2014/6/6
日本選手権で印象に残ったコメント★感動編
吉田文代(郡山女大附AC)
女子三段跳4位・12m86(−0.1)
「復興も1日や2日で変わるものではありません。積み重ねることの重要性を、陸上競技を通してメッセージを送れたかな」


 地元開催の日本選手権で優勝の期待を担った吉田文代が、2回目に12m86を跳んでトップに立った。そのまま逃げ切るかと思われたが5回目に山根愛以(園田女大AC)が12m88(−0.4)で逆転。6回目には前田和香(PEEK)が12m96(+0.5)、吉田麻佑(歩アスレチックス)が13m03(+0.2)を跳び、吉田文代は4位に落ちてしまった。
 5回目をパスしたベテランの底力が最後に発揮されることを、スタンドの福島県観客は望んだが12m62(+0.4)。今の吉田に力は残っていなかった。4位で表彰台も逃してしまった。
 吉田にとっては日本選手権10回目の優勝もかかっていた。
 無念の言葉が出てくると予想していたが、ミックスゾーンに現れた吉田が発した言葉は潔かった。潔かったが、震災復興途上の福島県選手らしい言葉が聞いている者の胸を打った。

「1本1本、跳ぶ毎に生徒たちが応援してくれて、優勝できなかったことを私以上に残念がってくれました。それだけでも、続けてきて良かったと思うことができました。久しぶりに表彰台を逃しましたが、気持ちを共有できている人たちがたくさんいると実感できました」

「地元で10回目の優勝を果たすことはできませんでしたが、10回目を取りたいと思って臨むことはできました。1年1年、積み重ねた結果が10回目の挑戦になったんです。いきなり優勝を狙える記録を跳べるわけではないんです。今回の日本選手権は復興支援という部分を強く打ち出していています。復興も1日や2日で変わるものではありません。積み重ねることの重要性を、陸上競技を通してメッセージを送れたかな。ここで10回勝てたら良い終わり方でしたが、思い通りいかないことも…」

「(練習環境は1年目の昨年と比べて)変わりはありませんね。授業をして、部活の練習を見て、19時くらいから自分の練習です。長い時間はかけられませんが、生徒と一緒に朝練習などをして補っています。生徒を指導しないといけない目線と、自分のコンディション調整という目線の、オンオフをしないとできませんね。それほど強い生徒がいるわけではありませんが、彼女たちなりに積み重ねをしています。私のアドバイス1つで記録が変わるかもしれない。生徒に(力を)かけたい気持ちが強くなっています」

「福島に来て、福島で色々な時間を過ごして、この試合に向けてたくさん悩みました。そのなかでも嬉しいこともありました。私たちの競技は1本で見たら60秒もないんです。これは室伏由佳さんがFacebookでおっしゃっていたことなんですが、その短い時間の中で10年以上の時間をかけ、積み重ねてきたことを出す競技です。その短い時間に対して私以上の思い入れを持ってくださり、同じくらいに一喜一憂してくれる、思いを共有してくれる人たちが周りにいます。幸せだったと…思います」

「久しぶりに表彰台を逃してしまいました。若手もどんどん出てきて、女子三段跳の道を切り拓いて行ってほしい。シーズンが残っていますから、私もまだ跳びますよ」


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