   59
2008/9/14 高2 52.88 112 19
2008/5/18 5469   6
2009/7/4 高3 53.83 - 49
2009/5/24 PB 5789   1
2010/8/21 大1 6635 33 25
2011/4/30 大2 53.37 165 98
2011/5/15 6859 20 11
2012/8/19 大3 51.78 54 34
2012/9/11 7181 9 3
2013/9/7 大4 PB 7508 3 1
2013/10/5 PB 49.71 6 2
2014/7/19 実1 50.07 8  
2015/5/3 実2 49.78 2  

 しかしチームミズノアスレティック入りした昨年は、前述のように50秒07がシーズンベスト。色々な意味で勢いのあった大学4年時は、6月の日本選手権で初めて前半のインターバルを13歩に挑戦して上手く行ったが、昨年は「14歩に戻したり試行錯誤している間にシーズンが終わってしまった」と言う。
 それを今季は「13歩に固定して、スピードを出せる練習」に取り組んできた。
「昨年は13歩だと、ハードルまで遠くてバウンディング的な走りになったりしましたが、今年はストライドを伸ばしながらしっかりスピードを出せるようになりました」

 十種競技には出ないのか? という問いに対し松下は「もうやりませんが(笑)、混成をやった経験は今に生きています。混成競技には感謝しています」と胸を張る。
 十種競技で日本歴代2位を持ち、ロンドン五輪には400 mHで出場した中村明彦(スズキ浜松AC)を筆頭に、混成競技と400 mHを兼ねる選手は何人かいる。世界的に見ても、十種競技世界記録保持者のアシュトン・イートン(米国)は、400 mHで昨年48秒69をマークした。
 松下は「身のこなしの能力」が、400 mHにも生きると言う。ハードル間のストライドが予定通りに走れないことは400 mHではよくあることだが、踏み切り位置を上手く調整できる。特に疲労が大きくなる後半で、通常と同じハードリングができることは大きな武器となる。

 ただ、昨年の松下はその能力に頼りすぎていたのかもしれない。
 昨年も400 mで47秒43の自己新を出しているが、400 mHに結びつかなかった。ピッチやスピード持久力など、走りの能力自体は上がっていたが、400 mHの前半で楽にスピードを出すストライドが獲得できなかったのだ。
 それでもインターバルの後半でストライドを伸ばしたりして、なんとかハードルに合わせられてしまう。十種競技で培った“身のこなし”の能力があったがために、400 mHの大事な部分の強化が手薄になってしまったのだろう。

 松下は指導者からアドバイスを受けたとき、すぐに動きを修正したり、新しい動きができるタイプだと評価されている。48秒台も期待されるのは、その能力があるからだ。中村が混成競技へのウエイトを大きくするのとは対照的に、松下は400 mHへ専念して代表入りへの道を突き進む。


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