2015/8/1 和歌山インターハイ
激しくも清々しかった女子800mの向井vs.石塚
400 mと1500mのチャンピオン2人が対決した好勝負


「やっぱり1500mチャンピオンのスパート力は半端じゃありませんでした。400 mと1500mの優勝者同士の対決でどうなるかと思ったのですが、向井さんの位置取りとスパートのタイミングが絶妙でした」
 石塚晴子(東大阪大敬愛3年)の分析が的確で、取材をしている側にも臨場感をもって面白さが伝わってきた。

 400 m(と400 mH)優勝者の石塚と、1500m優勝者の向井智香(至学館3年)の対決が注目された女子800m(この2種目の優勝者が800 mで対決するのは史上初の可能性あり。正確な情報は陸マガ次号に載るかも)。1周目のバックストレートで石塚が先頭に立ったのは、石塚本人も想定していた展開。ただ、少し抑えているような印象も受けた。
「60秒で400 mを通過したかったのに62秒でした。2周目のバックストレートで上げたら吹く(関西弁で“全部出し切ってしまう”、というニュアンス)と思って少し我慢したのですが、そうしたら抜かしやすくしたのかもしれません」
 バックストレートの中間点過ぎくらいで数人に抜かれていった。
「向井さんが来ることは予想していました。400mから600mのスピードはかなりあるので、1回抜かれてもいい。でも、4人くらいにバーっと来られてしまって…」
 石塚は残り200mから勝負をかけようとしたが、想定より多い人数が前にいて、前に出ることができなかった。「“ポケット”されてしまった」と、中距離レースならでの現象に、思ったように走れなくなってしまった。

 800m決勝が今大会11本目(400 m3本、400 mH3本、4×100 mR2本、800m3本)。最後の直線に入った時点で、優勝した静岡国際のときのような勢いは感じられなかった。
 ポケットをされた反省はあるものの、石塚に悔いはない様子だった。
「ペースを上げ始められたのがホームストレートに入ってからでしたが、向井さんがかなり遠くにいて……。向井さんは前に選手がいないのに、すごいスパートをかけていました。後ろで走りながらスゴイなあ、って思っていました」
 レース後の2人は健闘をたたえ合ってがっちり握手。
「やり切った感があります。今、持っている力は出せたと思いますし、個人種目2.9冠ですが、達成感があります。レース後は『負けちゃったあ』と自然と笑顔も出て、すっきりした気持ちです」

 注目されるのは2人の、今後の種目選択だ。石塚は400 mと400 mHで日本代表の可能性があり、向井は3000mSCの適性も高いと関係者は評価している。
 違う種目でお互いの成長を競い合うことになるかもしれないし、ひょっとしたらまた、インカレなどの800 mで対決になるかもしれない。
 インターハイの直接対決が、2人の今後にどう影響していくだろうか。

向井コメント
「すごく嬉しいです。石塚さんが(前半)前を走っていたので、離されないように、気持ちを切らさずに走りました。ハイペースは予想していましたが、考えていた以上に調子が良く、楽に走ることができたので、ラストで仕掛けられました。400 mがもう少し速いと思っていましたし、練習でもそういうタイムで走っていました。
 後輩が残り300 mから行ってくれたのに勇気づけられました。ラスト200 mは何も考えず、全力で行くしかありません。ラストは出し切れました。石塚さんにはずっと負けっ放しだったので、1種目くらいは勝ちたかった。
 スピードはあまりありませんし、ウエイトをやっても筋肉もつきません。冬は不安がありましたが、後輩も強くなって、春からは良い練習ができるようになりました。スピードも体力も上がってきたと思います。最後は先生の気合いとスピードでした。
 世界ユース(1500m6位)の経験も大きかったですね。物事をプラスに考えられるようになりました」








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