2012/5/12 関東インカレ1日目
ディーン、体調不良でもセカンド記録の81m54
3試合連続の80m台を可能にしているものとは?


 22人いる男子1部やり投出場者の第1投てき者だったのは偶然か、それとも主催者の期待の表れか。大会初日最大の注目を集めたのは、4月末の織田記念で男子やり投日本歴代2位の84m28を投げているディーン元気(早大3年)だった。

 1投目は78m80。
「体調が悪くて助走の途中で頭がふわーっとしてしまいました。なんとか投げきりましたが体が突っ込んでしまい、やりを下に向けてしまった。大会記録(79m10)までは行かないくらいだな、と思いました」
 2投目は助走の途中で試技を中断。
「途中で突風が吹いてきたんです。以前は行っちゃう方でしたが、今は“投げられない”と思ったら止まれるようになりました。冷静になれるようになったといいますか、技術的に何をすれば飛ぶか、わかるようになったからです」
 慌てて助走のやり直しをして好記録が出ることは少ないが、ディーンは81m54と大会記録をきっちりと更新。
「綺麗に飛んだので80mは超えたと思いました。体が突っ込むとやりを押している時間が短くなりますが、2投目は少し上体が残って、やりを素直に押せましたね」
 そして3投目以降はパスした。
「今日の狙いはチームに勢いをつける優勝をすること。大会記録を投げたら、あとはやめるつもりでした」

 体調の悪さとは、ゴールデングランプリ川崎後に風邪を引いていたことを指す。発熱はなかったが咳が続き、それが頭痛にもつながった。前日で「治りかけた」が、当日朝起きたときも万全の体調には戻っていなかった。
「そのなかでも81mを投げられた、という意味では自信になります。体調が悪くても距離が出て、アベレージとして定着しています。3試合連続で体力もなくなっている。それでも投げられたのは、感覚をしっかりとものにできているからです。(クロスへの)助走からの加速もあるし、ラストクロスの後の右、左の接地も上手く行っています。何より、心理的な壁を作らなくなりました。距離に対しての壁といいますか、距離を考えなくても技術をやれば飛んでいく。投げるときに迷いがあったら投げられません。フィンランドチームとの合宿などを経験して、思いきって行けるようになったのが一番ですかね」

 今季は79m台を2試合続けた後、織田記念で84m28とA標準を突破。ゴールデングランプリ川崎が81m43で、関東インカレが81m54。80mスローはまだ3試合だが、ディーンの安定した投てきを目のあたりにし、その話を聞いていると、すでに5〜6試合で80mを投げている印象を受ける。「80m台は何試合めでしたっけ?」と話を向けてみたところ、しばらく間があってから次のような答えが返ってきた。
「3試合めですよ。そのまんまですけど(笑)。でも、感覚的には完全に、80mを超えられるイメージはできています。去年はまだ不安定でしたが、今はいつでも同じ記録を再現できる。次のステージに行きやすい状態と言うことです。(次のステージは)85mです。アベレージが上がってもやれることはあります。技術の安定性とか確認です。調子が良いときは何をしても良いのですが、シーズンを通して安定させていくには、技術や動きの1つ1つを再確認していくことがカギになると思います」

 1週間後の関東インカレ円盤投にも出場するが、やり投の次戦は日本選手権。
「今が(体調的には)良い状態ではありませんから、一回落としてから日本選手権に向けて練習を積み上げていきます。怖いのはケガと体調不良ですから、今まで通り平常心でやっていきます。だからといって守りに入りたくはありませんが」
 記録的な目標は85mということになるが、村上幸史(スズキ浜松AC)との勝負も注目される。日本選手権12連勝中の村上に対し、ベスト記録では上回ったのだ。村上が織田記念、ゴールデングランプリ川崎と右太腿の軽い肉離れを抱えていて、真っ向勝負にはならなかった。
「村上さんも調子を上げてきたなかで1番を取りたい」
 日本選手権に臨むにあたっての気持ちの持ち方について、もう少し突っ込んだ話もしてもらったが、そのあたりは別の記事で(日本選手権展望記事か?)。


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