2012/5/12 関東インカレ1日目
女子砲丸投は松田が1年生V
3月に15m台もマークし高い志で学生生活をスタート
「目標はインカレ優勝ではなく、一般の人たち」

 女子砲丸投は松田昌己(国士大1年)が14m41で、2位の知念莉子に29cm差で優勝した。学生競技生活をさい先良くスタートさせた、と思われたが、松田本人は開口一番「くやしいです」と厳しい表情で話し始めた。
「自己新を狙っていました。記録が出やすい雰囲気でしたし、気持ち的には15mを出すつもりだったんです。甘くなかったですね」

 松田は3月の記録会で15m04の高校歴代3位を投げている。インターハイに2連勝し、高校時代はずっと15m台を期待されてきたが、昨年8月の14m48で止まっていた。
「ずっと15m、15mと言われてきましたから、15m04を投げたときは嬉しかったですね。縦回転の動きが初めてできました」
 縦回転とは自身の動作のこと。「一番高いポジションで初めて、左脚をリバースする」動きだという。「15mのときにそこまでフォームを意識できていたかわかりませんが、かろうじてできていたと思います」
 練習では2、3回できたことがあり、距離も15m20くらい出ていた。

 今季の目標は「一般の選手と戦う」ことだが、日本選手権よりも、日程が重なるアジアジュニアを優先する方針だ。
 関東、日本の両インカレは勝って当然という意識でいる。
「1年生のくせにと思われるかもしれませんが、高い目線で入学してきました。国士大の女子が強いので、今回チームに貢献できたことはよかったと思っていますが、個人的には全然ダメです。“インカレに勝って嬉しい”ではなく一般の人たちとどう戦うか。今後は15m台をコンスタントに投げることで初めて、15m75のジュニア記録(98年・市岡寿実=当時国士大)が見えてきます。日本選手権は出られないかもしれませんが、白井(裕紀子・滋賀陸協)さんに意識してもらえるようになりたいですね」

 身長160pと、この種目では日本選手のなかでも小柄な部類に入る。当然、スピードを武器としないことには戦えない。
「スピードと体重ですね。高校では90kgでしたが今は減っていて88kg。3月に15mを投げたときも90kgありました。タテ(身長)はもう伸びないので、ヨコ(体重)を伸ばしたい。でも、ヨコが伸びても動けないのでは意味がないので、しっかりと動けるようにしながらですね」

 トレーニング面ではいかに国士大の練習に慣れていくか、が課題だという。
「高校の時以上に走りますし、器具を使わないトレーニングも多いんです。その上でウエイトも挙あがればいいわけです。ただ、ウエイトが挙あがれば砲丸が飛ぶというものではありませんから」
 幸い、国士大の大先輩である白井が現在、母校でトレーニングをしている。
「考え方など話を聞かせていただいて、信頼できる方だと感じました。身近な目標です」
 ジュニア日本記録を持つ市岡、現在第一人者の白井、そして日本記録(18m22)保持者の故森千夏さんも、すべて国士大の先輩だ。

 将来的には「今のやり投のように、砲丸投を少しでもメジャーにしたい。“あの人の砲丸は綺麗だな”って言われるようになりたい」という大きな目標もある。
 まずは日本新、そして19mを投げなければ、その目標は達成できない。16mにも届かなくなってしまっているのが現状だ。並大抵の努力で実現できないことは、本人もわかっているはず。それでもあえて、公の場で口にする。

「森さんが生きておられたらどんな練習をされていたんだろう、と考えることもあります。18mを実現した国士大の練習をどう考えて、自分の練習にしていくか」
 森さんの遺志を継ぐ心意気が十分に伝わってきた。


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