2013/1/24 大阪国際女子マラソン前々日会見の前日
福士&渋井
1カ月前の全日本実業団女子駅伝で2人が話した手応え


 明日(25日)には共同記者会見が行われる。最新の情報がいくつか出てくると思うが、昨年12月16日の全日本実業団対抗女子駅伝の際に福士加代子(ワコール)と渋井陽子(三井住友海上)の2人に、大阪国際女子マラソンに向けての話を聞くことができた。


マラソン練習期間中では初区間賞の福士
「コツをつかんだ感じです」


 福士はエース区間の3区(10.9km)で区間賞だった。絶好調の新谷仁美(ユニバーサルエンターテインメント。ロンドン五輪1万m9位、福士が10位)に27秒もの大差をつけたのには驚かされた。福士は2001年を皮切りに3区と5区の長距離区間で8個目の区間賞だが、マラソン練習期間中に取ったのは今回が初めてだった。
 2008年1月の大阪国際女子マラソン前の2007年も5区で区間賞だったが、駅伝までの流れは大きく変えなかった。
 1年前はケガもあって夏のテグ世界陸上を回避し、長いスパンでマラソン練習に取り組んでいた。駅伝は3区で集団を引っ張ったが、終盤で杉原加代(デンソー)と清水裕子(積水化学)に引き離されて区間3位(TBS女子駅伝サイトのコラム参照)。走った後に「重かった」と永山忠幸監督に報告している。
 マラソン練習が1年前とどう変わっているのかは現時点では不詳だが、以前のようなトラックと同じ軽さで駅伝を走ったわけではなかった。

「重いですよ。でも、去年よりは何か、ゆとりがありました。体の使い方が上手くなったんですかね。コツをつかんだ感じです。がむしゃらに行くだけではなくなっています。走り終わった今も、体が痛くないですもん」
 解説の千葉真子さん(パリ世界陸上マラソン銅メダリスト)は「太腿ががっちりして、重心移動がスムーズになった」と分析した。一緒に走った渋井も「福士は昔から“天然でゆるい”走りですけど、今日はさらにゆるかった」と、独特の表現で称えた。

 その走りができるようになったことに、マラソン練習も関係していると福士はとらえている。
「気長にやらないと持たないですから。持つような走りを考えていたら、自然とそうなってきたのだと思います。今日は(前年と同じように)清水がついてきてくれたことも良かったですね。最後まで脚が持ったかもしれませんね」

 優勝チーム会見の直前に短時間でコメントを聞いたこともあり、大阪の目標、マラソンへの思いは聞くことができなかった。福士自身、そういう部分はストレートに語らないスタイルでもある。ただ、昨年の大阪レース直後には、悔しさをにじませた。
「(4年前に続いて)またマラソンで失敗しちゃいましたし、これから何回も失敗するかもしれませんが、いつかはマラソンで成功したい」
 今日(24日)の関西テレビの番組でも「1等賞取りたいです」といつもの笑顔で答えていたが、目は笑っていなかったような気がする。

福士のマラソン全成績
回数 月日 大会 成績 記 録
1 2008 1.27 大阪国際女子 19 2.40.54.
2 2011 10.09 シカゴ 3 2.24.38.
3 2012 1.29 大阪国際女子 9 2.37.35.
  2012 11.04 ニューヨークシティ 大会中止

渋井は区間12位もマラソンに向けては“良い走り”
「何が起こるかわからないですよ」

 一方の渋井は区間12位。日本のトップに成長して3区区間賞を獲得した2000年以降では、前年に続いてワースト順位タイ。2010年までは必ず3区で区間上位で走り、三井住友海上の7回の優勝に貢献してきた。「チームの足を引っ張ってしまいました」と反省の言葉が先に出た。
「最初の1kmを福士と一緒に3分を切るペースで入ったんです。そこは風もなかったんで。『速いよ』って言ったんですが、『いいよ、行こうよ』って言われて。そこに小林(祐梨子・豊田自動織機)も加わってきたので、『じゃあ、みんなで行くか』って言いながら、私が一番最初に遅れてしまいました」

 だが、渋井に落ち込んでいる様子はなかった。
「マラソンに向けては良い走りでしたよ。内容は良かったです」
 “良い走り”を具体的に説明するのは難しいが、「後半にだいぶ楽になってきた。距離が少なかったですね」というところは文字にできる部分。あとは感覚的なところだと推測できた。

 だが、以前のように高い設定タイムのマラソン練習はできなくなっている。以前の渋井と違って「私なんかもう」というニュアンスの言葉も聞かれるようになった。
「(大阪でも)そんなに欲はないですよ。なんでしょうか。自分の中で気持ちよく走れればいいな、と思っています。(長年一緒に走ってきた選手とのレースも)嬉しいというか、楽ですね、気分的には」

 その一方で、国際舞台への情熱も持ち続けている。2時間23分59秒以内が“派遣設定記録”だが、二の足を踏むことはない。
「いけますよ、いけます。だって、名古屋(2時間25分02秒で4位)のときよりも良いですから。見てわかりますよね、絞れているのが。大阪の三十路対決で世界陸上の代表を3枠、決めちゃいたいですね。そうなったら面白いですよ。みんな本番でも勝負できますから。後ろでちょこちょこ走る選手たちじゃありませんし。今、面白くないですから、とにかく面白くしたい。自分がそうできたら最高ですね」

 そんためにも「大阪までにもっと絞ります。朝派なんで」と話す。
 “朝派”というのは、朝練習で40km走や、それに近い距離走をすることを指している。高い設定タイムで負荷をかけるのでなく、エネルギーの少ない状態で練習することで負荷をかけている。その他にも色々と工夫をしたトレーニングになっていると推測できる。
「やっている練習が昔とまったく違うので、調子はどうだと聞かれても答えにくいのですが、30歳代なので大人の走りをしたいです。できる練習は少なくなってきていますが、そのなかで無理をしないでやっています。昔ほど“こうじゃないとダメ”っていうのはなくなってきていますし、多少はコントロールもできるようになっているので、上手くやっていきたいですね」

 マラソンで世界陸上代表になれば、2001年のエドモントン、09年のベルリンに続いて3回目。初出場から12年後で実現させたら快挙である。
「大阪だって初優勝の8年後(2009年)に勝てたんですから、わからないですよ。何が起きるか」
 初マラソン世界最高という派手さのあった2001年とは違って、33歳がきっと、“渋い走り”をするのだろう。

渋井のマラソン全成績
回数 月日 大会 成績 記 録
1 2001 1.28 大阪国際女子 1 2.23.11.
2 2001 8.12 世界選手権 4 2.26.33.
3 2002 10.13 シカゴ 3 2.21.22.
4 2004 1.25 大阪国際女子 9 2.33.02.
5 2004 9.26 ベルリン 1 2.19.41.
6 2005 3.13 名古屋国際女子 7 2.27.40.
7 2006 3.12 名古屋国際女子 2 2.23.58.
8 2007 1.28 大阪国際女子 10 2.34.15.
9 2007 11.18 東京国際女子 7 2.34.19.
10 2008 11.16 東京国際女子 4 2.25.51.
11 2009 1.25 大阪国際女子 1 2.23.42.
2009 7.26 サンフランシスコマラソン 1 2.46.34.
12 2009 8.23 世界選手権 dns dns
13 2011 2.27 東京 3 2.29.03.
14 2011 8.28 北海道 3 2.35.10.
15 2012 3.11 名古屋ウィメンズ 4 2.25.02.


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