2012/8/8 ロンドン五輪展望
6日目(8月8日)午前の部
男子棒高跳の山本は海外初試合
経験が重要という“常識”を覆せるか

 大会6日目午前の部に出場する日本選手は以下の3選手。

男子棒高跳予選A組:山本聖途(中京大3年)
男子十種競技・100m:右代啓祐(スズキ浜松AC)
男子5000m予選1組:佐藤悠基(日清食品グループ)
男子十種競技・走幅跳:右代
男子十種競技・砲丸投:右代


 山本聖途は今大会が海外初試合。国際大会で力を発揮するには経験が必要、というのが日本の陸上界では“常識”になっている。特にフィールド種目では経験に左右される要素が多々ある。室伏広治(ミズノ)でさえ、当初は力を発揮できなかった。
 日本選手権で澤野大地(富士通)とジャンプオフの激闘を制した山本だが、“常識”で考えたら力を発揮できずに敗退することになる。ロンドン五輪で経験を積み、今後の競技生活で飛躍をすれば、今大会に参加した意義は十分ある(福島千里パターン)。

 だが、山本が力を発揮する可能性はゼロではない。“常識”にとらわれない何かしらの能力を持っている可能性もある。男子100mの山縣亮太(慶大2年)は世界ユース、世界ジュニアと世界大会を経験し、海外合宿にも参加しているが、シニアの国際大会は初めてだった。
 経験がないことをプラスに変えてしまう、俗に言う怖いもの知らずの心構えで臨めば道が開けるかもしれない。

 4月末の織田記念で5m60の学生新、6月の日本選手権優勝、7月の西日本インカレで5m62の学生新と、好調を維持している。ピークを作らなくても高いレベルの競技状態を維持できるのは若さの特権だ。
 また、山本の能力に対する評価も高い。陸上競技マガジン8月号で船津哲史先生が次のように書いている。
 スピード、テクニックとも一級品です。体重は軽いですが、保持しているポールは元日本記録保持者の小林史明選手が使用していた反発力を超えたと聞いています。腰の高い助走から、ポールに対してエネルギーをロスすることなく踏み切る技術は他を圧しています。今以上に反発の高いポールを使用できるのではないかとも思います。
 勢いがあり、調整や会場の条件がそろえば、決勝進出や入賞の可能性もあります。ポスト沢野大地選手(富士通)の一番手として、ロンドンオリンピックで浮上してもらいたいものです。

 予選通過記録は5m70だが、テグ世界陸上は5m50、ベルリン世界陸上は5m55まで通過している。ただし、北京五輪は5m65とレベルが高かった。他力本願のところもあるが、決勝進出の可能性がないことはない。

十種競技に48年ぶりに出場の右代
今季は走りの意識を変更したことが好結果に
初日前半で成長した姿を見せられるか?


 右代啓祐の2011年日本選手権(日本記録8073点)と昨年のテグ世界陸上(7639点・20位)、今年の日本選手権(8037点)の内訳は下記の通り。
2011日本選手権 2011テグ世界陸上 2012日本選手権 各種目ベスト記録
記録 得点 累計 記録 得点 累計 記録 得点 累計 記録 得点 累計
11"39(-1.1) 776 776 11"42(±0) 769 769 11"29(+1.2) 797 797 11"27(+1.9) 801 801
6m96(+0.9) 804 1580 6m96(+0.2) 804 1573 7m45(+1.6) 922 1719 7m45(+1.6) 922 1723
13m71 711 2291 12m88 660 2233 13m89 722 2441 13m98 727 2450
2m06 859 3150 2m02 822 3055 2m03 831 3272 2m06 859 3309
50"28 802 3952 50"89 774 3829 50"58 788 4060 50"28 802 4111
14"93(+0.5) 858 4810 15"20 (-0.1) 825 4654 15"01(-1.7) 848 4908 14"93(+0.5) 858 4969
43m67 740 5550 43m84 743 5397 47m25 813 5721 47m25 813 5782
4m90 880 6430 4m40 731 6128 4m70 819 6540 4m90 880 6662
73m06 936 7366 67m73 855 6983 66m27 833 7373 73m82 948 7610
4'35"83 707 8073 4'43"87 656 7639 4'42"63 664 8037 4'26"68 767 8377

 テグでは100m、走幅跳とそれほど悪い出だしではなかったが、砲丸投で自己記録を1m下回った。走高跳、400mもやや不本意な記録で、初日は日本記録ペースを156点下回った。
 日本記録時と比較した場合、2日目の方がマイナスは大きかったが、できれば1日目から日本記録ペースを上回って波に乗りたい。

 良い兆しはある。今年の日本選手権の走幅跳で7m45の大ジャンプ。それまでの自己記録を大幅に更新した。2日目が悪コンディションで日本記録更新は逃したが、条件に恵まれれば8200点も可能だろう。
 走幅跳が良くなった理由は、スプリントの強化に成功したことだと右代は話している。
「僕にとって走ることは永遠の課題ですが、日本選手権のときから走りを変えたことで、走る種目や走幅跳で好記録が出ています。それまでは接地の仕方を意識していたのですが、日本選手権から腿を前に前にと出す意識に変えました。接地で力を入れるとスタートで起き上がってしまいましたが、今はスタートで遅れなくなりました。日本選手権の100mは脚がつってしまって11秒29でした(自己記録は11秒27)。100mはまだまだ伸びます。オリンピックもその走りで行きます」
 100m、走幅跳と続く1日目の序盤で勢いをつけたい。

佐藤はスパートした先頭集団でどこまで粘れるか

 佐藤悠基はレース前、日清食品グループのツイッターで下記のようにコメントした。

これから5000m予選に行ってきます。相手はかなりの格上ですが、最後つぶれる覚悟でどこまで付いていけるか、100mでも長く付いていこうと思います。派手に散ってきます!

 スローペースで始まり、途中から超ハイペースになる展開が予想される。そのスパートに食い下がるのは難しいが、自身で引っ張って集団を絞れるかというと、それも難しい。
 オリンピックで何を感じて、今後の競技にどう生かすか。日本一の佐藤が思いきり世界にぶつかって得られる結論があるはずだ。


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