2012/1/8 谷川真理ハーフマラソン
川内が2012年初走り
東京の2時間7分台達成に向けて必要なことは?
そして、川内タイプの選手における
スピードとは?

 川内優輝(埼玉県庁)の今季初戦は、一昨年(優勝)、昨年(3位)に続いて谷川真理ハーフマラソンだった。新荒川大橋近くの広場をスタート・フィニッシュとし、荒川河川敷で行われる市民ランナー向けの大会。川内は下流に向かってスタートし、堀切橋近くを折り返すBコースに参加して1時間06分19秒で2位だった。優勝は上流に向かってスタートするAコースに出場した徳本一善(日清食品グループ)で1時間05分36秒。
 川内はレース後に「この大会はすれ違う人が多く、『川内ガンバレ』とみんなが応援してくれる。すごく楽しくて、良い練習になりました」と感想を話した。
「しかし今年も逆コースの人に負けてしまってすごく悔しい。この悔しさを来月の東京マラソンにぶつけます。東京では2時間7分台が目標。“オリンピックで戦える”と評価してもらえる走りをしたい。2時間7分台を出して負けたら仕方がないので、タイムを狙って頑張ります」

 風が川内の行く手を阻んだ。スタート後は追い風で「5kmが14分54〜55秒くらいで、10kmが30分10秒くらいの通過」だった。しかし、折り返し後は強い向かい風。「3分15〜20秒くらいに落ちてしまいました。5km毎で16分くらい。それで微妙なタイムになってしまいました」
 微妙なタイムと言うが、それほど気にしているわけではない。負けたことは悔しいが、自身の走り自体には合格点という雰囲気だ。
「この大会は競る相手がいません。今日も徳本さんが別コースになってしまい、独走になってしまいましたから、タイムは65〜66分と思っていました。前半からしっかりと突っ込んで、終盤に粘ることが今日のテーマ。想像以上に風が強くて終盤で落ち込み、あまり良かったとは言えませんが、落ちたなりにペースを維持できました」

 年末年始は公務員ランナーの川内にとって重要な期間。仕事は休みだが「練習の休みはなかった」という。特に年末は母校の春日部東高の合宿に参加。「朝から1万2000mのビルドアップとかをやって、1日50〜60km走りました。普段は20kmしか走れませんので、2.5倍くらいは走っていました」
 高校の合宿で50km? 高校生とは別メニューだと思って確認すると、高校生でも3部練習全部を合わせて1日50kmなのだという。
「それくらい追い込んでいる学校ですが、今年は例年以上に厳しくなっていました。僕もメニュー通りにやって、その結果いつも以上に走れました。60kmをやった日は、自分だけ意図的に増やしましたけど」
 12月4日に福岡国際マラソン(2時間09分57秒で3位)、同18日に防府マラソン(2時間12分33秒で2位)と、2週間間隔でフルマラソンを2本走った。それ自体が常識破りだったが、その後も練習ができないような疲労は出ていない。これもまた、常識を超えている。

「大晦日に40kmジョッグをして、元旦から走り始めています。1月2日は箱根駅伝に梶原(有高・松蔭大)君が出るので応援に行きました。(年末の合宿の)あとはジョッグでつないで、2000mのインターバルを入れてこの大会に臨みました」
※川内が関東学連選抜メンバーで箱根駅伝に出場した際のチームメイト
 すでに1月4日から通常勤務に戻っている。
「多少、疲れが残っていますが、どんどん取れていくと思います。元の1部練習に戻っていますから」
 このあたりの強弱の入れ方、練習の流れの中でのリズムの作り方が川内に合っているのだろう。天性の感覚なのか、これまでの試行錯誤で会得した部分なのか。

 今後は29日の奥むさし駅伝に埼玉県庁走友会チームで出場し、2月5日の丸亀ハーフマラソン、同26日の東京マラソンと例年通りのスケジュール。東京では2時間7分台の記録とともに、トップ集団から離れないレース展開も求められる。
 昨年の東京と福岡国際で日本人トップを取っているが、日本人トップの位置から一度遅れ、終盤で盛り返して逆転している。「その時点の力でまとめる能力は日本一かもしれない」と陸連長距離強化関係者も高く評価している部分だが、やはり最後まで先頭集団に残って勝つレースの方が、より強さをアピールできる。2時間7分台を出すには当然、そういったレース運びをする必要がある。川内自身もそこは意識している。
 では、どういう練習メニューができれば、あるいはどういう練習&レースの流れを作れれば、それが可能になるのか。前述のように年末は通常よりも少し多めに走り込みができた。あとはスピード養成か、とも思ったが、川内は「ほとんど今まで通りの練習をやっていきます」と、練習のペースは崩さない考えだ。
「丸亀でしっかりとタイムを出せば、2時間7分台は十分に狙えます。去年は30kmから前について行かなかったのでタイムが落ちました。今回は25kmからですが(25kmまでペースメーカーが付く)、防府くらいのペースで押していけば、行けると思います。そういうことで、今まで通り、去年通りにやっていきたい」

 そもそも長距離におけるスピードとは何かと考えると、単純な判断はできない。ハーフマラソンでの自己新と、マラソンにおけるスピードアップがイコールでない選手もいる。逆にハーフマラソンの少しの自己新が、大幅なスピードアップにつながる選手もいる。
 川内は後者のタイプではないか。まずはスピード型ではない、という前提がある。そのなかで川内のこの1年を見れば、マラソンランナーとしての総合力は明らかにアップしている。そういったタイプの選手がハーフマラソンの記録が上がれば、マラソンのスピードアップも成し遂げられている可能性は高い。
「丸亀で自己ベスト近く、63分前後では走りたい。それができれば東京マラソンで1km3分ペースがそれほど速いとは感じないと思っています。丸亀の出来が、東京マラソンを占うのではないかと思っているんです」
 昨年の丸亀は1時間02分40秒。気象条件にも左右されるが、このタイムが目安となる。


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