2015/5/24 関西実業団3日目
400 mに進出“11カ月”の新人・田村が46秒53の大会新
200mのスピードを武器に停滞種目の起爆剤になるか!?


 男子400 mは中京大を卒業して1年目の田村朋也(住友電工)が前半からリードを奪い、2位に1秒近い大差をつけて優勝した。
「前半も“抜く”のではなくしっかり加速して、200mは8〜9割の感じで通過して、後半も落とすのでなく、自分の動きで走りきりました。ただ、意外と風が強くて、上手く走れませんでしたね。調子の良さだけで走りきった感じです」

 名古屋大谷高時代に48秒75で走ったことがあるが、本格的に400 mに取り組み始めたのは昨年の日本選手権後(日本選手権は故障の影響もあって200m予選落ち)。9月の日本インカレは「4試合めくらい」だったが、46秒10の中京大新記録で2位に入った。
 100 mの自己記録は10秒51だが、200mは20秒73を持つ。昨年の東海インカレも200mで優勝した。
「今も基本は100 m・200mの練習で、たまに長い距離を入れますが、ガツガツはやっていません。まだ400 mの走り方をわかっていない分、伸びる感覚はあります」

 上体を地面と90度に立てて、レース後半でもフォームを乱さない。指導者たちから400 m世界記録保持者の「マイケル・ジョンソン(米国)のようだ」と言われたこともある。
「ジョンソンを意識しているわけではなく、しっかりと地面からの力をもらえるように体幹のブレをなくすことを考えた結果です」
 残り100 mは「気合いで走ります」という点は他の選手と同じかもしれないが、田村はフォームが崩れないことを優先し、“端正な”動きのまま走りきる。

 昨年の日本インカレの走りが評価されてコンチネンタルカップの4×400 mR代表に選ばれ、マラケシュ(モロッコ)で行われた本番では1走を45秒台後半のラップで走った。5位に入賞したアトランタ五輪1走の苅部俊二や、4位のアテネ五輪1走の山口有希に匹敵するタイムで、「これなら世界に挑戦できる」と田村自身も感じたという。
 なかでも特徴的なのは、前半の200mを「調子が良ければ21秒2くらいで」入ること。この数字は4×400 mRのものかもしれないが、昨年の日本インカレでも「21秒4〜5で行けている」という。ちなみに、ジョンソンが世界記録の43秒18を出したときの200 m通過は21秒22だった。
 中京大の青戸慎司監督はその点を次のように評価している。
「前半をナチュラルに突っ込んでいけることが強さです。セオリー通りに何秒で通過する、という常識にとらわれずバーンと入る。そうしないと45秒台にも、44秒台にも届かない。そのスタイルは絶対に崩さずにやっていってほしい」

 本人と青戸監督の説明を総合すると、学生時代は故障も多く、それもあって4月は毎年状態が上がらなかった。この冬は初めて、大きな故障なく過ごすことができた。
 関西実業団2日目の200m予選では予選を20秒92(−0.5)で走り、北京世界陸上標準記録の20秒50を上回る手応えもあった。だが、「記録が出せる、と気持ちが入りすぎた」ことで、決勝はフライング失格を犯してしまった。
 今季の400 mで台風の目となる可能性が十二分に感じられた。


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