2015/5/10 ゴールデングランプリ川崎
2つの点で価値があった高瀬の10秒09(日本歴代7位タイ)
向かい風では日本人初の10秒0台、そして26歳日本最高

 高瀬慧(富士通)がマークした10秒09は、下記のリストのように日本選手が走った10秒0台のパフォーマンスでは、初の向かい風だった。
 だが、過去には朝原宣治が向かい風0.5mで10秒16を、伊東浩司も向かい風0.9mで10秒18をマークしたことがある。どの記録が一番価値があるかは断定できないだろう。
 桐生祥秀(東洋大)が3月に米国でマークした9秒87(+3.3)が、公認許容範囲の追い風2.0mだったら9秒台が出ていたと言われているが、上記の向かい風の3パフォーマンスも、追い風2.0mなら9秒台だったということになる。

日本人選手の10秒0台全パフォーマンス
※世界陸上エドモントン大会の2次予選。風速計測機械の故障で非公認だが、風はそれほど吹いていなかったとされている

向かい風での10秒20未満全パフォーマンス
記録 選手 所属 年月日 成績 場所 大会 生年月日 年齢
10.09 -0.1 高瀬慧 富士通 2015/5/10 2 川崎 ゴールデン
グランプリ川崎
1988/11/25 26
10.16 -0.5 朝原 宣治 大阪ガス 1996/7/27 5s1 アトランタ オリンピック 1972/6/21 24
10.16 -0.3 末続 慎吾 ミズノ 2003/5/10 3 長居 国際グランプリ大阪 1980/6/2 22
10.17 -0.2 桐生祥秀 洛南高 2013/6/14 1 奈良市鴻ノ池 近畿インターハイ 1995/12/15 17
10.18 -0.9 伊東 浩司 富士通 1999/7/2 1h ローザンヌ アスレティッシマ 1970/1/29 29
10.18 -0.1 朝原 宣治 大阪ガス 2001/9/15 2 横浜 スーパー陸上 1972/6/21 29
10.19 -0.3 朝原 宣治 大阪ガス 1996/7/26 2q1 アトランタ オリンピック 1972/6/21 24

 26歳日本最高という点は、過去の日本選手にできなかったという点で間違いがない(これまでの26歳日本最高は10秒19=窪田慎・1998年)。
 表からもわかるように伊東と朝原は28〜31歳で10秒0台をマークした。桐生、末續慎吾、山縣亮太、江里口匡史、塚原直貴は17〜24歳で10秒0台を出している。朝原が1回、25歳で10秒08をマークしているが、これまでの日本選手は20代中盤が10秒0台を出しにくい年齢だった。
 これは、高瀬の成長過程が、過去に10秒0台を出した選手たちと大きく異なることが背景にあるのかもしれない。
 ただ、10秒0台のサンプルの絶対数が少ないので、傾向と断言すべきでないかもしれない。また、山縣や桐生の今後の頑張りで変わってくると思われる。

 高瀬自身は「このくらいの記録は予想していた。驚きはない」と言い、「(海外勢と)対等に渡り合えたのは、タイム以上に収穫」とも話した。
 昨年のアジア大会銀メダルの蘇炳添(中国。自己記録10秒06)に競り勝ち、9秒96を持つアダムズ(米国)と10秒00を持つ張培萌(中国)に完勝した。外国勢との勝負で見た方が、今回の高瀬の走りの価値はわかりやすいかもしれない。


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