2012/8/5 ロンドン五輪展望
3日目(8月5日)午後の部
厳しい組に入った久保倉だが55秒台を出せば予選突破か?
山縣は予選と同様、「自分の走りをするだけ」
昨年のテグ世界陸上より予選との間隔が開いた室伏


 大会3日目午後に出場する日本選手は以下の3人。

女子400mH予選5組:久保倉里美(新潟アルビレックスRC)
男子100m準決勝3組:山縣亮太(慶大2年)
男子ハンマー投決勝:室伏広治(ミズノ)


 女子400mHは5組あって4着+4が準決勝進出条件。久保倉は北京五輪と昨年のテグ世界陸上で準決勝に進出している。
 北京は準決勝が2組と現在よりも1組少なかった。予選は4組あって3着+4と厳しい条件だったが、55秒82で1組3位となって着順で通過した。
 翌年のベルリン世界陸上は準決勝が3組になったが、予選で56秒91(1組6位)かかって予選落ち。昨年のテグ世界陸上も準決勝は3組だったが、予選は56秒28(5組5位)でプラスに引っかかっての通過だった。

 5組はかなりのメンバーが揃っている。北京の金メダリストで世界陸上もベルリン優勝、テグ2位のウォーカー(ジャマイカ)、今季53秒77の自己新を出しているシェイクス・ドレイトン(イギリス)、今季54秒35の自己新のヤロシュチュク(ウクライナ)、そしてアジアのライバルであるXiaoxiao Huang(「シャオシャオ」と久保倉の話によく出てくる)は自己記録が54秒00でシーズンベストも55秒47。ランバルキ(モロッコ)も今季の55秒41が自己ベストで、自己記録では久保倉が上だがシーズンベストでは負けている。
 ウォーカーとドレイトンは格が上で、記録を見る限りヤロシュクも強そうだ。そうなるとXiaoxiao、ランバルキに勝つ必要がある。
 ただ、プラスもある。久保倉が準決勝に進めなかったベルリンでも、56秒73までが拾われている。5組の顔ぶれに惑わされず、55秒台を出せば通ると考えた方がいいかもしれないし、結果的に56秒台前半で通れるなら確率は高い。

 男子100m準決勝3組の山縣は5レーン。予選を組2着で通ったからだが、真ん中のレーンを取れたのは素晴らしい。
 だが、4レーンにタイソン・ゲイ(アメリカ)、6レーンにヨハン・ブレイク(ジャマイカ)というメダル候補2人にはさまれる形となった。両側からのプレッシャーは半端ではないだろう。
 幸い、山縣のスタートは国際レベルであり、予選や今季のダイヤモンドリーグを見る限り、ゲイのスタートはそこまで速くない。スタート直後に“両サイドの選手に一気に前に行かれる”状況にはならないだろう。上手くすると、ブレイクに僅差で続いて後半の3位争いを有利に展開できるかもしれない。

 準決勝の通過条件は3着+2。プラスで通過するためには最低でも4位以内に入っておかないと、その時点で可能性はゼロになる。3位争いを有利に展開云々と書いたが、競り合う相手は自己記録9秒95のハイマンと、9秒91のアトキンス(バハマ)。つまり9秒台の選手が4人いて、山縣を含めて残りの4人が10秒0台というメンバーなのだ。そこを勝ち抜くのは簡単なことではない。

 山縣の武器は周囲の走りに惑わされず、大舞台でも自分の走りができる点。日本選手権前も「自分の走りに集中するだけ」と言い続けていた。選手の多くが考えることだが、それをオリンピックでやってのけるのは並大抵のことではない。
 予選を報じたある記事には、ブレイクを意識しなかったのかと聞かれた山縣が、「それで走りが乱れてしまったらもったいない」というニュアンスのことを答えたという。
 戦後初の決勝進出なるか、という興味もあるが、準決勝で再度、山縣が自身の走りを貫けるかどうかが一番のポイントだ。

 室伏への興味はメダルが金色になるかどうか。余分なことをここで書く必要はまったくないのだが、1つだけ、昨年のテグ世界陸上の例を挙げておく。
 テグでは予選を78m56と全体で1位記録で通過して、決勝で81m24を投げて金メダルを獲得した。一昨日の予選は78m48とテグとほぼ同じ記録で通過している。
 予選記録は同じでも、室伏の体の状態は昨年と同じではない。1つ年齢が加われば、回復にも時間がかかるようになっているはずだ。
 だが、そこを克服しようとしているのが近年の室伏のテーマである。対策と準備は十分のはず。
 客観的に見て1つ事実を指摘すると、テグの予選は今回とは違って夜だった。A組というこでB組より1時間半早く終了する。室伏が「A組で良かった。今晩トレーニングを入れることができる」と話していたことを覚えている。
 今回は予選が午前中に行われた。時間的な余裕はテグの時よりもある。
 などとあれこれ書くよりも、室伏を信じて待つしかない。


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