2012/8/6 ロンドン五輪展望
4日目(8月6日)午後の部
女子200m予選に福島登場
100mからの立て直しができていれば予選突破は可能

 大会4日目午後に出場する日本選手は以下の2人。

女子200m予選3組1レーン:福島千里(北海道ハイテクAC)
女子400mH準決勝3組3レーン:久保倉里美(新潟アルビレックスRC)


 女子200mは6組行われて各組3着+6が準決勝に進出できる。
 昨年のテグ世界陸上は福島は1組5位。組数と進出条件など細かい部分は違ったが、23秒35(−0.1)でプラスの最後で準決勝に進出した。ベルリン世界陸上は1組4位。23秒40(+0.3)で、あと2人でプラスに入れるという記録で予選落ちした(23秒35までがプラス通過)。
 北京五輪は2次予選があって準決勝が2組だったので参考にできない。

 今季の福島は5月の静岡国際で23秒12で走っている。それに近いタイムを出せば通過できることになるが、100mの結果(11秒41・+2.2)からすると絶対とは言い難い。

 福島のベルリンとテグ世界陸上の100m&200mの成績は以下の通り。
ベルリン世界陸上100m1次予選11秒52(−0.3)&2次予選11秒43(+0.8)
           200m予選23秒40(+0.3)
テグ世界陸上100m予選11秒35(+0.1)&準決勝11秒59(−1.5)
         200m予選23秒35(−0.1)&準決勝23秒52(−0.7)

 100mは昨年のテグ世界陸上よりも明らかに悪かった。200mまでに走りを立て直すことができるかどうかが、予選突破のカギを握る。

4年前の福島と久保倉の五輪選考経緯

 4年前の北京五輪代表入りに際して、同じ北海道出身の福島と久保倉里美が、選考の俎上で比較された経緯がある。ともにB標準突破者で日本選手権に優勝していたが、4年前はB標準突破者が全員代表入りはできなかった。
 最終選考会の南部記念で優勝した福島が代表入りしたのは以下のような理由からだった。4年前の寺田的記事から抜粋する。

女子にB標準突破者が複数いたなかで、福島を選んだ経緯
 澤木専務理事「選考の話し合いに出たのは福島、丹野麻美(ナチュリル)、久保倉里美(新潟アルビレックスRC)の3人。JOCとの話の中で、突出した競技力の選手か、あるいは若手を、という話をいただいた。3名の中でさらなる向上の期待を込めて選んだ」
 高野委員長「(世界ランキングを参考にすると話していたが、という質問に対し)戦えるレベルのB標準であれば国際ランキングが重要になったが、100番とか101番、102番というレベルであれば、その比較は意味をなさない。3名ともB標準を破って日本選手権にも勝っているが、その中で福島は記録を大きく伸ばしている。昨年は11秒6台で今年は日本記録を出すなど、成長が著しい。成長率を高く評価した。また、今回は男子の1枠から転用ということで、話題性のある選手を指名した」
 高野委員長は囲み取材中には、次のような言い方をしている。
「はっきり言って、3人の誰かが入賞するのは現実的に厳しい。3人の全てを厳密に比較してはいない。我々の経験の中で、(世間的な)影響力という部分も意識して判断した。かなりの議論があったが、ここにきて安定して調子が良い選手を選んだ。専務も言ったとおり、福島に1つの枠を託そうと思った」


 北京五輪の成績は1次予選落ちだったが、福島はこの期待に十二分に応え、女子のショートスプリントのレベルを上げた最大の功労者となった。

 一方の久保倉は、4×400mRが北京五輪出場資格ランキング16位以内に入ったことで、リレーメンバーとして選出された。その結果、個人種目の400mHにも出場することができたのだが、国際大会に強い特性を発揮して準決勝に進出した。個人で代表入りできなかった選手にとっては快挙と言ってよかった(「まぐれ?」と川本和久監督はツイッターに書いている)。
 久保倉は「視野が広がった大会でした」と振り返る。

4年間で成熟したハードラーに

 4年前、久保倉はすでに日本記録保持者だった。2007年4月に55秒71と、福島大の先輩の吉田真希子の記録を更新していた。北京五輪後の大分国体で55秒46と日本記録を更新したが、好記録が続出したレースで、気象条件的に恵まれていた面があったことは否定できない。
 翌2009年のベルリン世界陸上は予選落ち。2010年は56秒を切ることができず、アジア大会も3位と前回の2位から順位を落とした。
 だが、昨年6月に55秒34と日本記録を更新。テグ世界陸上でも準決勝進出を果たすなど、再上昇に転じた。
 3月のスプリント学会では自身や福島大のハードル選手を被験者にした研究論文も発表。踏み切りスピードや重心高、滞空時間などを、利き脚と逆脚でどう違ってくるかを測定し、自身の感覚と照合して競技に生かしている。現時点での課題は「逆脚踏み切り時に速いスピードで低く跳ぶこと」である。具体的な動きでは「抜き脚をコンパクトにして、腕を前に出すこと」などを目指しているという。

 ハードル間の歩数という点においては、15歩を1〜2回使うプランもあったが、7月の南部記念で取材した際には「16歩で刻むイメージ」で行った方がスピードに乗れると話していた。逆脚踏み切りが増えるが、逆脚での課題が良い方向に向かっているのだろう。
 今季は4月に30歳になったが「練習も追い込めるようになったんです」と話していた(一時期、追い込めなくなったというニュアンス)。

 2007年の日本記録は「足が速くなったから出せた日本記録」だったと久保倉は言う。ハードラーとしての技術的な追究をすれば、まだタイムを伸ばせるという感覚だった。この4年間で久保倉はハードラーとして成熟してきた。準決勝突破は難しいが、4年間で成熟したハードラーとなった姿を見せてくれるだろう。


ロンドン五輪2012を10倍楽しく見るページ
寺田的陸上競技WEBトップ