2013/1/12 全国都道府県対抗女子駅伝前日
区間エントリー発表
アンカーに新谷を擁する千葉が強力布陣
追う神奈川、大阪、岡山、そしてスピードの兵庫
地元京都は駅伝特有の力を発揮できるか?


 12日の監督会議後に区間エントリーが発表された。

 有力チームでは千葉が強力布陣。1区に世界ハーフマラソン8位入賞の田中智美(第一生命)、5区に全日本実業団女子駅伝1区区間2位の土井友里永(スターツ)、アンカーの9区に新谷仁美(ユニバーサルエンターテインメント)と、実業団のトップ選手を要所に配した。
 2区には日本インカレ1万m3位で全日本大学女子駅伝3区区間賞の津田真衣(立命大)もいる。
 高校生ではインターハイ3000m4位の内藤早紀子(市船橋高)を4区に、日本ユース1500m優勝の市村萌捺美(成田高)を6区に起用。中学生も3000mが9分30秒台と9分40秒台の選手。
 その布陣でアンカーに新谷という切り札を持つ。
 新谷は「メンバーも良いので、狙うのは優勝だけ。(今年は8区までも強いので)おいしい思いはできないかもしれませんね。前にいる相手にもよりますが、50秒から1分までなら巻き返します」と自信満々だった。

 対抗するのは岡山と大阪、神奈川か。
 岡山は1区・小原怜、2区・翁田あかりの天満屋勢で好スタートを切り、3区の中学生区間をしのいで、4〜6区の川内理江、足立知世、矢本桜子の興譲館高勢でトップに立つプラン。同高の森政芳寿監督によれば、4区の川内が区間賞を狙えるくらいに状態が良いという。
 アンカーはロンドン五輪マラソン代表の重友梨佐(天満屋)。高校時代の恩師でもある森政監督は「オリンピック選手に成長した重友に任せます。粘って、チームのまとめの走りをしてくれるでしょう」と期待する。
 同じ興譲館高の教え子であり、絶好調の新谷との争いになる可能性も高い。
「でも、30秒(リードが)あったら大丈夫でしょう」と、森政監督は“教え子対決”を予想した。

 神奈川は1区に全日本実業団女子駅伝1区区間賞の青山瑠衣(ユニバーサルエンターテインメント)、4区にパナソニック期待の新人である松山祥子、アンカーにロンドン五輪5000m&1万m代表だった吉川美香(パナソニック)と、実業団勢が強力。
 高校生も国体3000m4位の出水田、9分10〜11秒の森田姉妹とトップクラス。
 アンカーの吉川は全日本実業団対抗女子駅伝3区こそ、軽量の身体が向かい風に不利となったが、明日は好コンディションが予想されている。
「これまでも神奈川は優勝候補の一角と言われていましたが、明日は本当に優勝を目指して頑張ります。中高生も強くて、良いポジションで持ってきてくれると思うので、私が良い形にできるように走りたい。お姉さんが決めてあげたいですね」

 前回優勝の大阪は、そのときのメンバーのうち7人が同じ区間を走る。
 1区は前回区間賞でロンドン五輪マラソン代表だった木崎良子(ダイハツ)で、2区が前回区間2位の出田千鶴(ダイハツ)。
 3区が全日中1500m&ジュニアオリンピック3000m優勝の高松望ムセンビ(薫英女学院中)で、距離の短い中学生区間でも貯金ができる。
 5、6、7区の高校生3人も全員が3000m9分10秒台。7区の松田瑞生(薫英女学院高)は日本ユース3000m3位の選手だ。
 そして9区が、前回も逃げ切った徳田夕佳(スターツ)である。
 1区の木崎は「2年連続優勝をするために、区間賞くらいの走りはしたい」と意気込む。
「中学生、高校生も強いので安心できますが、私がトップから30秒とか遅れてしまったら、精神的に不安を与えてしまいます。私の出だしが、中高生の走りにつながります」

 その他では兵庫、地元・京都にも注目すべきだろう。
 両チームとも実業団選手が他の強豪チームに比べやや劣るが、肩書きだけでは測れない駅伝の力が働く可能性がある。
 兵庫は実業団選手がアンカーの小林祐梨子(豊田自動織機)1人だけだが、その小林を筆頭に“スピード感”ではナンバーワンだ。
 1区の竹地は日本インカレ5000m3位、2区の横江は1500mで4分16秒90の記録を持ち、前回は7区区間賞。3区の安藤はジュニアオリンピック3000m2位で、4区の薮下明音は1500mで2011年の日本選手権2位。5区以降も日本ユースや日本ジュニアの入賞者が並ぶ。
 アンカーの1500m日本記録保持者の小林は、12月の全日本実業団対抗女子駅伝では10.9kmの3区で区間4位と、長い距離にも適応し始めている。
 駅伝では量を走ったチームが安定した成績を残す傾向があるが、スピードを生かした駅伝もあることは、須磨学園高が実証している。今回の兵庫も、そのパターンにはまる可能性はあるだろう。

 京都は立命館宇治高が12月の全国高校駅伝に優勝し勢いがある。
 京都チームで優勝経験もある木崎良子は「高校生たちが、地元ということをプレッシャーと感じないで、楽しんで走るんです。自分たちがやってやるぞ、という気持ちになるんですよ」と、強さの背景を説明してくれた。
 そこに今回は、野口みずき(シスメックス)という五輪マラソン金メダリストが加わる。カリスマ性のある選手が中心になり、さらに目に見えない力が働きそうだ。
 駅伝特有の力が働く可能性が高いチームといえるだろう。


寺田的陸上競技WEBトップ