2014/2/1 別大マラソン前日
渡辺竜二と木滑良
実業団九州チームで叩き上げの2人が初マラソンに挑戦


 “新人の登竜門”と言われる別大で、2人の選手の初マラソンが注目されている。渡辺竜二(トヨタ自動車九州)と木滑良(三菱重工長崎)。ともに大学を経ないで高校から直接実業団入り。九州のチームで鍛えられた2人が、初マラソンの地に別大を選んだ。

@駅伝で“押して行く”走りができる渡辺、森下監督譲りの勝負強さが発揮できるか

 渡辺竜二はニューイヤー駅伝7区で区間賞。チームは前年に続いて2位で、優勝したコニカミノルタが5区、6区と連続区間賞を取ったことも前年と同じだった。2013年は7区もコニカミノルタが制したが、今年は渡辺が7区で一矢報いた。
 10−11月のグランツール九州では3回出場してすべて区間賞。“最後の九州一周駅伝”で最優秀選手賞を獲得した。京都・洛南高出身だが、実業団7年間で日本のトップレベルに成長した。
 12歳離れている兄の共則も高卒で旭化成に入社して北海道マラソン2連覇、防府マラソンで2時間9分台などの活躍した。4人兄弟だが、竜年生まれの2人目という意味で“竜二”と名前を付けられた。

 5月の九州実業団1万mで28分47秒37の自己新。ケニア選手の鐘を聞き1周早くスパートしてしまったが、それがなければ「あと10秒は速かった」(森下広一監督)。内外のハーフマラソンでも好走している。
「自分では調子が良いというよりも、気持ちが充実していると感じています。苦しいところでもう1回、頑張ろうと思えるようになりました」とグランツール九州の際に話していた。
「疲労を抜くにも、長く走って疲労が取れる体にしないといけない。そう監督から言われてトレーニングの発想を以前と変えました。きつくても動かすことでケガも防げる」

 91年の今大会に初マラソンVをやってのけた森下監督は、レース前日に次のように話した。
「練習はすごくいいものができました。不安もありますが、マラソンはスタートラインに立つまでに、その不安をどう消化するかなどを経験をすることも勉強です。それが2回目以降に生かせます。レースになったら集中して(不安を克服して)ハマった走りができるかどうか」

 駅伝でわかるように、1人で押して行く走りができる選手。本人も「マラソンへの適性が一番あると思っている」と話す。初マラソンの目標は「2時間10分を切れたらいいな。上手く乗っていけば可能性はある」(毎日新聞1月31日朝刊)と高いところを目指している。
 森下監督は具体的なタイムは挙げないが「2番、3番でいいと思って練習していない」と、初マラソンながら勝ちにこだわる姿勢を指導している。
 25歳は初マラソンとして若い部類には入らないが、最初から結果を出す可能性も十分感じられる選手である。

A走りに“マラソンのリズム”が感じられる木滑

 木滑良は長崎県の瓊浦(けいほ)高から三菱重工長崎に入社して5年目。昨年のニューイヤー駅伝1区で区間3位、今年も区間賞の大西智也(旭化成)に食い下がって区間2位。1万mでも28分18秒52とチームナンバーワンのスピードを持つ。トラックや1区タイプと思われがちだが、黒木純監督は「マラソンのリズムがある」と言い続けてきた。

 昨年のグランツール九州では20.2kmの最長区間で区間賞。堀端宏行(旭化成)に7〜8kmで追いつかれたが、10kmから前に出て、後半は独走で堀端を引き離した。
 以前はグランツール九州でも1区や2区、16kmまでの距離を走ることが多かったが、今季はマラソンに向けて長い距離の区間も積極的に走った。
「堀端さんが好調でなかったと思いますが、自信にはなりました。マラソンまで走れる手応えはまだありませんが、ウチのチームは小林誠治さんや松村(康平)さんがマラソンで成功されていますから」とグランツール九州の際に話していた。
 ハーフマラソンも3本経験し、1時間2分台で走っている。昨年2月の延岡マラソンでも28kmまでペースメーカーを経験した。

 黒木監督はレース前日「以前はぽかもあったが、今シーズンはマラソンに取り組み安定性が増している」と評価した。
「本人には2時間15分を切ってマラソンの形になって終われば良い、と話しています。1万mで28分前後を出すための強化、という意味合いもある。ただ、トレーニングは2時間10分前後は出せるイメージでやってきました。上手く乗ったら、そのくらいは行ける。練習の走りがレースに直結するようになっているので、不安もありますが期待も大きいですよ」

 木滑本人は「初めてなので最低でも2時間12、13分台で入賞を」(毎日新聞1月31日朝刊)と控えめだ。三菱重工長崎は2時間10分台は何人も出しているが、サブテンの選手はまだいない。そういったこともあって慎重な言い方をしているのだろう。現時点では東京マラソンに出場する松村康平の方が、距離走などでは安定しているのも確かだ。
 だが、練習の距離走のタイムが良い選手がイコール、マラソンのレース本番で強いとは限らない。松村は練習もかなり高い設定で行い結果も出しているが、木滑がどういうパターンで力を発揮するかは試してみないとわからない。

 木滑は元々、「マラソンで日本代表になりたかった。箱根駅伝という意識はなかった」と、純粋に世界を目指して高校から実業団入りした。マラソンへの強い意思は間違いなく持ち続けてきた。そしてチーム一のスピードもある。それらを結果に結びつけられるタイプかどうか。


寺田的陸上競技WEBトップ