2014/5/25 関東インカレ4日目(最終日)
大森が2分03秒96の学生歴代5位&日本歴代10位
4秒30の大幅自己記録更新で日本選手権優勝の伊藤を破る

「残り200mのスピードなら自分の方がある」


 女子800mはまさかの決着を見た。
 この種目の昨年の日本選手権優勝者で、第1週は1500mで勝っている伊藤美穂(順大4年)がV候補の絶対本命だった。インカレ上位常連の谷本有紀菜(筑波大4年)、2年前に2分05秒16の高校歴代4位で走っている平野綾子(筑波大2年)らが対抗と目されていた。
 織田記念で2位となった大森郁香(日大4年)も注目されてはいた。織田記念はタイムレースで、一番強い選手が集まった最終組ではなかったからだ。そして今、勢いに乗る日大中距離ブロックの選手ということも、注目される要素だった。
 しかし、大森の昨年までのベスト記録は2分09秒67。インカレで決勝に残ったことはない選手である。優勝までは予想できなかった。

日本記録(1分45秒75)保持者となった川元奬とは同学年。大森から見ると普段は「〇○○ところがある」そうだが、故障明けでもすぐに戻してくるところや、ここぞというときの集中力はすごいと思っている。昨年の日本インカレで大森自身は初の2分10秒切りに喜んでいたが、川元から「決勝に行けていないだろ」と言われたことが記憶に残っているという

 レースは平野が積極的に前に出て、200mは29秒40(寺田の手動計時)、400mは1分00秒17(公式途中計時)の通過。600 m手前で2番手につけていた大森が前に出て600 mを1分32秒96(寺田計時)で通過。最後の直線で伊藤が並びかけたが大森も譲らず、そのまま1m強の差でフィニッシュした。
 タイムは大森が2分03秒96、2位の伊藤も2分04秒27ともに大会新。大森は3月29日の順大競技会で出した2分08秒26を4秒30も更新する自己新記録。伊藤も自身初の2分5秒突破だった。

「まさか5秒(近く)記録が伸びるとは、自分でもビックリです。平野さんが大会記録のペースを狙って走ると聞いていたので、それに着いて、落ち着いて走ることができました。先週の400mで55秒08(予選。決勝3位)の自己新が出ました。伊藤さんが来ましたが、残り200mのスピードなら自分の方があると思って、しっかりと切り換えました。冬期は就活もありましたが、練習もケガなく積むことができました。沖縄合宿では調子も良かったです」

 千葉県の幕張総合高時代は800mが2分15秒台、1500mが4分44秒台の選手。インターハイ路線は南関東の予選止まりだった。日大入学後も1年目は駅伝を目標としていたが、2年目から中距離主体となり、2年時には2分12秒90、そして3年時の日本インカレ予選で2分09秒67をマークしていた。

 第三者が優勝を予想することはできなかったが、沖縄合宿などから中距離関係者は2分4〜5秒が出ても不思議ではないと話し合っていた。日大の松井一樹コーチの話からも、高く期待していたことがわかる。
「もともと自己管理がしっかりできる選手です。春の合宿でも良い数字が出ていたので、行けるよと話していました。織田記念の2位で本人の目つきも変わってきましたね。先週400mで55秒08が出て、スプリントがここまでついたら行けるだろうと思いました。スピードが付いたことと中距離の練習が噛み合ってきた結果だと思います」

 日本選手権は「今年も挑戦者」と話していた伊藤の巻き返しも期待できるし、筑波大勢も先輩の真下まなみ(セレスポ)の後を受け、積極レースを展開したことも好感が持てた。織田記念では最終組を高校生の高橋ひな(西脇工高)が引っ張り、優勝タイムも2分8秒台ということで懸念された女子800mだが、にわかに活況を呈し始めた。

女子800mの次に男子1部800mというタイムテーブル。自身が優勝後にレースを見守った大森は、男子優勝の川元とハイタッチした後、同じ4年生で2位に入った岡田隆之介とも喜びを分かち合った(写真)。岡田は高校時代は1分53秒17がベストだったが今大会で1分48秒89までタイムを縮めてきた。岡田が高校記録保持者の川元とともに成長したことで、日大中距離ブロックが良い回転になって今大会の1〜3位独占、男女同時大会新優勝に結実した


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