2012/3/11 名古屋ウィメンズマラソン
レース後会見
野口みずき
6位・2時間25分33秒
「(涙の理由は)ここに帰って来られて良かったという安心感の方が大きかった」
「10年前の名古屋での初マラソンが2時間25分30秒台。今回も2時間25分30秒台なので、またここからがスタートなのかな」


「あきらめない気持ちで頑張って行ったらヒザの抜ける感じが元に戻ってくれました
Q.スタートから前の方でレースを進めていましたが、どういう思いで前の方にいたのですか。また、一度離されて、追いついてからの主導権争いに関してはどう考えて走っていたのですか。
野口みずき (ナンバーが)11番で、1番テーブルなので、前半は給水をとるのに接触とか起きないようにと思って1番前の方に出たりしていました。自分のペースを崩さないようにという思いもあって先頭にいたんです。途中17km過ぎくらいにまた左ヒザが抜けるような感じがして、左ヒザに力が入らなくなって離されてしまいました。しかし前の方の集団も落ち着いたペースで走っていて、目の前に見えていたのであきらめないで追いついていこう。そういう気持ちで前についたのですが、集団についてから余計な力を使ってしまったのかなという感じはあります。今までの自分のスタイルを貫きたいという気持ちで前に行きました。
Q.6位になってしまった敗因は何だったと思いますか。また名古屋ドームに入ってから流した涙の意味を教えてください。
野口 どれだけ頑張っても1位でなければ負けてしまったということになるんですが、自分としては4年半ぶりのマラソンに不安半分、ワクワク感半分でした。それでも優勝を目標としていました。敗因は、大阪に向けたボルダー合宿でまた左の脚の炎症を起こしてしまって、スライドしましたが期間が短かったのかなという気もします。去年の8月から本格的に練習が再開できましたが、ずっと走り続けてきた体ではない中でやってきました。スタミナ切れではなかったと思いますが、ずっと走ってこなかった分後半ダメージが来たのかな、という気がします。ドームに入って涙が出てしまったのは、こういう結果ですけど走り切れて良かったという気持ちがすごく強くて。オリンピックを逃してしまったという悔しさもあったのですが、どちらかというとここに帰って来られて良かったという安心感の方が大きかったと思います。
Q.大震災の日に野口さんが帰ってきてくれて、一度離されて追いつくという走りに情念を感じた方が多かったと思います。ヒザが抜けるような感覚というのはオランダのときと同じような感覚だったのでしょうか。また追いつけたのはどういう気持ちだったからでしょうか。
野口 ……増田(明美)さんにねぎらいの言葉をかけてもらって、嬉しくて涙が出てしまいました。抜けた感じはオランダのときと同じような感じです。でも、そのときよりは軽いかな、という感じはしました。本当にあきらめないでマラソンをやり続けたい気持ちが(レース前から)すごくあって、同じような気持ちがレース中にもあって、その気持ちで頑張って行ったらヒザの抜ける感じが元に戻ってくれました。本当にあきらめなくて良かったと思います。

「20km以降の方が脚が動けていた。まだまだやれるという気持ちがするので、まだやめません」
Q.今後(の競技続行)についてはどのように考えていますか。
野口 こういう結果だったのですが、4年半ぶりのマラソンです。昨年の8月からようやく普通の練習をやってこの記録、この順位でした。また走っている中でも20km以降の方が脚が動けている感じでした。まだまだやれるんじゃないかという気持ちがするので、まだやめません。
Q.今日のアップの感覚と、走ってみての感覚はどうでしたか。レース後半の走りが良かったと思うのですが、朝のジョッグの走りと比べてみて。
野口 ウォーミングアップは廣瀬監督が見ていて、ちょっと軽い感じがすると思ったようです。前半は体力を消耗しないように落ち着いていきなさいと言われていたのですが、給水ポイントのこともあって前半少し力使っちゃったかなという感じはします。でも後半の方がなんとなく体が動けていたという感じがするので、走るたびによくなっている気はするのですが、ちょっと今回間に合わなかったのかなという感じです。
Q.レース勘や位置取りに関して、久しぶりという意味で何か動きにくかったということなどはありましたか。
野口 ちょっと、ちょこちょこ動きすぎたかなという感じはします。
Q.野口さんにはスタートラインに立った時の気持ちを、廣瀬監督にはスタートラインに送りだしたときの気持ちを教えて下さい。
野口 スタートラインに立った時はいつも通り真っ白でした。これからいくぞという気持ちと、久々の緊張感がありました。
廣瀬永和監督 やっとここまで来た、というのが正直な気持ちです。左の太ももを痛めて大阪を回避した状況の中で昆明で3週間やってきて、その結果が今回どう出るか、今持っている野口の力がどれくらいあるのか、そのあたりも私が知りたかったことです。その中でレース中に脚が抜ける状態を修正しながらしっかり完走してくれたので、これからもまだまだいけるなという思いはあります。
Q.練習でもヒザが抜けるときはあるんですか。
廣瀬 練習では全くありません。レースでスピードに対応した時に、オランダのときもそうでしたが、今回も途中離れたときに“あれ、なんかおかしいな”というのはありました。後半になるほど動きが良くなってきたのは事実です。

「満足はしていませんが、4年間の努力は報われた」
Q.河野匡強化副委員長が「また海外でチャレンジしてほしい」ということを言ったのですが、野口選手ご自身はどうですか。また4年後のリオデジャネイロについてはどのように思っていますか。
野口 すごく嬉しいです。ありがとうございます。私も河野さんから直接話しかけられて、挑戦したい気持ちはすごくあります。ただ、今すぐどこというのは、落ち着いてからでないと決められません。少し休んで落ち着いてから、気持ちを切り換えてやっていきたいなと思っています。
Q.野口さんは金メダリストで日本記録も持っています。走るモチベーションは何でしょうか。また今日は3.11ですが、何か特別な思いというのはありましたか。
野口 走る上でのモチベーションは、距離が長ければ長いほど後半頑張れるので、どれだけ転んでも立ち上がれるんです。レース中の走りと自分の人生といったら大げさですけど、陸上、マラソンをやっていく中で重なるものがあります。あきらめない、負けず嫌いなところがたぶん大きいと思うんですが、何度転んでも絶対立ち上がってやるという気持ちはすごく持っています。3.11と同じ日にこのレースがあって、東北の人たちには本当に応援をしてもらってきました。ハーフマラソンやFRA(藤田ランニングアカデミー)の行事で行かせてもらって、色んな言葉をかけてもらっているところなので、本当に感謝の気持ちを持って走りたかった。それが強くありました。あきらめないところを見せたい気持ちもあったので、だからこそヒザが抜けたときも頑張れたのだと思います。
Q.今日のレースを振り返って4年間の努力が報われたのか、それとも満足していないのか。その点いかがですか。
野口 どちらとも…。満足してしまったら終わってしまうというか、満足していませんので。でも4年間の努力は報われたな、とは思っています。4年間の中でも、この1年半でようやく選手らしい体になって、選手らしいレースができるようになってきました。まだまだだなとは思いますけど。また10年前にこの名古屋で初マラソンを走って2時間25分30秒台だったんですね。それで今回も2時間25分30秒台なので、またここからがスタートなのかなと思っています。また、次のステージに上がるために、ここからスタートしていきたいと思っています。

「(廣瀬監督に)まだまだ諦めすにやっていこうと思っていますので、よろしくお願いします」
Q.沿道の声援も大きかったと思いますし、久しぶりに先頭集団で駆け引きをして42.195kmを走ったと思うのですが、今日マラソンを走って再確認したこと、新たに確認したことはありますか。
野口 本当に沿道の皆さんの声援がすごくて、また一緒に走っているランナーの皆さんかも声をかけてくれて、それが本当に力になりました。マラソンをこの状態で走ってみて、新たな発見というか、立ち上がるときにオランダの15kmとかハーフマラソンを走ってきた中で、マラソンが一番私には向いているんだなという気はしました。20km以降はヒザが抜けた状態でも立て直してペースを上げていけるというところも感じましたし、またちゃんとこのまま故障せずにやっていったら、ベストとかも狙えるんじゃないかという気持ちはありました。発見というか、手ごたえみたいなものをこのレースで感じ取れました。
Q.隣にいる廣瀬監督が良いときも悪いときも一緒にやってこられました。監督に対する思いを教えて下さい。
野口 廣瀬監督と一緒にロンドンに行きたかったんですけど…(涙)、ホント申し訳ない気持ちでラスト50mは涙が出てきてしまったのですが、でも廣瀬監督は笑顔で迎えてくれて…。(復帰できたのは)ファンの人が応援してくれたからですが、一番はやはり諦めずに私を指導してくれた廣瀬監督なので、いろいろな思いがあります。まだまだ諦めすにやっていこうと思っていますし、廣瀬さんのマラソンの記録(2時間18分55秒=1996年パイロット・マラソン)を早く更新したいと思っているのでよろしくお願いします。
Q.監督にもひと言いただきたいのですが。今の気持ちはどうですか。
廣瀬 僕も野口をもう一度オリンピックに連れていきたかったのですが、そこは野口だけのせいではなく、私の指導不足というか力不足ということを感じています。もう1回、野口も僕も納得のいくレースをやりたい気持ちもあります。だから本当に、野口も言っていますが、あきらめない心で指導していきたいなと思っています。
Q.オリンピック・チャンピオンとしてのプライドを見せてくれた4年間だったと思いますが、2度のオリンピック代表になった野口さんから、ロンドン五輪代表に対してどういう思いがあるのか教えてください。
野口 代表に選ばれた人たちには、オリンピックは4年に1度のアスリートにとっての最高の舞台なので、緊張せず本当にリラックスして、思いっきり自分のパフォーマンスを出してほしいなと思っています。ロンドン・オリンピックはその日しかないので、その日に悔いの残らないように思う存分楽しんでもらいたいなと思います。


寺田的陸上競技WEBトップ