2012/6/10 ロンドン五輪代表発表前日
陸上競技枠は“40”
日本選手権終了時点で21名が内定ずみ
残り19名に候補は試算で24名
トラックのB標準優勝者からも代表入りしそうな状況


 日本選手権終了時点で21人が代表に内定している。
 昨年のテグ世界陸上の結果で鈴木雄介(富士通)、森岡紘一朗(同)、室伏広治(ミズノ)の3人が内定。
 一連のマラソン選考会の結果で藤原新(ミキハウス)ら6人が内定。
 日本選手権競歩2大会の結果で大利久美(富士通)と山崎勇喜(自体学)が内定した。
 そして6月8〜10日の日本選手権で、A標準突破選手が優勝して内定したのが10人(室伏を除く)。

 JOCとの交渉では40人の枠が陸上競技が割り当てられたと、日本選手権終了後の会見で高野進強化委員長が明かした。男子4×100 mRはメダル期待種目としてJOCも位置づけており、当初からこの人数の枠内で選ぶことになっている。残りのリレー種目は、出場資格を得てから追加代表という形になる。
 日本選手権終了時点で21人が内定ずみなので残る枠は“19”。しかし、下の表でピンクの背景で示した村上幸史、福士加代子ら7人は“ほぼ確実”。そうすると事実上の残り枠は“12”で、それをブルーの背景で示した15人に、リレー候補の2人を加えた17人の中から選ぶことになる。

五輪内定選手、候補選手の日本選手権成績
  種目 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 失格
男子 100 m 江里口・A 九鬼・B 山縣・A            
200 m 高瀬・A 飯塚・A 高平・A 齋藤・A 藤光・B        
400 m 金丸・A 中野・B       廣瀬・B   石塚
800 m 横田・B                
10000m 佐藤・B 大迫・B 宮脇・A 宇賀・A     松岡・B    
400 mH 岸本・A 中村・A 舘野・A 今関・A 安部・A 野澤・B 小西・A    
20kmW 藤澤・A 西塔・A 荒井・A 勝木・A 谷井・A 森岡・A      
50kmW 山崎・A 谷井・A 森岡・A 明石・A 樋熊・A 荒井・A      
棒高跳 山本・B 澤野・A 荻田・B            
ハンマー投 室伏・A                
やり投 ディーン・A 村上・A   荒井・B          
十種競技 右代・B                
女子 100 m 福島・A 土井 高橋 佐野          
200 m 福島・B 市川 高橋 今井          
5000m 新谷・A 福士・A   小林・B 吉川・A   木崎・B    
10000m 吉川・A 福士・A 絹川・A 杉原・A 清水・A     吉本・B  
100 mH 木村・B   紫村・B            
400 mH 久保倉・A 米田・B   青木・B       田子・B  
20kmW 大利・A 井上・A              
全日本競歩能美 渕瀬・A 川崎・A              
棒高跳 我孫子・B                
やり投 海老原・A   宮下・B 佐藤・B          


カテゴリー別の五輪内定選手、候補選手
  選考大会と成績 選手・突破標準記録 人数



テグ世界陸上入賞
&日本人最上位
鈴木雄介・A
森岡紘一朗・A
室伏広治・A
日本選手権20kmW優勝
&派遣記録突破
大利久美・A
マラソン選考会上位 藤原 新
山本亮
中本健太郎
木崎良子
重友梨佐
尾崎好美 10
日本選手権50kmW優勝
&派遣記録突破
山崎勇喜・A 11
日本選手権優勝
&A標準
江里口匡史・A 12
高瀬慧・A 13
金丸祐三・A 14
岸本鷹幸・A 15
ディーン元気・A 16
福島千里・A 17
新谷仁美・A 18
吉川美香・A 19
久保倉里美・A 20
海老原有希・A 21



●ほぼ確実な選手●
A標準突破者で、
日本選手権優勝者がA標準突破種目の2位。
高平は3位だがリレーでの評価も考慮。
競歩は選考会1位
藤澤勇・A 22
渕瀬真寿美・A 23
飯塚翔太・A 24
中村明彦・A 25
村上幸史・A 26
福士加代子・A 27
高平慎士・A 28
●全体枠を考慮しながら、“世界で戦うレベルにあるか”
という判断基準で選考される候補選手●
B標準突破者の日本選手権優勝者、
日本選手権優勝者がB標準種目のA標準2〜4位選手、
日本選手権1位選手、または1&2位選手がA標準種目の、A標準3位選手
競歩は選考会優勝選手がA標準種目の、A標準2位選手。

九鬼と齋藤はリレー候補
横田真人・B 29
佐藤悠基・B 30
山本聖途・B 31
右代啓祐・B 32
木村文子・B 33
我孫子智美・B 34
西塔拓己・A 35
谷井孝行・A 36
澤野大地・A 37
川崎真裕美・A 38
山縣亮太・A 39
宮脇千博・A 40
舘野哲也・A 41
絹川愛・A 42
宇賀地強・A 43
九鬼巧・B 44
齋藤仁志・A 45
リレー候補(7月発表) 中野弘幸・B  
東 佳弘  
石塚祐輔  
土井杏南  
高橋萌木子  
市川華菜  
佐野夢加  

 では、17人を12人に絞る基準は何か。選考規定にはB標準の優勝者を優先するとも、2位以下のA標準選手を優先するとも書かれていない。トラック種目よりも標準記録設定のレベルが高いため、フィールド種目の方がB標準の日本選手権優勝者が選ばれる傾向はある。
 だが、最終的な判断は「オリンピック本番で戦えるレベルにあるかどうかで判断する」と高野委員長。
「戦うというのは、具体的にはラウンドを進めていく、ということです。1国3人エントリーでランキング表を作るなどして、戦うレベルにあるかどうかを調べて選考していきます」
 陸連内部の具体的な手順まではわからないが、“ほぼ確実”と思われる選手たちも含め、まずは日本選手権や他の選考会の戦いぶりを見て、世界で戦える選手かどうかを主観で決めていく。おそらく、ランキング表の順位に照らし合わせるのは、ボーダーラインの選手を比較するときだろう。

 40人枠をフル活用するなら、前述のように17人の候補選手のうち落ちるのは5人になる。
 しかし、男子1万mでB標準の佐藤悠基(日清食品グループ)を選べば、宮脇千博(トヨタ自動車)と宇賀地強(コニカミノルタ)の2人は必然的に落ちることになる。逆に、A標準の宮脇と宇賀地を出すなら、佐藤は選べない。
 男子棒高跳も出られるのは山本聖途(中京大)か澤野大地(富士通)のどちらかだ。
 ランキング表と照合すれば、日本選手権優勝のB標準選手の順位は、特にトラック種目は低くなる。同じトラックでもA標準選手は高い順位になるだろう。だが、日本選手権の戦いぶりで“強くないぞ”と判断されることもある。そういったところを総合的に“選考”することになる。
 いずれにせよ、枠を返上しない限りは、落ちる選手はそれほど多くない。トラックのB標準優勝選手でも選出されるケースが出てきそうだ。

 リレー種目は前述のように、今回選ばれるのは男子4×100 mRだけ。200 m優勝の高瀬慧(富士通)は4×400mRに回ると思われるので、100 m優勝の江里口匡史(大阪ガス)と同3位の山縣亮太(慶大)、200 m2位の飯塚翔太(中大)と同3位の高平慎士(富士通)は確定的。補欠を2人連れて行くとすれば100 m2位の九鬼巧(早大)か200 m4位の齋藤仁志(サンメッセ)になりそう。北京五輪のように補欠1人なら、2人のうちどちらかだろう。
 これまでの実績で100 m5位の塚原直貴(富士通)や、200 m5位の藤光謙司(ゼンリン)を選ぶ可能性もゼロとは言い切れない。

 男子4×400mRと女子4×100 mRは7月に出場が最終決定してからの選出という手順だが、今後は選考会がないので判断は日本選手権までの成績を見て行うことになる。
 男子4×400mRは有力候補の石塚祐輔(ミズノ)が400 m予選でフライング失格。スタンドがざわついたのに体が思わず反応してしまったという。
 決勝で好タイムが多く出たら代表入りの可能性はなくなったが、優勝タイムは46秒18で3位が46秒26。バックストレートがそこそこ強い向かい風で400 mに不利な風だったが、代表選考にプラスとなる結果ではなかった。
 石塚は近年の日本代表メンバー常連で、5月のテグ国際で3分01秒04の資格記録を出したときも3走。選考会の静岡国際400 mでは金丸祐三(大塚製薬)、中野弘幸(愛知教大)に続いて3位という成績も残している。
 “世界で戦う”には石塚の力が必要という状況だが、日本選手権を絶対視する意見もある。
 高野進強化委員長は「それ(石塚の扱い)は今コメントできません。リレーの特性を考慮するという部分をどう判断するか。しかし基本的には、これまでの代表は全部、日本選手権の決勝に駒を進めたなかから選ばれています。リレーの特性をどこまで考慮するかというのも、これも解釈なので。いろいろ難しいところもあります」と明言を避けた。

 女子4×100 mRは100 m優勝の福島千里(北海道ハイテクAC)に2位の土井杏南(埼玉栄高)、3位の高橋萌木子(富士通)がメンバー入りするのは確実。4人目は100 m4位の佐野夢加(都留文科大職員)か、200 m2位の市川華菜(中京大)か。
 こちらも走順やカーブの上手さなど、“リレーの特性”を考えて選考される。


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