2012/3/11 名古屋ウィメンズマラソン
尾崎の快走で五輪選考は難航予想
代表3番手は中里、赤羽、尾崎が候補か
「今晩考えさせてほしい」と陸連
“当てる物差し”次第の選考基準は現状に合わないのでは?
名古屋ウィメンズマラソン終了時点の女子マラソン五輪代表候補は以下の選手たち。
選手 |
所属 |
可能性 |
選考会成績 |
重友梨佐 |
天満屋 |
確実 |
大阪国際女子マラソン優勝(2時間23分23秒) |
木崎良子 |
ダイハツ |
有力 |
横浜国際女子マラソン優勝(2時間26分32秒) |
中里麗美 |
ダイハツ |
候補 |
世界選手権10位(日本人2位・2時間30分52秒)
名古屋ウィメンズマラソン3位(日本人2位・2時間24分28秒) |
赤羽有紀子 |
ホクレン |
候補 |
世界選手権5位(日本人1位・2時間29分35秒)
名古屋ウィメンズマラソン8位(日本人6位・2時間26分08秒) |
尾崎好美 |
第一生命 |
候補 |
世界選手権18位(日本人3位・2時間32分31秒)
横浜国際女子マラソン2位(2時間26分49秒)
名古屋ウィメンズマラソン2位(日本人1位・2時間24分14秒) |
名古屋ウィメンズマラソンのレース直後には「重友と尾崎が当確」という速報記事もあったが、そのうちのいくつかは訂正され、「重友と木崎が確実」という論調になった。夜のテレビ(名古屋ウィメンズマラソン主催のテレビ局系列)では「重友と尾崎が確実、残り1枠を木崎、中里、野尻あずさが争う」という紹介の仕方だった。
高橋尚子さんは別のテレビ局で重友、木崎、尾崎の3人に「◎」を付けたが、尾崎は絶対とは言えない、という見解を示した。
メディアによって予測が違うのは、選考が簡単でない現状を示している。
レース後の陸連会見で「尾崎選手の選考会3レース出場ををどう考慮するか」という質問に対し、陸連の河野匡強化副委員長から次のようなコメントがあった。
「今晩、考えさせてください。中身をここで一度、真っ白にするのも我々の役割だと思います。選考は一番近いレースが印象深くなる、ハロー効果と言いますが、そこも考慮しないといけない。1回リセットする時間をいただきたいと思います。テグ(世界選手権)、横浜、大阪、名古屋と一緒のイメージにして選考していきたい」
尾縣貢専務理事もレースの印象として尾崎のコンディショニングとレース展開を絶賛した後に「マヨロワ選手が出たところで反応できなかった。世界の戦いを見据えたときに簡単に引き離されたのは残念」と話している。
これらは、“ハロー効果”という言葉も出たように、選考直前の名古屋の結果が有利に働くことを自戒しているということ。この会見を受けて、「尾崎当確」を外した社が多いと聞いた。
現状を整理すると普通に考えて重友梨佐(天満屋)は確実だ。選考レース優勝者で、タイムも一番良い。陸連が設定したペースメーカーが外れた後に1人で抜け出したレース内容も、申し分ない。
木崎良子(ダイハツ)も有力。タイムは2時間26分32秒と最も悪いが、スタート時に22℃あった気象状況やレース内容から、そこまで大きなマイナス要素にはならない。それよりも、尾崎に直接対決で勝っていること、選考会で誰にも負けていないことが考慮されそうだ。マラソンで国際舞台の実績がないが、近年の選考では選考会の成績が重視されている。
3枠目を中里麗美(ダイハツ)、赤羽有紀子(ホクレン)、尾崎好美(第一生命)が争う。3人の対戦成績は、
中里:赤羽に1勝1敗、尾崎に1勝1敗
赤羽:中里に1勝1敗、尾崎に1勝1敗
尾崎:中里に1勝1敗、赤羽に1勝1敗
で、まったくの五分というか三すくみ状態なのだ。結局のところ、当てる“物差し”によって選考選手が違ってくる。
“安定度”という物差しを当てれば中里になる。“世界選手権重視”の物差しになれば赤羽だ。“直接対決の追試”の成績ならば尾崎ということになる。
過去には“世界選手権重視”の選考がされたこともあったが、その場合は対象選手が選考レースを他に走らなかった。
“直接対決の追試”で勝った選手が選ばれたこともある。2009年の世界選手権女子20kmWがそうで、1月の日本選手権、3月の全日本競歩能美大会と小西祥子と大利久美が直接対決。1勝1敗だったが、“追試”の能美大会に大差で勝った大利が選ばれた。
2009年の女子20kmWと今回は似たケースだが、上述のように尾崎の3回目の選考レース出場が陸連を慎重にさせている。世界選手権の5位を選ばないのもおかしい、という意見も根強い。
選考過程は今晩(11日)に強化委員会が原案資料を作成し、明日(12日)の理事会前に外部の有識者を入れた原案策定会議で審議、最終的には理事会で決定する。強化委員会が作成した資料の優先順位を、原案策定会議や理事会が覆す可能性もある。陸連といっても人間によって考え方は異なる。
名古屋ウィメンズマラソンのレース後会見では、尾崎と赤羽がロンドン五輪代表入りに強い意欲を示した。陸連は「選ばれた選手も、選ばれなかった選手も納得してもらえるようにしたい」と渾身の努力をするが、現実的にそれは困難だ。選手の気持ちを考えると酷な選考システムだと思う。
世間の注目を長期間集められることなど複数選考会方式のメリットもあるが、選手間の実力に大差がない現状を考えると、選考レースを1本化することが望ましい。ただ前年の世界選手権メダルや、女子ならば2時間21分内を指定期間に出した選手など、特別枠を1つくらい用意してもいいだろう。
個人的には4年に一度、現在のような形式的なものではなく、“真のマラソン日本選手権”を開催することを提案したい。名古屋ウィメンズマラソンのように有力選手が一同に会せば、国民はワクワク、ドキドキして注目するだろう。感動を生むマラソンになるはずだ。
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