2014/6/6
日本選手権で印象に残ったコメント★“さらに上を”編
猶木雅文(中大3年)
男子200m予選3組1位・20秒56(+1.4)
「去年よりは飯塚さんが近い存在になった、と感じています」

予選「後半で自分の走りをしっかりすれば通過できると思っていました」
 2日目の決勝では5位(20秒81・+0.9)でアジア大会代表には届かなかったが、今季の猶木は成長を感じさせる走りを続けている。
 5月の静岡国際予選で20秒44(+1.8)と自己新、モスクワ世界陸上準決勝進出の飯塚翔太(ミズノ)に0.21秒先着した。ゴールデングランプリは21秒04(−1.2)で6位(日本人3位)で「失敗だった」と本人は言うが、ワールドチャレンジミーティングである。直前に出場が決まったことを考えれば、貴重な経験だった。関東インカレは20秒52(-0.6)で2位に0.38秒差の圧勝だった。
 そして迎えた日本選手権初日の予選を20秒56(+1.4)で3組の1位通過を果たした。

「前半は内側の川面(聡大・ミズノ)さんが来ると予想していましたが、後半で自分の走りをしっかりすれば通過できると思っていました。(コーナーの)抜けは何番でも、後半で全部抜けば良いと。関東インカレは(ケンブリッジ)飛鳥がいなかったので、ここで負けていたら日本選手権では戦えないと思って走りました。日本選手権は去年も決勝まで走っているので(7位)、雰囲気はわかっているつもりです。ゴールデングランプリのような失敗をしないように、関東インカレの走りをしようと思って臨みました」
 予選は自信を持って臨んでいた。

決勝に向けて「自分の走りをしたついでに勝てればいいかな」
 ただ、少し気になる部分もあった。以下も予選後のコメントである。
「優勝したい気持ちはありますが、飯塚さんらトップの人たちはすごい人たちばかり。少しでも食らいついていきたい。優勝までは狙っていません。自分のベストを尽くせればいいと思っています。20秒44のベストを更新して…自分の走りをしたついでに勝てればいいかな」
 予選には強い気持ちで臨んだのに対して、決勝では自分を格下と思って走ってしまった。決勝は5位。今の200mはメンバーが充実しているだけに、大学3年生にこれ以上の順位を望むのは酷だったかもしれないが、一気に上に行くチャンスを逃した、という見方もあった。

先輩・飯塚翔太「本当に尊敬できるすごい人。200m選手として、僕の目標です」
 中大で2学年先輩にあたる飯塚は、一目も二目も置く存在。静岡国際の決勝では、予選で敗れた飯塚が20秒39(+0.8)で優勝し、猶木は0.17秒差の4位(日本人3位)だった。ここぞというときに強いのが飯塚で、今季は好不調の波が大きいが、日本選手権も3位に踏みとどまってアジア大会代表を決めた。
 同じグラウンドで練習している飯塚を「本当に尊敬できるすごい人。200m選手として、僕の目標です」と言う。練習は「飯塚さんが独特なので」と昨年の取材の際に話していた。コピーする意識はないが、現時点では飯塚を追うことで自身を高められている。

 ただ、どこかで超えないといけない存在でもある。
 6月23日からは飯塚と一緒にヨーロッパ遠征に出発する。同じレースには出場しないが、一緒に行動していて海外慣れしている飯塚を遠い存在と感じてしまっては、人材がひしめく今の200mでは今回の日本選手権のようなレースが続く。
 そこは本人も、潜在的に認識しているのだろう。
「去年よりは飯塚さんが近い存在になった、と感じています。届くようなら、つかまえて、抜きたいですね」
 この気持ちをどう行動に移せるか。


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