2014/5/24 関東インカレ3日目
森が3000mSC学生初の9分台!
9分58秒98の日本歴代6位


●先頭を走り続けた森
「今日は他の選手のことは気にしないで、9分台で優勝することだけを考えていました」
 スタートから森智香子(大東大4年)が飛び出し、それに学生記録保持者の中村真悠子(筑波大院2年※2部)と小林美貴(順大3年)がついて、1000mを3分15秒で通過。1500m前に小林が離れ、森と中村のマッチレースに。2000mは6分34秒の通過。先頭を引っ張ったのは終始、森だった。
「今日は他の選手のことは気にしないで、9分台で優勝することだけを考えていました。ゆっくり行って後悔するよりも、自分で行こうと先週の時点で決めました。1000m毎の理想は3分15秒、3分20秒(6分35秒)、3分20秒(9分55秒)だったので、2000mで今日は9分台を出せると思いました」
 最後の1000mが3分24秒とペースダウンしたが、足が止まった感じはなく、最後までしっかりと走りきった。
「最後も抑えずに力を出し切ろうと思っていました。(3分24秒かかったのは)そこはまだ4回目の3000mSCで、経験不足が現れてしまいました。経験回数を増やして改善していけば、タイムをもっと狙えると思います」

●第1週の1500mで4連勝を逃す
「1500mだけだったら落ち込んだと思いますが、今年は3000mSCがありました」
 今大会の表紙を“センター”で飾ったのが森だった。モスクワ世界陸上6位入賞の西塔拓己(東洋大4年)を向かって左サイドに、800m日本記録保持者となった川元奬(日大4年)を向かって右に従えて、中央で一番大きく写真が掲載された。
 川元の日本記録が5月11日なので、印刷に間に合わなかったという事情もあったと推測できるが、昨年まで1500mで3連勝していることが評価されての“センター”だった。
 ところが先週の1500mでは3位(4分30秒68)と敗れてしまったのである。ラスト勝負で伊藤美穂(順大4年・4分29秒78)、飯野摩耶(東農大3年・4分30秒11)に競り負けた。
「調子は悪くなかったのですが、判断ミスをしてしまいした。伊藤さんは昨年の日本選手権800mで勝った選手。スプリントでは上の選手なのに、風が強かったこともあって前に出られませんでした。早めに仕掛けるべきレースでした」
 取材中の話でスタッフの名前が多く出てきたのが、記者たちの間で話題になった。それだけ、感謝の気持ちを持っているということだろう。
「表紙にもなりましたしチケットにも印刷されて注目されていたので、応援してくださる方、支えてくれた人たちに勝って応えたいと思っていました。1500mだけだったら落ち込んだと思いますが、今年は3000mSCがありました。取り返すチャンスです。今日も風が強くなる可能性もありましたが、後悔したくないと思って自分で先頭を走ろうと先週の時点で決めました。今日は勝ち負けのためでなく、自分との戦い、タイムとの戦いだと思っていました。他の選手を気にせずしっかりハードリングができれば、と思って臨みました」
 今年から女子3000mSCが正式種目(対校戦種目)となったことも、森に味方した。これで関東インカレ変則4連勝を達成。“持っている女”と言っていいだろう。

●3000mSCを始めたきかっけは千葉国際クロカンの丸太越え
「ハードルをもっとやって行けば日本記録も狙えないことはない」
 森の3000mSCは今大会が4レース目。昨年の千葉国際クロスカントリーの前に丸太越えの練習を、「ジョッグ中にコーンを跳び越えて」行っていた。それを見ていた外園隆監督と原田康弘コーチが、3000mSCも行ける、と説得した。
 初戦が「4月の5大学で10分30秒」で、2試合目が6月の日本学生個人選手権。10分19秒86で優勝と、いきなり学生トップレベルに躍り出た。陸連強化委員長でもある原田コーチは、モスクワ世界陸上の標準記録突破も期待していたらしい。森自身は「まさか自分が3000mSCをやるとは、思っていませんでした」と、昨年の日本学生個人選手権で話していた。

 面白いのはジェニファー・シンプソン(米国)の存在が、3000mSCを走ることを後押しした点である。
 シンプソンは1500mの11年世界陸上金メダリストで、昨年のモスクワ世界陸上でも銀メダル。しかし、当初強かったのは3000mSCで、08年北京五輪は9位、09年世界陸上は5位に入賞している選手である。
「シンプソン選手のことをテレビで見て、海外では1500mと3000mSCの両方ですごい記録を持っている選手がいることを知っていました。監督に勧められたとき、シンプソン選手のことを思い出したんです」

 シンプソンは3000mSCから1500m、という順番で強くなったが、森は現時点ではその逆の順番で強くなった。1500mで日本トップのスピードは、森の自信にもなっている。
「3000mの走力でも、(3000mSC選手のなかでは)トップレベルにあると思っているので、ハードルをもっとやって行けば(9分33秒93の)日本記録も狙えないことはないと思っています」


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