2014/10/26 実業団女子駅伝西日本大会
両チーム大会新で最後は9秒差
九電工vs.ダイハツの攻防
“前半型”オーダーの九電工が4区終了時の1分20秒差で逃げ切りに成功

@3区の同学年&南九州対決
 レース前日にメディアを通じて宣戦布告をしたのは前田彩里(ダイハツ)だった。
「(トラックの)タイム的に言ったら区間賞も狙えるかな。敵は同学年の加藤(岬・九電工)ですね。岬には負けたくない」
 公の場で話したわけではないが、思いは加藤も同じだった。
 2人は高校時代に同じ南九州地区で競り合っていた(前田が熊本信愛高、加藤が宮崎日大高)。3年時の南九州大会は1500mで前田が優勝して加藤が2位。3000mは加藤が優勝して前田が3位。ただ、全国大会では加藤がインターハイ3000m7位、国体少年A5000m2位と、前田を大きくリードしていた。

 加藤が実業団、前田が大学(佛教大)に進んだため2人の対決はその後実現しなかったが、前田が今春ダイハツに入社したことで再開された。
 全日本実業団1万mが「4年ぶりのレース」(加藤)で、前田が6位(32分03秒43)で加藤が7位(32分05秒87)。そして今大会3区(10.2km)でも前田が区間1位(32分35秒)、加藤が区間2位(32分52秒)。“個人”では前田が2連勝した。

 チームが初優勝したこともあって明るくレースを振り返っていた加藤だが、区間2位の話題になると「彩里に負けたのが悔しい」と、言葉に力を込めた。
「すごく仲が良くて、会えばふざけ合っていますが、走るときはライバルです。高校の頃を再現できていますが今のところ負けてばかり」
 負けたのに、どこかしら嬉しそうな表情だった。
「一緒に走ると心強いところもあるし、楽しい」
 楽しいけど“次は負けません”と付け加えるのを忘れていたのか、言わなくてもそこは当たり前だ、ということか。
 前田もレース後に加藤のことを話していたが、同じように楽しそうな雰囲気だった。断定はできないが“あの子には意地でも負けない”というライバル関係ではなく、“あの子が頑張るなら私も頑張る”という雰囲気を感じた。

初の駅伝対決を走り終わった後の加藤岬(左)と前田彩里

 駅伝初対決は区間では前田が17秒勝ったが、チームは九電工がダイハツに9秒差で勝った。2区終了時に1分27秒差と、前田には加藤が見えない距離だった。
 加藤は昨年も同じ3区を走り、トップでタスキを受けながらダイハツの岡小百合と、大塚製薬の伊藤舞に抜かれて3位に順位を落としている。「今年は絶対に、誰も前に出させない。すぐ後ろに誰かがいる」という強い気持ちで走ったという。
 ダイハツの林清司監督はレース前に「前田で差を詰められたら面白い」という言い方をしていた。前田は確かに前との差を詰めたが、結果的に加藤が、逆転されないところで踏みとどまった。“駅伝の走り”という意味では、加藤も勝ちに準じる走りをした。
 2人の対決は今後も、好勝負を繰り返していくだろう。


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