2015/4/18 織田記念
注目の200 mは藤光が20秒43のセカンド記録で優勝
2位に橋元、3位に桐生。高瀬はスタート直後に棄権
藤光謙司(ゼンリン)がベテランの味を発揮して優勝(20秒43)したのに対し、桐生祥秀(東洋大)は3位(20秒80)にとどまり、高瀬慧(富士通)は途中棄権した。出雲で300 mの日本新(32秒21)を出していた藤光が安定した強さを見せたのは明るい材料だが、爆発が期待された男子スプリント陣の織田記念第一ラウンドは、不発に終わった。
「レース前から、気持ちで負けていた」と桐生
桐生は「最初からガンガン行く」と話していたが、スタートからいまひとつピリッとしない。1つ内側のレーンの藤光は、スタートに不安を抱えていたが、その藤光を引き離せなかった。
「前半からもっと行きたかったのに、そのまま終わってしまった。(昨年9月以来の200
mで)予選で“長い”と思ってしまいましたし、決勝のスタート前も長いだろうな、と感じてしまった。レース前から、気持ちで負けていたと思います。タイムも、今の調子を考えたらかかりすぎ。ショックですね」
試合になると戦闘モードに入り、スイッチが入るのが桐生の武器だったが、それが入らずに終わってしまった。あくまでも国内シーズン初戦、ピークは8月の世界陸上ということを意識していたが、そこを意識しすぎてしまった可能性はある。
高瀬は大事を取ってレース中断
高瀬はスタートして50mも行かないうちに立ち止まったが、肉離れとかではなく、大事をとってレースを中止した。富士通の吉川三男コーチによれば、スタート前からすでに「内転筋につった感じ」があり、スタートしてすぐに、無理はできないと判断して立ち止まった。
明日の100 m出場は様子を見ながらとなるが、「出る方向」(吉川コーチ)で治療と回復につとめる。
テキサスでは個人種目を棄権した藤光
藤光の20秒43は、自己ベストの20秒38(2010年)に次ぐセカンド記録。前述のように先週の出雲では300 mで日本新を出しているが、テキサスリレーでは4×100 mRで違和感があったため個人種目を棄権していた。桐生が9秒87(+3.3)、高瀬が20秒09(+4.5)を出したレース。
「スタンドで2人のタイムを見ていて悔しい思いはありました。あれだけ条件が良かったし、自分もそこそこ状態が良かったので、走っていたらタイムも出たかもしれません。ただ、脚のことを考えたら無理する時期ではない」
帰国後も藤光は慎重だった。「1週間は治療と休み」に充て、徐々に軽めの練習を再開したが「(強い)練習といえるのは出雲の100 mと300 mだけ。ぶっつけ本番」というプロセスで織田記念に乗り込んできた。
そして今大会でも、「ブロックを思い切り蹴れない」という脚の状態。
「前半抑えめで、まとめるレースをしようとイメージしていましたが、それがはまってまとめきれるレースができたと思います」
「その日使える部分で走る」
それができたのは、以前は故障が多かった藤光が、その体質を克服してきたからに他ならない。4×100 mRと4×400 mRの両リレーの要員として、どちらの種目にも出場できる状態を作ってきたことも、走りの幅を広げることになったか。一昨年のモスクワ世界陸上は4×100 mRで、山縣亮太のケガで代役を務めて6位入賞に貢献。昨年のアジア大会は4×400 mRの2走で一気にリードを広げた。
そして今は「その日使える部分で走る、(違和感などで)使えない部分は温存して走る」という動きができるようになった。一昨年頃からその走りができるようになり、昨秋の国体100
mは予選、準決勝、決勝とすべて違う箇所を意識して走り、3本とも同レベルのタイム(10秒34、10秒28、10秒28)を残した。
「その経験が生きている」
「(19秒台も)ちょっと狙いたいな、という気持ち」
5月に29歳になる。自己記録は5年前だが、昨年あたりから条件さえ揃えばいつでも更新できる手応えはある。故障明けに近い今大会でも、20秒28の北京世界陸上派遣設定記録は狙えると考えていた。19秒台は、遠く感じていた時期もあったが、今はまた目指すことができるレベルと実感している。
「来年に狙おうかと考えていました。今年は20秒1〜2台を出して感覚をつかみ、それを来年、形にできたら、と。それがテキサスで、高瀬が19秒台をかじりかけました。今回、高瀬とどれだけ勝負ができるかを1つの目安としていたんです。気象条件と僕の状態が万全なら、ちょっと狙いたいな、という気持ちになっています」
期待された桐生と高瀬が爆発せず、山縣亮太(セイコー)は欠場し、飯塚翔太(ミズノ)も故障明けでB決勝7位に終わった。スプリント陣全体が不発に終わった印象がある織田記念の200 mだが、藤光や2位の橋元晃志(早大)など主役候補の不発を補う選手が現れる。
それが今のスプリント陣の強さではある。
全員(大多数)のピークを合わせる課題に向かう。
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