2014/3/8 名古屋ウィメンズマラソン前日
2連勝を狙う木崎を中心に見たレース前日朝時点の展望
木崎のスパート地点は「自信の持てるところ」
前回と同じ残り2kmになるのか、40kmよりも前になるのか


 大会2日前の記者会見が終わった時点では、木崎良子(ダイハツ)のラスト勝負を起点に逆算してレースを見ることが、一番面白く見る方法だと感じている。それは木崎が前回優勝者ということと、レース戦略が“ラスト勝負で勝つこと”と明確だからだ。
 レース2日前の会見でも
「前半は力を使わずにペースメーカーに付くことだけを考えて、自信の持てるところでしっかりとスパートするレースプランです。距離走でも調整段階の12000mのビルドアップ走でも、ラスト1kmは3分であったり、3分ヒト桁で来られています。そのスパートはしっかりと出せるかが楽しみです」
 と、練習中のタイムにも言及しながら話した。

 下の表は木崎のマラソン全成績に、前半と後半のタイム、残り2.195kmのタイムを示したものである。

木崎のマラソン全成績と前後半、ラスト2.195kmタイム
回数 月日 大会 成績 記 録 中間点 後半 ラスト2.195km
1 2010 1.31 大阪国際女子 6 2:27:34 1:10:45 1:16:49 8:17
2 2011 1.30 大阪国際女子 5 2:29:35 1:12:06 1:17:29 8:28
3 2011 11.20 横浜国際女子 1 2:26:32 1:12:42 1:13:50 7:15
4 2012 8.05 ロンドン五輪 16 2:27:16 1:13:15 1:14:01 7:28
5 2013 3.10 名古屋ウィメンズ 1 2:23:34 1:11:32 1:12:02 7:11
6 2013 8.10 モスクワ世界陸上 4 2:31:28 1:13:08 1:18:20 8:06

 初マラソンと2回目はペースダウンが後半ハーフ、残り2.195kmにもはっきりと現れている。
 初優勝した3回目の横浜国際女子では、残り2kmでスパートした尾崎好美(第一生命)を追い、残り0.6kmからのスパートで引き離した。自身の“マラソンの型”をつかんだレースで、最後の2.195kmは7分15秒。過去の国内マラソンではトップレベルの速さだった。
 4回目のロンドン五輪は16位と不本意な結果だったが、最後の2.195kmは7分28秒で、自身の型が崩れていたわけではない。
 そして5回目が昨年の名古屋ウィメンズマラソン。横浜と同じパターンを再現してラスト2.195kmを7分11秒で上がって快勝した。全体のペースの関係で自己記録も大幅に更新できた。
 その点、昨年のモスクワ世界陸上は8分06秒。暑さで全体にペースが上がらなかったことが最大要因だが、メダリスト3人は7分22〜41秒で上がっている。集団に付けなかったことが全てではあったが、木崎としては不満の残る部分でもあっただろう。

 昨年の名古屋のレース前も、今回と同様に練習のラスト1kmのタイムに言及していた。最後の1kmのタイムではあっても、木崎の調子自体を測るバロメーターとなっているのだろう。
 そして昨年の実際のレースでは、残り2kmからスパートしてベルハネ・ディババ(エチオピア)に17秒もの差をつけた。
「40kmまでの給水で、海外の方の取り方を見て、苦手そうだと思っていたんです。立ち止まって取っているのも見ましたし。残り1kmからスパートする予定でしたが、40kmの給水のところで、(実業団選手だった)父が言ってくれた『今回はチャレンジだ』という言葉も頭にあって、いつもとは違うスパートをやってみようととっさに思いつきました」

 林清司監督は練習を振り返るなかで“2km”という数字を挙げた。
「マラソン練習の期間が短い点は心配ですが、スムーズに練習ができました。40km走や速いペースの30km走でも、ラスト2kmからしっかりと上げられる練習が、予想以上にできた」
 12月の全日本実業団対抗女子駅伝5区で区間賞だった走りも、「強いな、と思って見ていられた」と、ベースアップができた証拠と見ている。

 基本的には残り1kmでスパートするつもりで木崎は走るだろう。
 外国勢で、30kmからレースを動かす選手が現れるかもしれない。あるいは35kmか。いずれにしても、その段階では木崎は付く走りに徹するだろう。他の選手にとっては早めに振り切りたいが、その気持ちが焦りとなったら木崎の術中にはまる。
 林監督のコメントから、木崎のスパートが去年のように残り2kmとなる可能性もある。それよりも早い段階でスパートしたら、相当に自信があることの裏返しだ。我々観戦する側は、ラスト5km地点でストップウォッチを押しておいて損はない。


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