2015/6/9 日本選手権展望
新旧日本記録保持者対決に割って入るか?
男子800 m“第三の男”、田中匠瑛の積極思考

 田中匠瑛(盛岡市役所)を“第三の男”と見るのは、適当ではないかもしれない。昨年の日本選手権と今年の静岡国際では日本記録保持者の川元奨(スズキ浜松AC)に次いで2位に入り、昨年の全日本実業団と国体では優勝している。
 だが、昨年は前日本記録保持者の横田真人(富士通)が絶不調のシーズンだった。その横田が復調して5月30日の日体大競技会では、優勝(1分46秒52)した川元に0.02秒差と迫った。現時点では新旧日本記録保持者対決が予想されるのは当然だろう。

 田中は5月3日の静岡国際では1分49秒28の2位。川元には1秒06の差をつけられたが、「まだ20%。日本選手権では1分47秒台を出したい」と、今後への手応えを感じていた。

 冬期に温暖と言える土地で合宿したのは、「奄美に1週間と半分」(田中)だけ。通常の練習はフルタイム勤務のため18時開始で、1時間半から2時間程度。「寒くて、コーンスープとか温かい物を思い浮かべながら練習しています」というコメントは、冗談とも本気ともとれる。
 春の遅い岩手を拠点にしているため、「速いスピードで走れないのは仕方のないこと」と、腹を据えて競技に取り組んでいる。

 奄美合宿は日本陸連と実業団との合同合宿で、横田、川元のほかにも中村康宏(エボーリュAC)、岡昇平(和歌山陸協)、櫻井大介(京大)、三武潤(日大)ら日本の一線級がそろい、レベルの高い練習ができた。
 昨年の静岡国際は1分52秒00(7位)だったが、日本選手権には1分49秒39(2位)まで上げている。それが今季は自己記録に0.06秒と迫る1分49秒28。目標に掲げた1分47秒台は、根拠のない数字ではない。

 あとは、川元&横田という百戦錬磨の2人を相手にどこまで勝負できるかだが、連勝した昨秋の全日本実業団と国体では、速さよりも勝負強さが感じられた。
 おそらく選手仲間も感じていることと思うが、田中は成長パターンが通常のエリート選手とは異なるため、とらえどころのない強さを醸し出している。
「今シーズン中にできれば1分44秒台を出したい。派遣設定記録の1分43秒98も視野に入れています」など、常識にとらわれない発言も、その雰囲気を倍増させている。
 日本選手権の新旧日本記録保持者対決に、田中が割って入る雰囲気も漂う男子800 mなのだ。


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