2013/10/28 グランツール九州2013 第2ステージ
「4区までに1分半のリードを」
旭化成トリオが1〜3区で連続区間賞
第2ステージ個人成績
2日目の宮崎勢は「最後の2区間の選手が練習できていないので、4区までに1分半は貯金をしたい。1〜3区の連続区間賞は取りたい」(白石賢一・旭化成)という共通認識で臨んでいた。
1区(9.4km)の足立知弥(旭化成)が「一番キツイ上り坂」でスパート。距離にすると5〜6kmの間で、早めに仕掛けて2位の福岡に19秒差をつけた。タイムは28分40秒。
2区(12.2km)の白石も37分14秒で区間1位。2位の福岡との差を34秒に広げた。
3区(15.3km)の丸山文裕(旭化成)は「追いつかれることは考えていなかった。しっかり走れば区間賞は取れる」と自分のペースで押して行き、45分51秒で区間賞。2位の福岡に1分18秒差とした。
4区(14.2km)では区間賞こそ熊本の井上尚樹(青学大4年)に43分25秒でさらわれたが、宮崎の河添俊司(旭化成)も2秒差の区間2位。福岡との差は1分50秒まで広げ、予定を20秒上回る貯金を作ることに成功した。
この日一番のピンチは5区(11.3km)の大野龍二(旭化成)が1分09秒縮められたときだった。41秒差と、肉眼でも見える範囲の差に福岡に迫られた。
だが、6区(11.6km)の森賢大(旭化成)は区間2位も福岡との差を広げ、56秒差で佐賀県庁前にフィニッシュした。
足立知弥
「怒鳴られながら走った区間」で雪辱 連続区間賞で第2ステージ優勝を大きく引き寄せた旭化成の3人に、今大会の利用の仕方や今後の目標などを聞いた。3人の特徴が現れていたと思う。
佐世保〜早岐の1区は数少ない10km未満の距離で、“新人区間”とも呼ばれている。バルセロナ五輪マラソン銀メダルの森下広一(現トヨタ自動車九州監督)や、アテネ五輪1万m代表だった大野龍二も、ここで九州一周駅伝デビューを果たしたという。
足立知弥も2004年、入社1年目に佐世保〜早岐を走り、区間3位と振るわなかった。
「宗さん(兄弟)たちに怒鳴られながら走ったことを覚えています。当時はそれがきつかったですけど、今思うとあれで鍛えられました」
足立は過去8年間で区間賞14個を獲得してきた九州一周駅伝の常連だが、今回が入社以来2度目の“新人区間”出走だった。62年間続いてきた九州一周駅伝が今年で終了する。泣いても笑っても最後のチャンスで、足立は1年目の雪辱を果たした。
「最後に取れてよかった」
今回区間賞を取れなかったら、忘れ物をしたような気分で九州一周駅伝を終えることになったかもしれない。すっきりして駅伝、マラソンシーズンに入っていける。
白石賢一
例年と同じように「調子を上げていくための大会」
白石は入社13年目の31歳。第1ステージの優勝テープを切った佐藤智之(旭化成)が2月の別大マラソンで引退を表明し、来季は旭化成チーム最年長となる。積み重ねてきた区間賞は12個。年平均1個のペースは、旭化成勢としては決して多くはない。
「区間2位とか3位も多いのですが、九州一周を走って調子を上げていきます。ここを走ることで1人で走ることが怖くなくなりますし、練習の目安にもなる。ニューイヤー駅伝のように、その日1日だけという大会ではなく、ケガがなければ3回、4回と走るのも当たり前です」
ニューイヤー駅伝は入社3年目の2004年大会から何度も出場している。短い区間を任され、近年は2区の外国人区間が多い。日本人1位を取ったこともある(2011年)。外国人トップとは1分10秒程度の差でとどめていた。
白石が4区(当時の最短区間で10.5km)で区間3位だった2007年にはチームは2位(21世紀では最高順位)、2区で日本人1位となった2011年にはチームは3位と好成績を残している。
2013年は新人の鎧坂哲哉(旭化成)が2区を務めたが、調子を合わせられず区間1位とは1分06秒差だった。だが、今季も全日本実業団5000mでは外国勢相手に積極的なレースを見せて4位と結果を残している。鎧坂が普通の状態なら2区で30秒以内にとどめることも可能だろう。
鎧坂なら「攻めの2区」となるが、白石の場合は「守りの2区」(宗猛監督)だった。今季2区に起用されるとしても同じ位置づけとなるのだろうが、それが旭化成には必要なパーツなのである。個人で華々しい実績があるわけではないが紛れもなく、旭化成が優勝から遠ざかった時代に踏ん張る戦力となってきた。
9月、10月と良い練習ができず、「調子は上がっていない」と区間賞も冷静に受け止めている。例年のように「ここをきっかけに上げていく」だけだ。それが白石にとっての九州一周である。
つづく予定
丸山文裕
「区間賞8個くらいでは自慢にも何にもなりません」
3区の丸山は入社5年目で8個目の区間賞を獲得したが、「あんまり取っていません」と取材に答えていた。いくつなら「取った」と胸を張って言えるのだろう。
「30個くらい取ったら別でしょうけど、8個くらいでは自慢にも何にもなりません。この大会の区間賞には、変にこだわっていると思われたくもないんです」
23歳選手のコメントから、旭化成の選手にとっては区間賞を取って当たり前の大会だとわかった。
「練習では試合のイメージを持って、試合では練習のイメージを持つことを意識しています。試合でリラックスすることが重要なわけですが、大きな大会でいきなりやろうとしても微調整が上手くいきません。この大会でその感覚をつかむと、大きな大会でも生かせると思います」
丸山は入社1年目に区間賞1個、2年目には3個と若い頃から九州一周駅伝では結果を残した。九州実業団駅伝でも区間賞を取り「練習では“オッ”と思える走りをする」(宗猛監督)が、ニューイヤー駅伝は4年間一度も走っていない。九州一周駅伝を生かし切れていない思いもあるのだろう。
その丸山が今年3月の全日本実業団ハーフマラソンに1時間01分15秒で優勝したときには驚かされた。ケニア選手の集団に一度離されかけたが追いつき、18〜19kmでスパートしたレース内容も素晴らしかった。
「(全国優勝を経験したことで)この大会に臨む意識が変わったというよりも、勝ちたい気持ちがより強くなりました。本当に強い選手は自分のコンディションが悪くても、ここでは負けないでしょう。宇賀地(強・コニカミノルタ)さんや宮脇(千博・トヨタ自動車)だったら負けるわけがない。自分はまだ、2人のレベルに達していません」
九州一周駅伝で区間賞を量産する。日本代表レベルに成長するためには当たり前のこととして丸山はとらえている。
足立と丸山
大分県出身コンビのこの冬のマラソン
旭化成勢にとっては、駅伝をマラソンに結びつけるのも当たり前のこと。足立知弥は3月のびわ湖で2時間10分22秒で9位。それ以前の4回のマラソンは2時間11〜13分台。目標としていたサブテンは達成できなかったが「マラソンでやっていける」手応えをつかんだ。
びわ湖以後は「練習を1カ月続けると故障が出てしまう」という。練習のレベルを上げたためかもしれないが、そこを何らかの工夫をして乗り越えないと、日本代表にはなれない。
この1カ月はしっかりと練習を積めているという。2月の東京マラソンを目標にしている。
丸山は2月の別大で初マラソンに挑むプランを持っている。プランというよりも、初マラソンで優勝する強い意気込みだ。
「足立さんもそうですし、谷口浩美さん、森下広一さんと、旭化成の偉大な先輩たちが別大で優勝してキャリアを重ねて行かれました。僕もそこに加わりたい。入社したときからずっと、その思いを持っていました」
この冬のマラソンシーズン注目の2人になりそうだ。
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