2013/3/10 名古屋ウィメンズマラソン
国内マラソン2連勝&世界陸上代表決定
木崎の公式会見
「ゴールするまでモスクワに行きたいという気持ちを切らさずに走りました」
「脚で蹴るのでなく、置くだけの走りが自然とできました」


「名古屋城の横の坂を下り終わったところで脚に来てしまいました」
Q.レースを振り返って、今の感想は?
木崎良子 今日は自分のなかでも30kmまで余裕を持って走ろうというプランでした。20kmまでは17分ペースで楽に感じられました。気持ちよく走ることができたのですが、名古屋城の横の坂を下り終わったところで脚に来て、重たくなってしまった。とりあえず30kmまで、35kmまで、40kmまで頑張っていこうと。ゴールするまでモスクワに行きたいという気持ちを切らさずに走りました。

「3人になって、優勝のチャンスもあるかもしれないと」
Q.3人になったところではあまり振り返っていないように見えましたが、日本人1位を必ず取ろうという気持ちだったのか、この大会を制したいという気持ちだったのか。
木崎 3人で走っているとき、野口(みずき・シスメックス)さんの呼吸がちょっと荒れているな、と感じられました。前に出たところはもう、自分のペースで行こうと思って行きました。3人になる前は日本人1位になりたいという気持ちがありましたが、3人になってからはもしかしたら優勝できるチャンスがあるかもしれないと思い始めて、ゴールが近づいたら優勝したいと強く思うようになりました。

「野口さんは前半から自分のリズムで走っていて、『こういう人がいるから日本は強くなったんだな』と思いました」
Q.野口選手が金メダルを取った2004年のアテネ五輪は、どういう思いで見ていましたか。その頃の木崎さんにとって、野口さんはどういう存在でしたか。
木崎 その頃私はまだ、マラソンにそこまで興味がなくて、ただテレビに映っている人、という感じて見ていました。「野口さん、すごいな」って思って見ていました。ただ、同じ京都で陸上をやっていたので、マラソンに限らずどこかで一緒に走れる機会があったら良い経験になるだろうな、と考えていました。
Q.その野口さんとどういう思いで一緒に走っていましたか。
木崎 前半から付くことはしないで、自分のリズムで走っているのを見て、「こういう人がいるから日本は強くなったんだな」と思いました。自分は付くレースしかできませんが、積極的なレースを見させていただき、良い刺激をもらうことができました。

「いつもとは違うスパートをやってみようととっさに思いつきました」
Q.ラストスパートした給水のところを振り返ってください。あそこでスパートしようと決めていたのですか。
木崎 40kmまでの給水で、海外の方の取り方を見て、苦手そうだと思っていたんです。立ち止まって取っているのも見ましたし。最終的なスパートはラスト1kmを切ってからの予定でした。ラスト1kmからどんどん上げていくことなら、自信を持っていました。しかし40kmの給水のところで、父が言ってくれた「今回はチャレンジだ」という言葉も頭にあって、いつもとは違うスパートをやってみようととっさに思いつきました。ここはチャンスじゃないかと、やってみよう、気持ちを切り換えてスパートしました。
Q.お父さんから「今回はチャレンジだ」と言われたのはいつ、どういう状況で?
木崎 アルバカーキから帰って、2月後半ですが、今の状態と名古屋に向けての気持ちを電話で話したら、「今回のマラソンはチャレンジだぞ」と言ってくれました。
Q.それは「攻めろ」という意味でしたか。
木崎 とりあえず私は付くレースしかできませんが、自分で仕掛けるレースをしてみても良い、ということじゃないかと受け取りました。

「ラスト1kmもいつもの練習と変わらない動きができた」
Q.スパートしてから苦しかった場面は?
木崎 ラスト1kmを切ってからも「まだ1kmもある」と感じました。でも、そこで沿道の監督から「残り1kmを3分40秒で行けば2時間23分台で行けるから」と声をかけられて、もう1回動くことができました。いつもの練習と変わらない動きができてよかったですね。監督の声も冷静に聞き取ることができました。
Q.すごくフォームが綺麗になったと思うのですが? 以前よりも脚が流れなくなったし、ロスが少なくなったという印象ですが。
木崎 名古屋城の坂を下ってから脚が重くなってきましたが、呼吸は上がることはなく、肩にも力が入らず、脚も蹴るのでなく置くだけの走りが自然とできました。私は蹴って進む動きでしたが、それではマラソンは持たないということで、練習中にも監督から「置くだけ、置くだけ」と言われ続けてきました。肩甲骨の周りも上手く動かすことができ、肩の力みのない腕振りができました。あと、左手で箸を使うことも、まだやり始めて1カ月ちょっとですが、それも少し役に立ったかもしれません。

Q.監督の評価と感想をお願いします。
林清司監督 今日の木崎はすごく冷静で、練習してきたすべてを生かすことができたと思います。脚で蹴ってしまうところも、朝、シューズを作ってくださっている三村さんにテーピングを巻いてもらってしっかり修正しました。僕が練習でいつも言っていることをレース中でしっかり実行できましたし、応援で声を掛ける毎に彼女はうなづいていた。これは最後まで行けたら必ず勝てると思いました。ラストの争いになると思って残り1km地点で待っていましたが、勝負堪を生かしてその前に勝負をしていた。今日は150点をあげてもいいレースでした。

「体が熱くなって、一睡もできませんでした」
Q.冷静な走りだったということですが、気持ち的にも昨日の夜から不安なく臨めたのですか。
木崎 昨日の晩ご飯まではたくさん喋ってご機嫌だったのですが、夜1人になって、20時くらいに寝ようと思ってベッドに入ったら、体が熱くなって眠れなくなってしまったんです。一睡もできずに3時30分に起きて、「やばい、眠れてない、疲れが抜けてない」と朝ご飯の時も不安でした。とりあえず食事をしっかりとって、そのあとで酸素カプセルで30分横になりましたが、眠れませんでした。でも、アップをして少し気持ちに余裕が出てきました。「ここまで来たらやるしかない、なんとかなる」と。スタートしたらようやく、少し落ち着きました。

「世界陸上へは、20km以降のペースアップに対応できる練習を」
Q.ロンドン五輪は日本人1位でしたが、16位と力が出し切れたかどうかわからない結果でした。世界陸上はどういうレースをしたいと考えていますか。
木崎 今日の後半をイーブンで、少しだけ粘るレースができました。最近の世界大会は20kmを過ぎてのペースアップに対応できるかどうかが課題になっています。これからの練習でしっかりと、20km以降のペースアップに対応して、リラックスして走りきることを課題に取り組んでいきます。


寺田的陸上競技WEBトップ