2014/3/8 名古屋ウィメンズマラソン前日 
      “ダブル堀江”の走りに注目! 
      @堀江知佳(ユニバーサルエンターテインメント) 
      12年ぶりの自己新でラストランを飾ることができるか? 
 
「準備万端。楽しみます」 
 ラストラン前日の練習を終えた堀江知佳は、いつものように笑顔で語った。 
 
 エリート路線を、走りと同じ急ピッチで上り詰めるはずだった 
 3000mインターハイ優勝者から小出義雄門下に。入社2年目の4月に初マラソン(2000年長野)に臨んで4位。2時間29分12秒のジュニア日本最高記録だった(現在は下り坂コース扱い)。02年の北海道マラソンに優勝。21歳の2時間26分11秒は、将来のメダル候補と言うのに十分すぎるタイムだった。 
 だが、その記録が15回のマラソン歴で最高タイムとなっている。 
 
 弱くなったわけではない。06年の名古屋国際女子では3位、08年は5位、09年は2位。大阪国際女子も10年に7位、11年に3位、12年に4位と、走れば確実に上位に食い込んできた。 
 09年の名古屋国際女子は優勝した藤永佳子がベルリン世界陸上代表に選ばれたが、タイムが低く堀江の代表入りはできなかった。11年の大阪国際女子でも優勝した赤羽有紀子と2位の伊藤舞がテグ世界陸上代表入りしたが、伊藤と31秒差の堀江まで日の丸のユニフォームは回ってこなかった。 
 タイムも2時間27〜28分台が5回ある。自己記録を更新する力は間違いなくあっただろう。 
 ただ、ケガも多く、エントリーしたマラソンを欠場することも数回あった。そのあたりが代表に届かなかった理由だろうか。 
 しかし引退の理由は、同僚だった新谷仁美のように故障でも、体力的なものでもない。今後の人生を考えての決断だという。 
 今大会に向けた練習は、スタッフの話では年末年始に小さな故障があったが、4位となった12年大阪より「全然、良い」という。 
 
 00年台に全国高校駅伝優勝2回の須磨学園高初のインターハイ・チャンピオン。同高が強化を始めた初期を引っ張った(当時は須磨女高)。その高速ピッチ走法は地元紙で“忍者走り”と報じられた。 
 数々の日本代表を輩出している須磨学園高のマラソン最高記録は、加納由理(資生堂)の2時間24分27秒。そこはハードルが高いかな、という話になり、「私が狙うのは自己新しかないか」と、関東に15年いても抜けない関西イントネーションで話した。「でも、自己記録を更新するペースだったら、須磨記録も狙えるかもしれないですね」と、冗談なのか本気なのか、第三者には判じかねる口調で話した。 
「競技人生に悔いのないよう、必死で苦しみます」 
 “忍者走り”集大成のときが来た。 
       
      A堀江美里(ノーリツ) 
      3年連続の名古屋で本番の弱さを克服できるか? 
       
 堀江は昨年の名古屋国際女子マラソンでブレイクするはずだった。 
 07年大阪世界陸上マラソンの橋本康子ら、世界ハーフマラソンも含めると5人以上の代表を育てている森岡芳彦監督が指導してきた選手の中では、一番練習ができる選手である。 
 初マラソンの2年前に比べ、30kmのタイムは5〜6分上がった。自身も「今まで100%でやっていた練習が、70〜80%の集中力でできています」と手応えを語っていた。 
 ところが結果は、順位こそ16位から10位に上がったが、タイムは47秒しか縮められなかった。練習では強くてもレース本番に弱い課題が浮き彫りになった。 
 
 堀江知佳とは同じ兵庫県だが星陵高→武庫川女大と、長距離の強豪校ではないチームで学生時代までを過ごした。強豪校でなくてもレースで力を発揮する選手も多くいるが、そういったところで気後れする選手もなかにはいる。 
 ただ、堀江は学生時代に3000mSCで10分32秒26の学生新(当時)を出したことがある。力を出し切れないタイプと決めつけることはできない。 
 マラソンでもきっかけさえつかめば、力を出し切れるようになる可能性は十分ある。 
 
 森岡監督はこの1年間を次のように振り返った。 
「すべてで上のものができたと思います。違いは1月の量を増やしてタイムを落としたこと。4カ月間で30km走が21本というのは同じですが、40km走が3本から6本に増えました。その影響で丸亀ハーフは1分半悪くなっています」 
 森岡監督のメニューは、トータルの距離はそれほどでもないが、追い込むところは相当にハードである。4日連続のポイント練習(30km走、3000m×3本、2万mビルドアップ、40km走)などは、他では聞いたことはない。橋本でさえ、それができるのは名古屋前だけだったが、堀江は年間でこなす「体の強さ」がある。 
 
 世界ハーフ代表になった1年目の岩出玲亜(ノーリツ)ら、チーム内でも年下の選手が台頭している。レース後に悔し涙を流すこともあった。それが、堀江が自身の殻を破るきっかけになるかどうか。 
 誰にでも当てはまる正解があれば、指導者も選手も苦労はしない。できるのは、信じる方法を粘り強く続けること。 
「きちっと原寸大の力を出し、堀江は強いんだ、といことを見せて欲しい」(森岡監督) 
 “3度目の正直”を期待したい。 
 
 
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