2012/11/2 彩の国 実業団駅伝前日
女子展望
3区・新谷の爆走が見込めるユニバーサルがV候補筆頭か?
5区の田中で追いつきたい第一生命
1〜3区でリードしたい積水化学
3区の新人・松山がカギを握るパナソニック


 2日に監督会議が行われ、区間エントリーが確定した。女子の区間エントリー一覧表はこちら
 昨年まで2連勝中の第一生命は、ロンドン五輪マラソン代表の尾崎好美を当初からエントリーしていなかった。1区に新人の田中華絵(全日本実業団5000m3位=日本人2位)、3区に駅伝のエース区間を任され続けている勝又美咲、そして5区に世界ハーフマラソン8位の田中智美と、尾崎を欠いても主要区間は豪華な顔触れ。
 山下佐知子監督は「勝ちたいけど、連覇が続くとそこにこだわってしまうので」と、微妙なスタンスで臨んでいる。「ベストかどうかわかりませんが、3区と5区以外は入社1〜2年の、実業団駅伝の経験が少ない選手を起用しました」
 レース展開は3区でユニバーサルエンターテインメントの新谷仁美(ロンドン五輪1万m9位)にリードされることも想定されている。
「5区の田中智美で追いつきたいですけどね」

 そのユニバーサルエンターテインメントを、優勝候補筆頭に挙げる関係者が多い。昨年2位の積水化学・野口英盛監督は「西日本のワコールみたいに、3区で行くんじゃないでしょうか」と話す。「ヨーイドンになったり、3〜4kmで追いつかれたら、今の新谷さんには誰も勝てない」
 ユニバーサルは4区にもワンジュクを置き、5区に那須川瑞穂、6区に堀江知佳とベテランを配した。4区で差を広げ、5、6区も堅実に行ける布陣だ。
「4区が終わって残り16km。1分半あったらどこも追いつけない。第一生命で1分、ウチで30秒が限度では? ウチが勝つとしたら先手を取るしかない」

 積水化学は1区に尾西美咲、2区に昨年の全日本実業団女子駅伝2区区間賞の松崎璃子、3区に清水裕子と、前半が強力なメンバー。
 昨年まで不安定さもあった尾西が今季は日本選手権3位、全日本実業団5000m2位(日本人1位)と大試合でもきっちり力を出し切っている。松崎も115分34秒69と自己記録を大きく更新。清水が故障がちで目標としたロンドン五輪代表には届かなかったが、日本選手権では1万m5位とまとめた。
「6区間とも昨年と同じメンバーですが、この1年で力は付いています」(野口監督)

 3区で新谷に1分負けることも覚悟しているが、1、2区で40秒以上リードできれば、新谷に追いつかれるのが8km以降になる。終盤は新谷もそこまでハイペースを維持できないので、「清水が粘ることができるかもしれない」と野口監督は計算と期待をしている。

 驚かされたのがパナソニックが、3区に新人の松山祥子を起用してきたこと。ハーフマラソンで強さを見せている加藤麻美の5区は予想できたが、ロンドン五輪代表で日本選手権1万m優勝の吉川美香は1区に起用された。昨年1区の中村仁美が補欠に回った影響もあるのかもしれない。
「吉川は当初から、東日本は3区、5区はやらせないつもりでした」と倉林俊彰監督。

 松山は近年の活躍こそないが、薫英女高時代は5000mを15分44秒29(2007年)で走っている選手。関西大では2年で陸上競技部をやめ、個人で走っていたという。今季は1万mで7月に32分27秒23を出している。
「1人でも先頭を走ってレースをつくれるタイプ。遅れていても前を追える選手です」
 スピードがあり、加藤よりも前半区間向きの走りができるということだろう。
 1区の吉川は区間賞候補筆頭。松山がデビュー戦で快走すれば、パナソニックの優勝も十分ある。実業団駅伝の経験のなさがどうでるか。

 どこで勝負が決まるかは、実際のところ蓋を開けてみないとわからない。
 有力チームの1、2区が練習で好タイムで走ったと伝えられているが、練習よりも上げてくる選手もいれば、練習で出し尽くしてしまうケースもある。3区や5区で決定的な展開にならず、昨年のようにアンカー決戦ということも十分あり得る。

 第一生命のアンカーは新人の野村沙世。シーズン前半は体調を上げられなかったが、現在は「練習では1、3、5区の選手と同じレベルでできている。でも、試合ではどうなるか」と山下監督。
 積水化学6区の馬場佐由里は10月13日の記録会5000mで15分54秒22と、「7年ぶり」(野口監督)に自己記録を更新した30歳。
 ユニバーサルの堀江は、昨年の横浜国際女子マラソンで15位と失敗した31歳。続けて挑戦した大阪国際女子マラソンで4位と立て直したのは見事だったが、熱望していた五輪出場はかなわなかった。大阪以降レースにほとんど出ていない。
 アンカー決戦になってもドラマになりそうな東日本実業団女子駅伝である。


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