2012/8/4 ロンドン五輪展望
2日目(8月4日)午前の部
女子棒高跳
“第二世代”、我孫子の戦いに注目
金丸は「3着+3」への変更をどうクリアするか

女子棒高跳予選A組:我孫子智美(滋賀レイクスターズ)
男子400m予選5組:金丸祐三(大塚製薬)
男子100m予選(予備予選後に出場組決定):江里口匡史(大阪ガス)
                 〃           山縣亮太(慶大2年)


 陸上競技2日目の午前の部に出場する日本選手は上記4人。男子100mは予備予選後にスタートリストが決定する。

 女子棒高跳は2000年シドニー五輪から実施され始めた歴史の浅い種目であり、日本の五輪代表は過去、2004年アテネ大会の近藤高代ただ1人。世界陸上も女子初の4mボウルターである小野真澄と近藤の2人だけ。
 この2人は同学年で1975年生まれ。日本記録保持者の錦織育子は1980年1月生まれ、元日本記録保持者の中野真実も1979年3月生まれ。1988年3月生まれの我孫子が代表となったことで、日本の女子棒高跳が草創期を担った世代から、次の世代にバトンタッチされたことになる。
「先輩たちが世界への道を切り開いてくれました。世界で戦うのが自分の役割だと思います」

 五輪で日本選手が出した最高記録は近藤の4m15で、この記録は跳べるだろう。世界陸上では2007年大阪大会で近藤が4m35を跳んでいる。
 予選通過記録は4m60。ベルリンとテグの世界陸上では4m50の上位数人も決勝に進出したが、予選突破よりも4m35、40をオリンピックという舞台で跳ぶことが、我孫子に課せられた役割だ。

 金丸にはもちろん、準決勝進出が期待できる。
 個人種目初出場だった大阪世界陸上(2007年)から北京五輪(2008年)、ベルリン世界陸上(2009年)と、直前の故障などもあり予選を突破ができなかった。しかし昨年のテグ世界陸上では45秒51で走り、着順通過(3組4位)を果たした。
 今回は予選が7組あって3着+3が通過条件。昨年のテグ世界陸上は5組で4着+4だった。どちらが楽に通過できるかは比較が難しい。
 メンバーを見ると全米2位のマッケイ(アメリカ)とブラウン(バハマ)の2人が、自己記録&シーズンベストともに44秒台と強い。自己ベスト&シーズンベストとも45秒11のリヴァイン(イギリス)、自己ベスト&シーズンベストとも45秒62のパロミク(コロンビア)との3位争いになる。
 ただ、高校2年(2004年)以来ずっと45秒台を、2008年以降は45秒台前半を出し続けている金丸が、どこかでポンと、44秒台にレベルアップする可能性はある(できればそれは準決勝にとっておきたいところだが)。
 以前はスピード重視の走り方だったが、北京五輪後は徐々に400mをトータルで走りきる400m仕様の走りに変更してきた。
 以前は悩まされた大きなケガも、このところ少なくなっている。その理由を質問すると「動きを変えたことと、ケガの予兆を察知できるようになったこと」と金丸は答えた。
 継続したトレーニングは大きな力になる。早熟型だった金丸が、ロンドンで円熟した400mランナーとなるか。

目標とする「無風で10秒1台の走り」なら2位争いとなる江里口
組分けに恵まれた山縣。国内と同じ動きを


 江里口は予選2組。シーズンベストの9秒台はガトリン(アメリカ)だけ。アトキンズ(バハマ)は自己ベストが9秒91だがシーズンベストは10秒09で、今季はそれほど調子が良くない。むしろ自己記録&シーズンベストとも10秒03のソリロ(トリニダードトバゴ)の方が今季は強い。その他にも10秒1台の記録を持つ選手が3人。
「無風で10秒1台の走りをする」と今季の江里口は言い続けている。昨日の女子100mを見る限り、気象条件は良く好タイムが期待できる。無風の10秒1台は、好条件なら10秒0台だろう。
 7組あって3着+3が準決勝進出条件。10秒1台の3人と争うのでなく、アトキンズとソリロとの2位争いに加わりたい。

 山縣は予選6組。ブレイク(ジャマイカ)は別格だが、シーズンベストでは10秒08の山縣が2番目。
 ツイッターでは昨日
「明日は思う様に走ります。不安がない訳じゃありません。でも後悔しないように。どんな結果かはわかりませんが。応援してくれるひとのため、後悔のない結果を出すために、自分の思うような走りをしてきます」
 とコメントしている。10秒08を出した織田記念のときほど状態は良くないのかもしれない。
 だがブレイクと山縣以外は自己記録が10秒1台の選手ばかり。組分けには恵まれた。

「どんな舞台でも、一貫する強さ。自分の走りをいつもしたい。オリンピックでしか試せないことがある」
 予選から良い動きをして、決勝でも同じ動きをするのが山縣の特徴。国内大会でできる良い動きを、オリンピックでもできたら今後の国際大会でも大きな武器となる。


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