2013/1/13 全国都道府県対抗女子駅伝
1区で高校生の上原が区間歴代2位タイの19分00秒
実業団、学生のトップ選手を抑える快走!


 上原美幸(鹿児島女高2年)のキーワードとなりそうなのは、“積極性”“上り”“クロカン”“高校デビュー”“動きづくり”そして“世界”。キーワードというには数が多すぎるか。取材していて印象に残った言葉が多かったということだろう。

 上原は1km前から集団の先頭に立っていた。3km通過は9分21秒で集団はすでに4人に絞られていた。小原怜(天満屋)は11年の日本選手権1500m3位&5000m4位、鈴木亜由子(名古屋大)は12年の日本インカレ5000m優勝、青山瑠衣(ユニバーサルエンターテインメント)は12年の全日本実業団対抗女子駅伝1区区間賞。
 ロンドン五輪マラソン代表で11年日本選手権5000m7位の木崎良子(ダイハツ)、全日本実業団5000m日本人1位の尾西美咲(積水化学)らはその時点で後退していた。

「今日は有川先生たちスタッフの方々が、『やれることはやってきたのだから思い切り行って来い』と背中を押してくださいました。去年のこの大会は初めて1区を走れたことだけで嬉しくて、スローだったのに自分から積極的なレースはできませんでした。この1年間で世界のレースも経験してきましたし、攻めのレースをして鹿児島に勢いをつけたかった」
 上原は昨夏の世界ジュニア3000mで8位に入賞していた。

 3.5km付近から「実業団駅伝(優勝)が終わってホッとしてしまっていた」と言う青山が遅れ、集団は3人に。テレビ画面では正確に把握できなかったが、このあたりでは小原が前に出ていたようだ。
「一回、小原さんが来られたときは、(きつかったが)あきらめずに後ろにつかせてもらって、ラストで行こうと粘りのレースをしました」(上原)
 実業団、学生のトップ選手を相手に気後れはなかったか? という問いかけには、控えめに「はい」と答えた。

 4.3km付近で鈴木が遅れ、小原とのマッチレースに。上原がリードを奪い始めたのは4.6km付近だった。「ラストで行く」というには少し早い地点。ちょうど上りにさしかかるところ。
「最初を3分5秒(と速いペース)で入って、そのまま坂も持ちこたえて行けました。今年は世界クロカンもあるので、坂の練習をしてきました。これまでも坂の練習はしてきたので、坂は得意なんです。(1区は)自分のコースだな、と思っていました」
 上りへの積極的な気持ちが、自然とペースアップする形になった可能性もある。

 19分00秒は下の表のように区間歴代2位タイ。今回、一緒に走って破った顔触れもすごいが、歴代の区間上位者もそうそうたるメンバーだ。
「19分20秒が目標だったので、このタイムはすごく嬉しいです。来年は1区の区間記録も狙いたいですね。トラックでは3000mの8分台、高校記録(8分52秒33)を出したいし、インターハイでは留学生選手にも勝って優勝したいです」
1区歴代10傑
順位 氏名 所属 タイム
1位 山中美和子 ダイハツ 18′44″ 21 2003
2位 永山 育美 京セラ 19′00″ 16 1998
2位 上原美幸 鹿児島女高 19′00″ 31 2013
4位 阿蘇品照美 京セラ 19′01″ 21 2003
5位 小崎 まり ノーリツ 19′02″ 21 2003
6位 山中美和子 ダイハツ 19′03″ 20 2002
7位 小島江美子 埼玉栄高 19′06″ 16 1998
8位 藤永 佳子 諫早高 19′10″ 18 2000
8位 小崎 まり ノーリツ 19′10″ 23 2005
10位 尾崎佐知恵 ワコール 19′11″ 15 1997
10位 西原 加純 佛教大 19′11″ 28 2010

 鹿児島のSCCで結果にこだわらず、色々なトレーニングを積んできた。太田敬介理事長によれば「中学時代は追い込んだ練習はほとんどしていません。短距離系の動きづくりや、ミニハードルジャンプはしっかりやってました」という。全日中やジュニアオリンピックには出場していない(※)
 高校入学後に急成長し、1年時のインターハイ3000mで9位(1年生トップ)。2年時は前述のように世界ジュニア8位とインターハイ3位(日本人トップ)。ベスト記録は9分06秒91、1500mも4分20秒を切っている(4分19秒71)。5000mも15分47秒88で、走れる種目の幅が広そうだ。
※中学で結果を出すことが強化に役立つこともある。どちらが良いかは、選手の成長や考え方、環境によると思われる。

 全国レベルになってまだ2年目だが、世界クロカンを目標にしたり、留学生選手に勝つことを目指すなど、言葉の端々から「世界」を目標にしていることがうかがえる。
「一番の目標はオリンピックです。新谷(仁美・ユニバーサルエンターテインメント)選手みたいにオリンピックで戦って、笑顔で楽しく走れる選手になりたいんです。みんなを笑顔にしたい」
 今大会での高校生1区区間賞は2006年の新谷以来である。

木崎良子のコメント
「上原さんはトラックでも3000mが9分ヒト桁で自分よりスピードがあります。前半から積極的に走って、さらに上りで行けるタフさも感じました。強かったですね。どこかで落ちてくるだろうと思っていましたが、離される一方でした。自分も負けていられないと、良い刺激をもらいました」


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