2012/1/26 東京マラソン招待選手発表
赤羽が東京マラソンにエントリー
背景にはロンドン五輪への“ぶれない”気持ち


 1月26日に発表された東京マラソンの招待選手に赤羽有紀子(ホクレン)の名前があった。
「国内女子のレースで唯一のIAAFゴールドラベルレースである東京マラソンに出場できることを本当に嬉しく思っております。目標であるロンドンオリンピックの表彰台に向けて、世界トップレベルの選手の方々と競り合い、自己記録の大幅更新を目指したいと考えておりますので、応援よろしくお願い致します」
 赤羽はマネージメント事務所を通して上記のようにコメントした。
 東京には昨年のヴェニス・マラソンに2時間23分37秒で優勝したヘレナ・キロップ(ケニア)ら、2時間25分以内の記録を持つ選手が5人出場する(外国勢3人と赤羽、原裕美子)。ペースメーカーが付くかどうかは現時点では公表されていないが、2時間22分前後を狙えるレース展開も十分期待できそうだ。

 ただ、赤羽は五輪選考レースの名古屋ウィメンズマラソンに出場する可能性もあるという。昨年8月のテグ世界選手権でメダルを取れば五輪代表に内定したが、結果は5位。現時点でも有力候補には違いないが、1月末の大阪国際女子マラソンの結果を見て名古屋への出場を最終的に判断する。赤羽サイドは大阪後に出場レースを表明したかったが、東京の発表が規定で1月26日と決められているため今回の形になった。
 両大会出場を考慮するのは選考システム上やむを得ないことで、赤羽の考え自体はまったくぶれていない。目指すのはロンドン五輪でのメダル獲得。「(そのために)この冬はマラソンを1本走ります。東京マラソンになるか、海外になるかわかりませんが、記録を狙いたいと思っています」。11月の東日本実業団駅伝の頃から一貫して言い続けてきた。

 世界選手権で明確になった課題はスピードだ。09年のベルリン世界選手権直前に故障をした反省から、テグではコンディションを整えることを優先した。その結果、ポイント練習の間隔を4日と広げ、結果的にスピードで追い込む練習が不足した。32kmでアフリカ勢に一気にスパートされて対応できなかったのである。
 アフリカ勢に引き離されたとはいえ、35〜40kmは16分31秒と、赤羽もかなり速いペースでカバーした。世界大会では初めて、終盤まで走りきった手応えを持つことができた。赤羽周平コーチも「スパートされたときの差が、フィニッシュでの差になりました。優勝したキプラガトと最後の2.195kmは変わっていないし、2〜4位の選手よりも有紀子の方が勢いがあった」と分析。あと少しのスピード対応ができれば、メダルにも手が届く。

 この冬目指したのは、トラックで代表となった北京五輪の頃のスピードを取り戻すこと。昨年の終盤は駅伝を利用した。例年は12月の全日本実業団対抗女子駅伝から1月末の大阪国際女子マラソンという流れだったが、今回は駅伝のあと2カ月の日程がとれた。その分、スピード練習を多く行うことができたという。実業団駅伝は「“今日は絶対に走れる”と思ってスタートしましたが、力み過ぎて体がまったく動いてくれませんでした」という理由で珍しく失敗したが、5日後の山陽女子ロードでは1時間09分16秒で快勝。スピード練習の成果を見せた。
 東京マラソンでは自己記録を更新して、2時間23分台に入るのが最低目標となるだろう。できれば2時間22分台、21分台も視野に入れながらの挑戦となる。昨年のロンドン・マラソンで2時間24分09秒の自己記録を出したときの5km毎は以下の通り。東京でも前半は16分40〜50秒台で押していくのではないか。結果的に中間点は1時間11分台で選考レースのペースメーカーのタイム設定と同じになる可能性が高い。条件が良ければ1時間10分台か。
赤羽のロンドン・マラソン2011の5km毎
距離 5km 10km 15km 20km 25km 30km 35km 40km 記録 中間 後半
通過 16:39 33:21 50:25 1:07:41 1:24:33 1:41:36 1:58:50 2:16:15 2:24:09 1:11:27 1:12:42
スプリット 16:39 16:42 17:04 17:16 16:52 17:03 17:14 17:25 7:54
 仮に東京にペースメーカーがつかなければ、前半から外国勢とのつばぜり合いが続く。そのなかで一気にスパートして外国勢を引き離すことができれば、ロンドン五輪に向けて最高のシミュレーションとなる。赤羽のこの冬の活動はすべて、ロンドン五輪に向けての取り組みという視点で見る必要があるだろう。


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