2012/6/11 ロンドン五輪代表選手発表
A標準の入賞者とB標準の優勝者の比較は
「本番で活躍が期待できる」と評価してB標準の優勝者を選出


会見から抜粋
Q.男子の1万mと棒高跳でA標準の日本選手権入賞者と、B標準の優勝者のどちらを選ぶか、という議論があったと思いますが?
高野進強化委員長 選考基準の中で選手、現場、我々が納得できる選手を選ばないといけません。1項が世界選手権の入賞者で、これがオリンピックでも期待できる選手の筆頭になります。2項がA標準の日本選手権優勝者。A標準という高いレベルでかつ、日本選手権という日本一を決める舞台で勝ったということで期待できます。3項がA標準もしくはB標準で日本選手権上位、選考会上位のなかで本大会で活躍が期待できる選手。その3項で本番の活躍が期待できる選手は、我々が一番期待する大会でしっかり結果を残す選手。たとえA標準を持っていても、一発で決まる大会、優勝すれば決まる日本選手権で勝てなかった選手は、活躍を期待するには心細い。A標準を持っていてもB標準の選手、その他の選手に負けるのでは、オリンピックで活躍する期待は低くなります。逆に参加資格を持っているB標準の選手が、日本一にしっかりとなった、ちゃんとピークを合わせたということは、本大会でもしっかりと活躍してくれる。メダルということではなく、それぞれの目標を達成してくれると期待できます。そういう理由で日本選手権優勝を高く評価しました。

Q.B標準の日本選手権優勝者を選ぶときに、世界ランキングを見てという話もありましたが、今回も世界ランクを見ての判断がありましたか。
高野強化委員長 これまではA標準で勝った選手、それに準じて2番や3番に入った選手を全員代表に入れ、その後に1枠か2枠あって複数のB標準選手がいた場合に判断するときに、世界ランキングを参考にして選んできました。今回は40人の枠の中で30数人の有資格者がいて、それぞれの段階で活躍が期待できるというハードルをクリアしてきました。世界ランキングを出して30番なのか、40番なのかという議論までは行っていません。ただし、世界ランキングは調べています。ですが、特にB標準の選手は目標設定、努力目標をしっかりしてほしいと思います。代表がゴールではないので、さらに強くなって、少なくともA標準レベルになることが我々の派遣目標であると理解してほしい。

Q.A標準で3位という選手が何人か選ばれていますが、女子1万mの絹川愛選手だけ選ばれなかった理由は?
高野強化委員長 我々は選考競技会すべてを挙げて(選考して)います。特に5000m、1万mの2種目は日本選手権1本でなく、その他の選考会でどんな順位、記録を出したかをテーブルに挙げて議論をしました。なおかつ、どのようなエントリーが可能か、現場がどう考えているかを踏まえ、基本的には男女とも5000mと1万mのエントリーを視野に入れて、5000mと1万mで今年最も調子の良い3人は誰かというところで選びました。今回、新谷さんが5000mでA標準の優勝しましたが、兵庫リレーカーニバルの1万mで最後は独走しています。世界ランクも10番台です。選考会の1万mの結果と、日本選手権の5000m優勝という結果から、5000mと1万mで十分戦える選手と判断しました。さらには吉川さん、福士さんもそこに続くと。今年の選考会の結果で最も活躍が期待できる3人を選ぶとなると、この3人が選ばれることになります。日本選手権にもピークを合わせたという結果で、ここに挙げた3人が最も(世界のトップレベルに)近い。
Q.新谷さん自身は1万mを走らないと話していますが、1万mのエントリーも?
高野強化委員長 視野に入れています。最終的には選手団の判断になります、本人の体調見て。今からダブルエントリーと宣言しているわけではありません。

つづく

Q.競歩で多くの選手が選ばれています。男子20kmWでは西塔拓己選手も入っていますし、女子20kmWもフルエントリーです。これだけ多く選んでいる理由や、そこへの期待を説明してください。
高野強化委員長 競歩という枠で選んでいるのではありません。他の種目でもそのレベルであれば当然選ぶということです。例えば男子400 mHも3人選んでいます。3人ともA標準で、しっかりと順位も記録も残している。本番で期待に応えてくれると思います。競歩も全員がA標準突破者で、1カ国3人のランキングで10番台に入っています。競歩は6人全員が他の種目よりランクが上なんです。落とす理由がない。西塔選手が選ばれるかどうかと皆さんも考えておられたと思いますが、他の種目の代表と比べても遜色ないレベルです。この種目だからこうした、ということはなくて、選考会の歩き方、走り方、投げ方、跳び方、そして順位と持っている記録、全部を考慮して選びました。

Q.北京五輪銅メダルの男子4×100 mRのメンバーで入ったのは高平慎士選手だけでした。それをどう受け取り、本番を見据えてどういうことをやっていきますか。
高野強化委員長 (北京五輪が終わった)当初は朝原宣治選手が引退して、それを残りの3名が引き継いで、という青写真を描いていました。しかし、男子短距離は良くも悪くも、入れ替わりの激しい時代に入りました。今回も学生の10秒0台、10秒2台の選手がメンバーに入っています。チームは若いパワーに切り換わりました。(若いといっても)ほとんどの選手は冬場から、JOCマルチサポートの(活動の)なかで、バトンパスの技術を高める合宿に呼んで、何回も何回もバトン練習をしています。そのメンバーが全員オリンピックを目指してきて、しかしリレーで代表になることにしがみつくのでなく、個人でも標準記録を突破して代表に入ってきました。コーチたちにも、個人で力を発揮した上で初めてリレーでバトンをつなげると伝えてきました。彼らはその通りに標準記録を破り、日本選手権で上位に入り、ほとんどの選手が個人で代表権を得ました。バトンパスもこれまでやって来ましたし、もちろんこれからもやっていきます。北京五輪まではメンバー4人を固定するやり方で力を上げて銅メダルを取りましたが、今度は違ったスタイルで挑むことになります。もちろん伝統は脈々と受け継がれていますし、あのときのメダルの取り方は、現場は誰も忘れていません。学生もそこをしっかり意識しています。我々もすごく期待していますし、かといって安心もしていません。昨年のことを考えると、100 mで(世界選手権に)代表を送れない厳しい状況でした。それを一気に、オリンピックイヤーにこれだけ若い選手が出てきてくれました。選手がみんなで頑張ってここまでの記録に来てくれたことを、我々がエネルギーに変えて、もう1回日本記録、メダルというところに挑戦していきたい。

Q.福島千里選手が200 mにも出場すると、100 mと200 mに出場する日本選手は初となりますし、200 mも東京五輪以来です。48年ぶりということと、史上初ということの意義と、彼女への期待をお聞かせください。
高野強化委員長 まず、本人は日本初とか意識していないと思います。4年前に福島さんが登場して、前回のオリンピックのB標準の枠を手にして本番を走り、そこから女子の短距離が一気に底上げされてきました。オリンピックを刺激にしてアジアの女王に輝き(2010年アジア大会2冠)、昨年の世界陸上でも2種目とも準決勝に進出しました。今回のオリンピックで史上初とか、マスメディアがそう分析して書いていただくことは歓迎しますが、現場としては“戦う”という姿勢でいます。彼女は両種目で日本記録を更新するような、準決勝で少しでも上の方で戦うような、そしてあわよくば決勝も見えてくるところを狙っていくはずです。代表が珍しいという見方でなく、しっかりと自分の力で、当たり前のように代表権を取って、これからが本当の勝負であると思っています。我々も、その期待でサポートしていきます。前回のオリンピックの経験、昨年の世界陸上の経験を生かして、最高のパフォーマンスをしてほしい。100 m、200 mで1本でも多く走ってほしい。

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