2012/8/11 ロンドン五輪展望
9日目(8月11日)午後の部
午前中の男子50kmWで入賞ラインが大幅アップ
日本新を大幅に更新すれば入賞の可能性も
大会9日目午後の部はトラック&フィールドの最後となる。登場する日本選手は下記の選手たち。
女子20kmW:大利久美(富士通)
:渕瀬真寿美(大塚製薬)
:川崎真裕美(富士通)
男子やり投決勝:ディーン元気(早大3年)
男子4×100 mR決勝:日本(山縣亮太、江里口匡史、高平慎士、飯塚翔太、九鬼巧)
10kmWだった時代も含め、女子競歩に3人がフルエントリーするのは五輪史上初めて。
北京五輪後の女子競歩はまず、渕瀬がリードしてきた。2009年のベルリン世界陸上で9位入賞。日本記録も1時間28分03秒と更新した。
その渕瀬が故障がちになったこともあり、昨年から大利久美が国内では無敵に。テグ世界陸上でも日本選手最高順位だった(20位)。
3大会連続代表となる川崎も「次こそは入賞を」と強い気持ちで4年間を過ごしてきた。テグ世界陸上後にひざの内視鏡手術もしたが、3月の選考会に間に合わせてきた。
渕瀬が世界陸上で7位になっているので入賞を期待したいところだが、シーズンベストでは大利の13位が最高。この日の午前中の男子50kmWは8位入賞が3時間41分24秒と、過去最高だったソウル五輪の3時間45分43秒を大きく上回った。優勝タイムの3時間35分59秒も大幅な五輪新だったことから記録が出やすいコンディションなのは確かで、かなりの高速レースとなりそう。
ちなみに男子50kmWの、オリンピックにおける着順別最高タイムと、ロンドン五輪のタイムを比較すると下記のようになる。
|
ロンドン五輪 |
順位別最高記録 |
1位 |
3.35.59. |
3.37.09. |
2位 |
3.36.53. |
3.38.56. |
3位 |
3.37.16. |
3.39.45. |
4位 |
3.37.54. |
3.41.00. |
5位 |
3.37.54. |
3.43.03. |
6位 |
3.38.55. |
3.44.07. |
7位 |
3.39.01. |
3.44.49. |
8位 |
3.41.24. |
3.45.43. |
女子20kmWの8位最高タイムは1時間27分46秒。日本記録を更新すれば8位入賞の可能性はあるが、男子50kmWのように順位別過去最高記録が更新されたら入賞は厳しくなる。現実的には五輪過去最高順位の13位(北京五輪の川崎)を上回れば健闘といえそうだ。
ただ、森岡紘一朗(富士通)が自己新を出したように、日本選手も自己新を出す可能性はある。入賞の可能性もまったくないわけではない。
ディーンに入賞の可能性、83mが目安か
“倒れ込み”に勢いがあれば期待大
男子やり投のディーン元気に入賞の期待がかかる。
予選通過は「Q」なので2投目で終了したが、予選全体で7番目の通過。シーズンベストも決勝進出者中8番目。ぎりぎりの位置で大一番に臨む。
入賞へのカギは“安定度”ということになる。この種目は世界のトップ選手でさえ記録、順位とも安定しない。「下半身の使い方が下手だから」というのが関係者間の定説である(日本選手でも安定している選手は少ない)。
試合の中での安定感というよりも、自己記録に近い数字をマークする安定感である。その点で今季のディーンは信頼できる。
82m07(4位):ロンドン五輪予選B組(8月8日)
78m72(1位):トワイライト・ゲームス(7月22日)
84m03(1位):日本選手権(6月9日)
81m54(1位):関東インカレ(5月12日)
84m28(2位):織田幹雄記念国際(4月29日)
79m60(1位):東京六大学(4月15日)
79m26(順位不明):30th Annual Victor Lopez Classic(3月24日)
上記のように3〜4月のプレマッチでは79m台と少しずつ自己記録を更新。3月のアメリカの試合は、沖縄からの長時間移動の疲労が取れないなかでの試合だったし、東京六大学は追い込んだ練習をしながら出場した。
圧巻はブレイクした織田記念後の試合での安定した記録を残し続けていること。体調不良だった関東インカレでも81m54を投げ、五輪最終選考会の日本選手権は自己記録に25cmと迫った。五輪前最後の試合は調整試合で78m72に終わったが、ロンドン五輪予選では82m07と予選標準記録をクリアした。
ディーンには国際舞台での強さでも実績がある。
2010年の世界ジュニアは76m44の自己新で銀メダルを獲得したし、前述のようにロンドン五輪予選でも82mを超えた。決勝でも82〜83m台は確実に投げてくるだろう。
2004年アテネ五輪の8位は83m01、前回の北京五輪は82m06。世界陸上の過去5大会平均は81m24である。
見る側の判断基準の1つが、リリース後の倒れ込み方。左肩の開きが早さとも関連している部分だが、そこを肉眼で見分けるのは難しい。予選の1投目のように“勢いなく倒れただけ”のときは、地面からの力をしっかりと受けていない。予選2投目のように“弾かれるように倒れ込む”ときは、地面からの力を大きく受け取っているときだ。
風の影響を大きく受ける種目なので“風次第”ではあるが、予選の2投目のように倒れ込めたら入賞の可能性が高い。
男子4×100 mRの日本が2大会連続メダルに挑戦!
日本が37秒台を出すか、有力チームにミスがあれば…
日本(山縣・江里口・高平・飯塚)の予選のタイムは38秒07(日本歴代2位。海外日本最高)。全体で4番目、シーズンベストでも4番目という記録。日本より良いのは37秒38のアメリカ、37秒39のジャマイカ、38秒05のカナダである。ただ、残りの4チームも38秒10から38秒29。3位の可能性もあれば、ちょっとしたミスで8位に落ちる可能性もある。
見方が2つあると思う。
1つは日本が37秒台を出すケース。予選はかなり力を出し切っての38秒07だった。その点、外国勢はバトンパスの精度が低いなかで出したタイム。予選に出場した4選手のシーズンベスト合計タイムでは、ジャマイカとアメリカだけでなく、トリニダードトバゴとカナダが日本を上回っているという。外国勢が決勝で記録を伸ばしてきたら日本のメダルは難しくなる。
もう1つの見方は、その状況でもバトンパスをしっかりと行い、お互いの信頼感で思い切りスタートを切るのが日本の伝統。予選では2→3走と3→4走はまだ、若干改善の余地があるパスだった。決勝で万全のバトンパスができれば37秒台を出せるかもしれない。
それに対して外国チームの中には、バトンパスが雑で失敗してくる可能性もある。
日本が北京五輪チームのように、決勝でタイムを縮めることができればメダルに手が届く。ただ、本当に全てが決まらないといけない。確率的には3割くらいか。
2強のアメリカとジャマイカを含め、メダル争いをするチームにバトンミスがあった場合も、日本のメダルの可能性が高くなる。この確率が2割くらい。
合わせて5割くらいの確率でメダルを取れると思いたい。
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