2015/9/12 日本インカレ
見どころB
女子やり投は資格記録55m以上が5人の群雄割拠状態
3連覇を目指す久世、予選トップ通過の斉藤が有力候補
慶大の森に京都教育大の加藤、投てき非強豪校選手も要注目
3日目の女子やり投が充実のメンバーとなった。資格記録で55m以上が以下のように5人もいる。
山内愛(大阪成蹊大3年・58m76)
久世生宝(筑波大3年・57m97。PB58m98)
斉藤真理菜(国士大2年・57m90)
加藤瑞生(京都教育大4年・56m64)
當間汐織(九州共立大2年・55m90)
高校生も毎年のように55m以上が出ているが、55m以上を“安定して”投げられたらすごいことである。
名門高校の指揮を長らく執った指導者は、女子やり投の現状を次のように分析した。
「高校生にここ数年、良い素材が続いて現れています。海老原(有希・スズキ浜松AC)が日本記録を更新し続けて世界とも戦い、それが日本の女子やり投を牽引している結果だと思います。宮下(梨沙)や助永(仁美)、的場(葉瑠香)ら20歳台後半の選手もレベルを上げている。そういう選手たちが、世界に誓い種目だということを実証して、ジュニアや学生を活気づかせているのだと思います」
3連勝を目指す久世が話題の中心だろう。2年前の大学1年時の日本選手権でに58m98のジュニア日本記録&学生歴代2位をマーク。その記録を更新できないでいるが、日本インカレも2連勝している。
特徴はなんといっても勝負強さ。2連勝とも、1投目に優勝記録を投げている。それも1年時が56m35、2年時が57m97と2年連続大会新である。
今大会でも“久世の1投目”に注目したい。
予選を見て斉藤をV候補筆頭に挙げる指導者もいた。
「助走からクロスの流れがスムーズで、勝負強さ、試合勘を持っている。前半で誰かがバーンと行かないようなら、勝ち方を知っている斉藤が有利になる」(栗山佳也陸連前投てき部長)
予選で53m74で3位通過した森凪紗(慶大1年)は、これが自己新記録。ベスト記録では差があるが、昨年のユース五輪銅メダリストで勝負強さがある。
慶大の女子投てき選手は珍しいが、「建築の勉強と陸上と両方やりたい」と進学した。肩が柔らかく「スピードはありませんが、結構、後ろからやりを引っ張ってこられる」と自己分析する。
女子やり投が群雄割拠状態という話しになると「インターハイが5位だったので、(1年目の)インカレは5位以内に入れれば」と、4月の入学時には目標を話していた。その目標を、予選の3位通過&自己新で、どう修正しているか。
資格記録トップは山内だが、ユニバーシアードに故障を押して出場し(50m59で予選落ち)、フォームも乱れていると瀧谷賢司監督は指摘する。予選も50m17で11番目の通過。「地肩は強いし、地力はある」。60mを投げる素材と期待されている選手なので、この大会できっかけをつかみたい。
加藤は高校(大津高)では46m45が自己ベストで国体7位。大学4年間で10mと、記録の伸びはナンバーワンの選手。本人は「ウエイトトレーニングをしてパワー系が強くなったので」と、成長の背景を説明するが、技術もいろいろなところから吸収しているようだ。
「オーソドックスな投げですが、体がない分、ポイントがずれると厳しくなる」と栗山前部長。やりが垂直に近い角度になると飛ばないので、構えた方向に真っ直ぐに飛ぶかどうかが好不調の判断材料にもなるという。
加藤は“たたき上げ選手”だが、勝負への意欲も十分。6月の日本学生個人選手権で2位になったときには「日本インカレの優勝を狙います」ときっぱり言い切った。
2年時に8位、昨年は4位。日本インカレの順位曲線を見れば、1位になってもおかしくない。
加藤が2位だった日本学生個人選手権を制したのが當間だった。その試合は54m63だったが、2週間後の日本選手権は49m73で14位。昨年のアジア・ジュニア選手権優勝者で、勝負強さがあると思われていたが、現段階では不安定さの方が目立っている。今大会予選も50m14で、ぎりぎり12番目の通過だった。
栗山前部長は不確実さを指摘しつつも「はまれば55mは軽く超える」と評価する。本人はメンタル面を課題に挙げている。明日の結果で、安定して技術を再現できるようなきかっけをつかめるか。
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