日本選手権2012・日付毎展望
第3日・6月10日編
女子やり投が活況、日本新も期待
福本、綾の女子フィールドにベテラン勢登場
●女子走高跳 全種目エントリーリスト
福本幸の6回目の優勝は濃厚。勝てば優勝回数で今井美希やハニカット陽子を抜き単独2位になるが、福本が考えているのはロンドン五輪出場だけ。4月にオーストラリア遠征で1m86に成功。国内の小さな試合でも1m82、83を何度か跳んでいる。「ここ数年感じたことのない浮きを、春先から感じている。日本選手権までに最低でもB標準は跳んでおきたい」。出産して一昨年に復帰。自身の頑張りが女子選手の競技生活の参考になれば、という思いもある。高校生の上島みどりも注目選手。「今年中に1m85を跳びたい」と目標を話す。出場すれば1m82の記録を持つ三村有希や、兵庫2位の京谷萌子らと2位争いを展開しそう。
=陸上競技マガジン6月号記事。以下同
■ロンドン五輪標準記録 1.95/1.92
■突破者 なし 状況は特に大きく変わっていない。
福本幸は関西実業団で1m80。東日本実業団は森あゆ美が1m78、関東インカレは前田愛純が1m76。
高校生は地元の津田シェリアイもエントリーしている。
“期待優勝記録”は1m92の五輪B標準。福本の気持ちが結果に表れてほしい。
●女子ハンマー投 全種目エントリーリスト
綾真澄が兵庫で63m79で優勝。日本選手権に勝てば7回目、最多優勝回数になる。綾は昨年、5年ぶりの67m台となる67m19(セカンド記録)を投げてアジア選手権に優勝。31歳で再上昇する技術をつかんだ。今年はさらに、ターンの入りを変更している。「去年は一瞬浮いていましたが、今年は重心を低くするような練習をしています」。B標準が69m00と上がってる。「遠いのは事実ですが挑戦はしたい。自己新、日本新、すべてひっくるめて、技術は絶対にやっていく必要がある」。室伏由佳は風邪をひいて兵庫を欠場。出場できる状態なら綾に対抗できる唯一の選手。兵庫で59m73の自己新を投げた武川美香がやっと60mを超えそうだ。
■ロンドン五輪標準記録 71.50/69.00
■突破者 なし 綾真澄は香川県選手権で64m06の今季日本最高、関西実業団で63m45。室伏由佳は5月26日に中京大土曜競技会で61m96。
武川美香は59m81とさらに60mに近づいた。
“期待優勝記録”は69m00の五輪B標準。綾が目標としている記録である。
●男子砲丸投 全種目エントリーリスト
前回優勝者の村川洋平が兵庫で優勝。17m96で前日本記録保持者の畑瀬聡に56cm、日本記録保持者の山田壮太郎に61cm差をつけた。ライバル不在だったが水戸も17m66で制した。五輪標準記録は難しい種目だが、気持ちは五輪を目指す選手たちに劣らない。「日本記録(18m64)は超えないと。オリンピックイヤーですから、そういう記録をつくりたい」。山田は1月にケガをした影響で砲丸に触れたのが3月、グライドができたのが4月と出遅れている。だが、兵庫で試合に出て「やるポイントがわかった。日本選手権は負けないと思う」と手応えを得た。学生の宮内育大が4月に17m23と自己記録に5cmと迫った。18mが期待されている。
■ロンドン五輪標準記録 20.50/20.00
■突破者 なし 畑瀬聡、山田壮太郎とも東日本実業団を欠場。上位3人は今季ベスト記録を更新していない。宮内育大が関東インカレで17m35と7cm自己記録を更新した。
“期待優勝記録”は18m65の日本新。4人とも目標としている数字だ。
●女子3000mSC 全種目エントリーリスト
早狩実紀がこの種目が始まった06年からの連勝を“7”に伸ばしそう。織田記念では9分57秒17で独走。B標準を破れなかったが「走りとしては悪くありません。全体的にスピードを上げていけばまだまだイケル」と手応えは感じている。3000mSCに戻ってきた荒井悦加が織田記念2位。齊藤梓は5月4日の熊谷の試合で10分08秒35と、3位だった織田記念よりタイムを縮め、さらに3000mも走った。注目は昨年2位の堀江美里。ハーフマラソンで1時間10分37秒を出すなど冬期で走力が格段にアップした。9分50秒切りが目標という。後潟華奈子と高柳恵の学生コンビが、学生記録をどこまで伸ばすか。
■ロンドン五輪標準記録 9.43.00/9.48.00
■突破者 なし 早狩実紀は拠点のアルバカーキでトレーニングを積み、帰国直前の6月2日にロサンゼルスでレースに出場。10分02秒86で優勝した。
昨年2位の堀江美里もエントリー。走力が格段に上がっている。障害技術も、森岡芳彦監督は過去に愛敬重之や奈良修をコーチした指導者なので、しっかりとやってくるだろう。
桑城奈苗はケガからどの程度回復しているか。
“期待優勝記録”は9分43秒00のA標準。昨年の世界40位のタイム。
●男子走高跳 全種目エントリーリスト
前回優勝の戸邊直人が好調で兵庫2m16、水戸2m20で2連勝。昨年のユニバーシアードで腰を痛めた反省から、この冬は基礎体力の底上げを図った。その上で「ヨーロッパ、オーストラリアなどで質の高い練習ができた」と言う。兵庫では衛藤昴が、水戸では高張広海が戸邊と同記録で2位。衛藤は昨年後半は戸邊をしのいでいたが、今季は助走変更がまだ結果に結びついていない。高張はウエイトトレーニングで失敗した昨年の経験から、今季は「今ある筋肉を最大限に生かす」やり方に変更。結果が出始めた。土屋光は足首の捻挫で出遅れている。日本記録保持者の醍醐直幸も復帰して、B標準の2m28以上での決着を期待したい。
■ロンドン五輪標準記録 2.31/2.28
■突破者 なし 高張広海が東日本実業団で2m22の今季日本最高。戸邊、衛藤と対等の勝負をしそうな雰囲気だ。
戸邊は関東インカレで2m19、衛藤は東海インカレで2m15。
停滞感を一気に破るような快記録を期待したい。“期待優勝記録”は2m28の五輪B標準だ。
●男子三段跳 全種目エントリーリスト
五輪B標準の可能性はある。昨年16m50台の十亀慎也と石川和義、16m48の岡部優真の3人が期待の選手。岡部が好調で4月第1週に16m48の自己タイを跳ぶと、織田記念も16m31で優勝。上背はそれほどないが、「スピードを生かしたバランスの良い跳躍」(陸連強化関係者)をする。石川はマウントサックで左足首を痛めてしまったが(15m94)、16m50くらいの跳躍ができていた。織田記念は欠場したが足首はほぼ完治。「日本選手権は17mを跳びたい」と意気込んでいる。十亀が足底から踵の故障の影響で織田記念は15m49と出遅れたが、潜在能力は高い。本番に間に合えば三つ巴の戦いになる。梶川洋平もそこに加わりたい。
■ロンドン五輪標準記録 17.20/16.85
■突破者 なし 岡部優真が九州インカレで16m50と、+1.9だが今季日本最高を更新。優勝候補のポジションを固めた。東日本実業団は長谷川大悟が16m05(+1.5)。
今季の16m台はこの2人。やはり、石川和義、十亀慎也の故障が癒え、一気に跳んでくることを期待せざるを得ない。
“期待優勝記録”は16m85の五輪B標準。
●女子1500m 全種目エントリーリスト
今年も混戦が予想される。5連勝していた吉川美香が昨年から距離を伸ばしたこともあり、昨年の優勝記録は4分20秒41と低調。優勝の小林美香(↓)をはじめ、高校生が3人も入賞してしまった。その小林は兵庫で日本人8位。本番までにどう調子を上げてくるか。木村友香、福田有以、横江里沙も期待される高校生。昨年2位、日本インカレ優勝の薮下明音の動向が今季聞かれないのが気になる。ベテランの宗由香利(↑)が熊本日本人1位と健在。陣内綾子(↑)は昨秋の国体優勝に続き、今春の兵庫の1500mも日本人1位。日程的に800mと1500mが最終日。どちらに出場するかは未定だが、1500mに出れば優勝候補筆頭だ。
■ロンドン五輪標準記録 4.06.00/4.08.90
■突破者 なし 陣内綾子が800 mではなく1500mに絞ってきた。
ゴールデンゲームズinのべおかで宗由香利が4分20秒31と今季日本2位の記録で走った。今季日本3〜7位は高校生が占めている。
関東インカレ2連勝の森智香子や、上田敏斗美らも力はあるはず。
“期待優勝記録”は4分08秒90の五輪B標準。
●女子やり投 全種目エントリーリスト
海老原有希が静岡で61m14と自身の日本記録に迫る投てきを見せた。「正直、抜けたと思いましたが、最後押し込めたから出てくれた、という感じの記録です。複雑です」と満足していない。ただ、その投げでも61mが出たことは自信になった。昨年の日本選手権は宮下梨沙に敗れたが、世界選手権はA・Bの組みあわせで出場できた。オリンピックはその組み合わせは不可。「日本選手権をなんとしてもとります」と言葉にも力を込めた。一方の宮下は静岡で55m97。昨年の日本選手権で出した60m08とは開きがあるが、自己2番目の記録。「方向性がまだばらばらだが、タイミングが合えば飛ぶ」と投てき強化関係者。A標準を期待したい。
■ロンドン五輪標準記録 61.00/59.00
■突破者
A |
海老原有希 |
スズキ浜松AC |
61.14 |
2012/5/3 |
静岡国際 |
B |
宮下梨沙 |
大体大TC |
60.08 |
2011/6/11 |
日本選手権 |
B |
佐藤友佳 |
東大阪大 |
59.22 |
2012/5/13 |
関西インカレ |
男子だけでなく女子も活況を呈してきた。
関西インカレで佐藤友佳が59m22と、海老原有希の学生記録を大幅に更新。的場葉瑠香は2月に55m26を投げ、関西実業団では54m76で宮下梨沙に勝っている。
関東インカレでは川述優が54m77とこれも好記録。
国際大会での実績や記録のアベレージでは海老原の力が抜けているが、“一発勝負”の場なので、どうなるかわからない。
“期待優勝記録”は61m57の日本新。仮に海老原以外が勝つとしても、五輪A標準を投げて2人の代表を出してほしい。
今季日本リストの6位から9位にジュニア選手が並んでいる。
●女子400mH 全種目エントリーリスト
静岡で田子雅B標準を破り、久保倉里美、青木沙弥佳と合わせて標準記録突破者が3人になった。しかし、5連勝中の久保倉の優位は動かない。静岡、(レースは不成立だったが)川崎と日本人1位。1〜2台目の15歩を試しているところで、それがまとまれば日本記録更新もありそうだ。優勝回数が6になれば、吉田真希子(→)を抜いて単独最多となる。青木も3台目まで15歩に挑戦しているが、現時点では後半の失速が大きい。田子は学生時代から5台目まで15歩だったが、現在は6台目までに伸ばしている。2人とも「A標準を切る」のが目標だ。静岡で青木に先着し、56秒80とB標準に迫った米田知美に勢いがある。
■ロンドン五輪標準記録 55.50/56.65
■突破者
A |
久保倉里美 |
新潟アルビレックスRC |
55.34 |
2011/6/26 |
大阪選手権特別レース |
B |
米田知美 |
中大 |
56.21 |
2012/6/9 |
日本選手権準決勝1組 |
B |
田子 雅 |
スポーツ塾 |
56.57 |
2012/5/3 |
静岡国際 |
B |
青木沙弥佳 |
東邦銀行 |
56.62 |
2011/6/26 |
大阪選手権特別レース |
準決勝1組で米田知美が56秒21と五輪B標準を突破。青木沙弥佳が57秒02で2位。
「せっかく準決勝ができたので、通るだけでなく学生記録(55秒94)を狙う機会が増えた考えました」
インターバルの歩数は5台目まで15歩で、9台目までが16歩、10台目だけ17歩。最後は利き脚で踏み切るために、あえて17歩に増やしているという。
米田が新たに標準記録を切ったことで、標準記録突破者は福島大選手が2人、中大が2人となった。
「決勝も学生記録を狙います。順位はその結果ついてくれば」というスタンスで臨む。
準決勝2組は久保倉里美が56秒69で1位。田子雅が57秒16で2位。すでにA標準を破っている久保倉は、「いかにエネルギーを使わずに決勝に進むか」を考えたという。標準突破済みの3選手は、この考え方だったと思われる。
久保倉は今大会では15歩を使っていない。「準決勝が良い感じだったので」と話しているが、決勝でどうするか。
“期待優勝記録”は55秒33の日本新。久保倉以外が勝つ場合も、A標準で勝ってほしいという意味である。
●男子1500m 全種目エントリーリスト
接戦が予想される。金栗記念選抜中長距離熊本大会(以下熊本)、兵庫リレーカーニバル(以下兵庫)と村上康則が日本人1位を続けている。5000mの代表入りに懸けて種目を絞る可能性もあるが、現時点では1500mの優勝候補。ただ、高谷将弘も熊本で0.03秒差、兵庫0.01秒差で力の差はない。昨年の優勝者の井野洋は熊本こそ7位だったが、兵庫で日本人3位と調子を上げてきた。2年連続“伏兵V”があるかもしれない。不気味なのは上野裕一郎だ。兵庫は練習代わりに使って静岡の5000mで日本人1位に。「5000mが良いときは1500mも良い」(上野)。先に行われる5000mで勝てば、09年のように2冠を制する可能性は高い。
■ロンドン五輪標準記録 3.35.50/3.38.00
■突破者 なし 村上康則が欠場。未確認だが、故障があったという情報も聞いた。
予選1組は2連勝のかかる井野洋が3分45秒81で1位。日本選手権にしっかり合わせて来たという印象。学生の今崎が3分46秒10で続き、上野裕一郎が3分46秒33の3位、田子康宏が3分46秒47。
予選2組は田中が3分52秒33で1位。今季の実績で村上に続く高谷将弘が3分52秒68で2位。
井野か、上野か、高谷か。
しかし、“期待優勝記録”は3分40秒35。日本歴代11位の田子康宏の自己新となるタイムにした。
●女子800m 全種目エントリーリスト
岸川朱里と久保瑠里子が五輪代表に意欲を見せている。2連勝中の岸川は昨年のアジア選手権後に新しいトレーニングを導入。スピード持久力の強化に取り組んできた。4月のアメリカ遠征は2分06秒60と2分04秒63。まだ結果に結びついていないが、例年、日本選手権で調子を上げてくる。久保は昨シーズン後半に調子を上げ、日本歴代2位の2分01秒90を記録。今季は4月上旬に大腿を軽く肉離れした影響で織田記念2分05秒39、川崎2分07秒64と記録は出ていない。それでも川崎では「中盤で外国選手に離されながらもしっかりとつけた」と感触は良くなっている。2人とも前を走ることができるタイプ。好勝負と標準突破の両方を期待したい。
■ロンドン五輪標準記録 1.59.90/2.01.30
■突破者 なし 予選1組は真下まなみが2分06秒67で1位、岸川朱里が2分07秒30で2位。2組は久保瑠里子が2分06秒71でトップ、吉澤彩夏が2分06秒97で2位。
久保は「今日は(今季で)一番余裕を持って600 mを通過できました。ラスト150mをしっかりイメージして、その通りに走れました。良い感覚で日本選手権を迎えられています」と、手応えは十分。
岸川と2人で引っ張り合って、“期待優勝記録”の1分59秒90(五輪A標準)に挑んでほしい。
●男子800m 全種目エントリーリスト
横田真人がどんなレースをするかが一番の注目点。静岡、川崎と標準記録突破に失敗。テグ国際(5月16日)で破ってていれば優勝に照準を絞れる。昨年のように「圧倒的な強さを見せるレース展開」(横田)をするだろう。日本選手権で記録も狙うとなると楽ではないが、過去に1人で記録を狙って走ったこともある。不可能な話ではない。口野武史と川元奬が“打倒・横田”に意欲を見せている。口野は静岡でペースメーカーを務めたが「600mまですごく楽だった」という。川元は川崎で1分48秒51で横田に先着。「500m過ぎでペースが上がったときに上手く反応できればもっと行けた」。目標は2人とも五輪標準記録だという。
■ロンドン五輪標準記録 1.45.60/1.46.30
■突破者
B |
横田真人 |
富士通 |
1.46.19 |
2012/5/16 |
テグ国際 |
2週間前にジュニア日本記録を出したばかりの川元奬が予選3組3位でまさかの落選。
「300 m過ぎで後ろの選手と脚が当たって、リズムが崩れました。そこでみんな前に行ったので、それに付こうとして無理をしてしまった。ラストは全然動きませんでした」
今崎俊樹(立命大)が3組2位で、1時間少し前の1500mに続いて予選通過。ナイストライである。
横田真人は2組1位通過。
「A標準を狙うというより、勝負だと思う。五輪がかかっている試合なので、勝てるレースをしたい。圧倒的な力を見せて勝ちたい」
つまり、レース当日の状態を見極めて、ハイペースで圧倒するか、途中でスパートして一気に差を広げるか、どちらのパターンにするか決めるということだろう。
“期待優勝記録”はやはり五輪A標準の1分45秒60である。
●男子110mH 全種目エントリーリスト
学生選手が次々に台頭し、勢いがある種目。昨年の日本選手権で大学2年の矢澤航が優勝したのがきっかけだった。昨秋は佐藤大志が日本インカレで矢澤を破って優勝、水戸招待では年度日本最高の13秒67を向かい風でマークした。4月の織田記念は佐藤と矢澤が日本人ワンツー。日本選手権も神奈川出身コンビの対決になると思われた。1〜2台目でリードする矢澤に対し、中盤以降で追い上げる佐藤。そんな展開が予想されたが、川崎では和戸達哉が佐藤を抑えて日本人1位。13秒71の自己新で史冬鵬(中国)に競り勝った。和戸も前半からスピードに乗るタイプ。学生3選手の争いにベテランの田野中輔がどう絡むか。
■ロンドン五輪標準記録 13.52/13.60
■突破者 なし 予選は1組が追い風0.8m、2組が−1.1m、3組が±0、4組が−0.2。
評価が難しいが2組で13秒88の古川裕太郎、3組で13秒73の田野中輔、4組で13秒78の佐藤大志と13秒80の八幡賢司あたりはB標準突破の可能性はある。2組で13秒94の矢澤航もスイッチが入れば動きが変わるか。
最終日に準決勝もあるので、標準記録突破のチャンスは2回。“期待優勝記録”は、ほとんどの選手が目標と話すA標準の13秒52。
●女子5000m 全種目エントリーリスト
異なる勝ちパターンの選手が揃い、目が離せない展開になりそう。前回優勝の絹川愛、世界選手権で決勝に進んだ新谷仁美、1500mから距離を伸ばしてきた吉川美香、そして静岡優勝の小林祐梨子が優勝候補。序盤からハイペースで入るのが新谷。兵庫10000mに優勝するなど、スタミナ面も進歩を見せている。中盤からのロングスパートなら、絹川が昨年の日本選手権で新谷を引き離した実績がある。残り300
mなら吉川、最後の直線なら小林と、中距離出身の2人がラストに強い。B標準を破っている西原加純と正井裕子は不調から立て直せるか。そしてもちろん、日本記録保持者の福士加代子も優勝候補だ。
■ロンドン五輪標準記録 15.20.00/15.30.00
■突破者
A |
絹川 愛 |
ミズノ |
15.09.96 |
2011/6/12 |
日本選手権 |
A |
新谷仁美 |
ユニバーサルエンターテインメント |
15.13.12 |
2011/6/29 |
ホクレンDistance Challenge士別大会 |
A |
吉川美香 |
パナソニック |
15.15.33 |
2011/12/24 |
第12回日体大女子長距離競技会 |
A |
福士加代子 |
ワコール |
15.18.46 |
2012/5/12 |
ゴールデンゲームズinのべおか |
B |
木崎良子 |
ダイハツ |
15.22.87 |
2011/9/25 |
第218回日体大長距離競技会 |
B |
小林祐梨子 |
豊田自動織機 |
15.23.38 |
2012/5/27 |
第224回日体大長距離競技会 |
B |
西原加純 |
ヤマダ電機 |
15.23.80 |
2011/10/7 |
国体 |
B |
正井裕子 |
日本ケミコン |
15.29.69 |
2011/10/7 |
国体 |
1万m優勝の吉川美香の2冠が濃厚。吉川に勝てるとしたら新谷仁美がスタートから超ハイペースで飛ばしたとき。福士は以前ほど連戦がきかなくなっているが、底力はある。
1万m3位の絹川は、2日あれば変わることができるかもしれない。
そして北京五輪代表の小林祐梨子が、5月の最後にB標準を突破。1500mで何度も繰り広げた吉川との好勝負が、5000mに種目を移して再現されるか。
“期待優勝記録”は14分59秒99。各選手が持ち味を出し合えば、自然とペースが上がっていくはず。福士に続いて日本人2人目の14分台を期待したい。
●女子200m 全種目エントリーリスト
静岡で福島千里が23秒12と、パフォーマンス日本歴代3位の好タイムで走った。「いつもトップスピードに乗っていたところでピークがこない」と不満を話すが、この種目でも2位以下を圧倒しそうだ。福島独走の雰囲気は、高橋萌木子の不調にも原因がある。静岡では23秒74で市川華菜にも敗れてしまった。早く福島と競り合っていた頃の状態に戻り、女子短距離を盛り上げてほしい。市川は昨年、リレーメンバー入りを意識して織田記念から全開で行ったが、今年は日本選手権から上げる調整か。その状態でも静岡で23秒68と自己記録に近いタイムで走った。岡部奈緒、今井沙緒里は不本意だった静岡から立て直せるか。
■ロンドン五輪標準記録 23.10/23.30
■突破者
B |
福島千里 |
北海道ハイテクAC |
23.12 |
2012/5/3 |
静岡国際 |
予選1組で市川華菜が23秒51(+0.4)の学生歴代2位。100 mは予選落ちしたが、しっかりと立て直してきた。「ベストですが、狙った記録からはほど遠い」と不満を口にした。目指しているのは標準記録突破だ。
高橋萌木子が24秒02で2位。
2組は福島千里が23秒43(+1.0)で1位、今井沙緒里が24秒00で2位。今井も100 mでは7位に沈んだ。市川と今井がテグ世界陸上に続いてリレー代表入りすするには、200 mで福島に迫る走りをする必要がある。
福島は「集中しきれない理由がある」と100 m優勝後にコメント。体調がベストではないようだが、“期待優勝記録”は日本新である。
●男子200m 全種目エントリーリスト
標準記録突破者が7人と、長距離・競歩を除けば最も多い激戦種目。高平慎士は静岡国際(以下静岡)で20秒89の8位。昨年も同程度のタイムでスタートし、日本選手権に合わせて優勝した。本番への調整力を考えるとV候補筆頭か。静岡優勝の山縣亮太は、この種目への出場は関東インカレ後に決める。高平に対抗する一番手は高瀬慧か。静岡では山縣と0.02秒差の2位。昨年よりも後半に重点を置いた走りに変更した。飯塚翔太は静岡で20秒85で4位。3月にインフルエンザにかかり調整が遅れているが、昨年よりも前半が速く入れるようになった。藤光謙司、齋藤仁志らは日本選手権に絞った調整をしている。
■ロンドン五輪標準記録 20.55/20.65
■突破者
A |
高平慎士 |
富士通 |
20.49 |
2011/6/11 |
日本選手権 |
A |
高瀬 慧 |
富士通 |
20.53 |
2011/5/22 |
東日本実業団 |
A |
齋藤仁志 |
サンメッセ |
20.55 |
2011/6/10 |
日本選手権予選1組 |
B |
川面聡大 |
中大 |
20.56 |
2011/5/22 |
関東インカレ |
B |
小林雄一 |
法大 |
20.59 |
2011/5/22 |
関東インカレ |
B |
小林雄一 |
法大 |
20.59 |
2011/6/10 |
日本選手権予選2組 |
B |
山縣亮太 |
慶大 |
20.62 |
2011/5/22 |
関東インカレ |
B |
藤光謙司 |
ゼンリン |
20.63 |
2012/6/9 |
日本選手権予選1組 |
B |
飯塚翔太 |
中大 |
20.64 |
2011/6/11 |
日本選手権 |
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