2012/1/28 大阪国際女子マラソン前日
ペースメーカーに1万mA標準突破の清水
「後ろの人が走りやすいように全力を尽くします」
明日の大阪国際女子マラソンのペースメーカーは4選手が務める。アニコ・カロビッチ(ハンガリー)とジュリア・モンビ(ケニア)の外国勢2選手と、清水裕子(積水化学)と出田千鶴(ダイハツ)の国内2選手。ペースは5km毎が16分50〜55秒で3大会(横浜国際女子、大阪国際女子、名古屋ウィメンズ)とも統一されている。日本選手は15kmまでを1人、20kmまでを1人。外国勢が25kmまでという予定だ(変更もあり得る)。
あれっと思ったのが清水である。12月に1万mでロンドン五輪A標準を突破(31分43秒25)したが、1500mから距離を伸ばしてきた選手。ペースメーカーをスピード派の選手がやっていけないわけではないが、意外な感じも若干あった。
一番の目的は1万mでロンドン五輪出場につなげるためだという。ロンドン五輪への気持ちがいっそう強くなったのが12月17日の全日本実業団対抗女子駅伝。3区で区間2位と快走し、チームの3位入賞に大きく貢献した。憧れの存在の福士加代子(ワコール)と競り合い、最後は10秒前でタスキを渡すことができた。
「思い切ってついて行けるところまでついて行った結果です。そのとき福士さんから、『ゆうちゃん、強くなったね』と言ってもらえたことがすごくうれしくて、一緒にオリンピックに行きたいと思いました」
福士とは昨年4月の陸連ボルダー合宿でも一緒だった。その合宿に参加したのは福士、清水の他には杉原加代(デンソー)と吉川美香(パナソニック)。全日本実業団対抗女子駅伝の3区で競り合った4人である。「ボルダーでは1人ずつの練習が多かった」(清水)というが、福士の競技に取り組む姿勢は他の選手を大いに刺激した。
福士はその合宿から直接参加したカージナル招待で30分54秒29と、自己2番目の記録をマーク。日本新は逃したが5年ぶりの30分台であり、9年前の自己記録に迫った。どちらも高く評価されてしかるべき快挙だった。
同じレースで杉原もA標準を突破。全日本実業団対抗女子駅伝の1週間後の日体大長距離競技会で清水が1万mで、吉川が5000mでA標準を突破した。意識の高い4人がボルダー合宿に参加した結果だが、不思議な縁(えにし)も感じられる4人でもある。
清水は全日本実業団対抗女子駅伝後にペースメーカーを引き受けた。野口英盛監督との話し合いの中で気持ちが固まり、陸連に話が伝わって決定した。誤解のないようにしてほしいのは「福士さんに恩返しをしたい」という思いがあるのは確かだが、“福士のためだけ”ではない。自分と同じようにオリンピックを目指している選手たちのため、少しでも役立ちたいという気持ちから引き受けた。
「明日は後ろの人が走りやすいように全力を尽くします。仮に設定タイムと違っても慌ててペースを上げ下げするのでなく、徐々にスピードを変えるつもりです。タイムよりもリズムを大事にします」
そうした五輪選考会のペースメーカーの経験が、自身のオリンピックを目指すことにもプラスになるという判断だ。
「ペースメーカーだから、という気持ちでは走りたくありません。まったく同じにはなれませんが、マラソンでオリンピックを狙う選手たちと同じ気持ちで走りたい。自分がこういう舞台に立ったときにどう思うか。今年の日本選手権のスタートラインに立ったときにプラスになると思うんです」
ペースメーカーも色々な人間関係のなかで走るのであり、そこには強烈な意思も存在する。“ただの先導役”として見るのでは面白くない。
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