2012/2/26 東京マラソン
川内のレース後会見
給水失敗も自身の弱さを強調
「福岡のあとあのまま出なかったら選ばれなかった。6分台、7分台を出した選手がオリンピックに行って日本を代表して戦ってくれれば、僕が(東京マラソンに)出た甲斐があった」

Q.まず今日のレースを振り返ってひと言お願いします。
川内優輝 前半5kmくらいは落ち着いて入れましたが、自分の技術不足で5km、10kmと給水を失敗してしまい精神的に動揺してしまったのがよくなかったのかなと思っています。15kmくらいからきつくなってきて、なんとか20kmまでは付いたのですが、22、23kmくらいに離れてしまいまして、そこからあとは粘る展開になってしまいました。福岡で同じ状況になったときは長身のロシア選手がいたのでなんとか一緒に行くことができたのですが、今回はそういったことができなくて1人でペースを保つことができませんでした。

Q.春日部高の生徒や先生方も応援に来ていたわけですが、その姿や声援などは川内さんに聞こえたでしょうか。
川内 そうですね。終盤はずっと“川内頑張れ”という声援がすごくて。終盤は色んな人が、色んな形で応援してくれました。春日部高校に限らず、学習院の人たち、埼玉県庁、鷲宮(?)、僕の知り合いなどもかなり来てくれていました。応援してくれたおかげで完走できたと強く思っています。

Q.前半、福岡より力んでいるように見えましたが、いつもと違う感覚だったりズレがあったりということはありませんでしたか。
川内 5kmの給水に失敗したところでかなり、ちょっと嫌だなと思ってしまったので、そういうふうに思わずに切り替えればよかったのですがなかなか…。世界陸上のときも15kmで給水失敗して集団から落ちてしまいましたので、そうした面で精神的に未熟だったのかなと思っています。

Q.福岡と東京が終わりましたが、改めてロンドン五輪への思いを聞かせてください。
川内 自分のオリンピックへの挑戦は終わってしまいました。ただ福岡のときに2時間6分台、7分台といった記録がきっと東京とびわ湖で出ると思っていて、実際に今日7分台の記録が出て、2番手の選手も8分台の記録で走りました。福岡のあとあのまま出なかったら選ばれなかったと思っています。次のびわ湖で6分台、7分台を出した選手を含めて、そういう選手がオリンピックに行って日本を代表して戦ってくれれば、僕が(東京マラソンに)出た甲斐があったのではないかと思っています。

Q.福岡で日本勢トップだったのでまだ選考される可能性があるわけですが、川内選手の中でオリンピックへの思いが途切れた部分はあるのですか。
川内 福岡は日本勢トップでしたが今回の結果からして選ばれるとは思っていませんし、今回7分台、8分台といういい記録が出ましたので、びわ湖でも刺激を受けて良い記録が出ると信じています。そうした6分台、7分台の選手が代表として行ってくれるのではないかと思っています。

Q.給水に失敗した理由はなんでしょうか。また今回のレースへの調整段階で何か失敗したことはありましたか。
川内 調整としては特に問題なくやれていたと思います。給水に失敗した理由としては、ボトルをもう少しわかりやすく差別化を図れば良かったと思っています。似たようなボトルが並んでいまして、僕はボトルにシールを貼っていたわけですが、シールが貼ってある部分がよく見えなくて。そういった部分の準備をしていなかったのが自分の経験不足というか、実力不足でした。

Q.中盤で後退した場面は体がどういう状態だったのですか? またゴールした後車いすで運ばれていましたが、どんな状況だったのでしょうか。
川内 集団から落ち始めてからだんだん脚が重くなっていきまして、リズムが悪かったのか、両足に血マメができてしまいました。それでもなんとか走っていたのですが、ゴールした後はぶっ倒れてしまいました。本当にいろいろな人から手紙などももらっていまして、毎回ぶっ倒れてみっともないから2度と走らないでほしいという手紙ももらっていました。今日は曇っていて涼しかったのに、手脚がしびれてしまいハムストリングスとかふくらはぎがつりそうになってしまい、結局ぶっ倒れてしまいました。血マメなどの治療もあって、なかなか医務室から出てこれないという状況でした。

Q.今回は注目されることでプレッシャーとか、精神面でこれまでと何か違ったことがありましたか。
川内 トレーニングをしているときに写真を撮られたり、インターバルをやっているときに声をかけられたりして思うように練習できない部分はありましたが、そうしたプレッシャーに耐えなければオリンピック選手になれないと思っていました。うまく練習できなかったり、普通に道を歩いているときも何か声をかけられたりとか、そういうのに耐えなければオリンピック選手になれないとは思っていたのですが、そうした面で自分自身弱かったのかなと思っています。

Q.今はショックもあると思いますし、反省したり、情けないという気持ちだと思いますが、冷静に考えれば1つ選考会に勝っていて候補には挙げられます。選んでほしい、オリンピックに行きたいという気持ちはありませんか。
川内 選考会1回目のタイムが非常に良いものであればそういう気持ちになると思うのですが、1回目のタイムがせいぜい10分を少し切っただけのタイムで、今日の東京マラソンを含めると日本人で4番目くらいのタイムにしかなりませんから、選ばれるとは思っていません。びわ湖はもっと良い記録が出ると思っていますので。僕は以前から戦える選手になってオリンピックに行きたい、そのために7分台は必要だと言っていました。そして僕自身は出せなかった。何年も7分台が出てないと言われている中で、やっぱり7分台とか8分台を出せる選手がいっぱい出てきました。自分自身はそういうタイムを出していないわけですから、そういうしっかり結果を出せる選手が戦うべきだと思っています。

Q.選ばれたら出たいという気持ちはありますか。
川内 なんともコメントできませんが、選ばれないと思っていますので。

Q.序盤の給水失敗を引きずったそうですが、42.195kmのなかで精神的なダメージから回復するため、何か気持ちの切り替えなど図ったりしましたか。それとも、いつもよりもあきらめの気持ちが出てしまったのですか。
川内 精神的に回復を図ろうとして、他の選手につこうとしたりしたんですが、去年の福岡みたいなリズムにはならなくて、なかなかついていけないという部分もありました。最後の方は応援のおかげでなんとか走りきることができました。以前、僕が学生のときの東京マラソンは15km、20kmくらいのところで失速して2時間18分くらいかかったときもありました。終盤いつもよりは粘れていないと思いますが、それでも(5km)17分かからずに、また何人か抜き返してという部分もありました。応援してくれた方にとっては粘りではなかったと思うのですが、自分の中では以前よりは少しはましだったのかなと思っています。

Q.世界陸上後も独特のやり方でここまでやってきましたが、今後どんな部分を改善し、どのようにマラソンに取り組んでいこうと考えていますか。
川内 今回の結果は悔しい部分がたくさんありますが、自分のやり方は2年間自己ベストが更新できなかったら変えなければいけないと思っていて、一応(丸亀ハーフで)自己ベストは更新しましたので、あと2年間は今のやり方で追求していきたいと思っています。


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