2012/8/5 ロンドン五輪展望
3日目(8月5日)午前の部
合同合宿でチームで戦う意識を強化
日本勢が自らペースをつくるのか?


女子マラソン:木崎良子(ダイハツ)
        :重友梨佐(天満屋)
        :尾崎好美(第一生命)


 資格記録のリストでは重友の11位が最高で尾崎が17位、木崎は22位。持ち記録が結果に比例しないのがマラソンという種目だが、普通に走ったら良くて入賞だろう。メダルを狙うのならプラスアルファの力を発揮するか、相手の力を封じ込める何かが必要となる。
 その1つの方法が大会初日の女子1万mのように、日本勢3人でペースを作ることではないか。

 海外の高速マラソンのように2時間20分前後のハイペースになると、今の日本選手の走力ではついていくのは難しい。
 昨年のテグ世界陸上のように、前半のスローペースから一気にペースアップされた場合も、やはり対応するのは難しくなるだろう。
 この2つのパターンを封じ込めるには、日本勢が先頭に出て、自分たちに合ったハイペースで飛ばすことだろう。
 女子の場合はまだ、オリンピックや世界陸上で序盤からハイペースになったことはほとんどない。世界記録保持者のラドクリフ(イギリス)が飛ばしたヘルシンキ世界陸上くらいだろうか。主導権を握るのは、それほど難しくないはずだ。

 日本勢が合同合宿をかなりの期間行なったのは、練習のレベルを上げることとともに、“チームとして戦う”意識を持つためだ。合同トレーニングのマイナス要素もあるが、ばらばらに練習していては、いざ本番になって共同で戦うのは難しい。
 1万mも福士加代子(ワコール)と吉川美香(パナソニック)が何回か一緒に合宿を行い、良い関係を築けていたから五輪本番でもスムーズに連携ができたのだろう。1人で先頭を走ると力が入りやすいが、複数いればリラックスしてペースをつくることができる。

 それでも外国勢が前に出て2時間20分前後のハイペースで走られたら、そのときは腹をくくるしかない。先頭集団から後退する適正地点を見極め、終盤で落ちてくる選手を拾う戦法に切り換えるしかないだろう。メダルまで手が届くどうかは、何人が落ちてくるかという他力本願の部分と、落ちてきた選手が見えたときにどこまで頑張れるかに左右される。
 あとは各メディアで報じられているように、カーブの多さや道幅の狭さ、路面の硬さや滑りやすさなどの悪条件をどこまで味方にできるか。
 そしてどの競技でも同じだが、気持ちの部分。持ち記録が低い選手が記録的に上の選手が多い試合に臨むと、萎縮して力が出せなくなる。マラソンは記録が低くても戦える、スピードで負けていてもマラソンなら勝てる。そういった気持ちを持ったときに力を出し切ることができる。

 優勝予想は昨年の世界陸上優勝者のキプラガト(ケニア)ととした。
 マラソンはトラック&フィールド種目のように、トップ選手が揃って出場する大会がなく、さらに選手の出来不出来も1大会ごとに大きい。失格のある競歩やバトンミスのあるリレーを除けば、良い記録を持っている選手が下位に沈む確率の最も大きい種目だろう。予想が難しい種目だ。
 ただ、耐暑レースにはならないとなると、2時間20分前後の記録を持つケニア勢、エチオピア勢、歴代2位のショブホワ(ロシア)、ミキテンコ(ドイツ)、周春秀(中国)らが優位に立っているのは紛れもない事実。
 日本勢はその差を埋めるため、どんなに細かいことでも積み重ねていって対抗するしかない。それがロンドン五輪の戦いだ。


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