2012/11/30福岡国際マラソン前々日
前々日共同会見
藤原と川内がお互いを意識したトーク
尾田と堀端も自身の練習に手応え

「プロ選手、実業団選手、市民ランナーと揃ったなかで2時間7分台の記録を目指したい」(川内)
Q.(代表質問)この大会への意気込みは?
ゲブルセラシエ 再び福岡に戻ってこられたことを嬉しく思います。福岡はとても素晴らしい大会で、組織がしっかりしている大会で、大きな国際大会だと思います。日曜日は素晴らしいマラソンをお見せしたい。以前走っているのでコースは知っています。天候的には良い気温で、雨も気になりますが、それ以外は良い状態です。
藤原新 生まれ育った九州の地で走れることを嬉しく思います。初めて福岡に出たのは4年前になりますが、そのときと(自分が置かれている)状況が変わっても走り続けられていることに感謝をしたい。今回の参戦は急きょ決めたわけですが、オリンピックが終わってしばらくはバーンアウトじゃないですけど、燃え尽きたような状態が続いていました。ふと、福岡出場を思いついたときにビビッと、体の芯から走りたいって気持ちになって、できる限り練習してみようと。そうしたら思いの外早く良い体ができました。短期間ですが仕上がりが良く、良い走りができると信じて頑張りたいと思います。
川内優輝 強力な外国勢のなか、またプロ選手、実業団選手、市民ランナーと揃ったなかで2時間7分台の記録を目指したい。これは(2月の)東京マラソン前からの変わらない目標で、東京の結果でオリンピックに漏れてからずっと、福岡を目標にやってきました。そのなかでさまざまな対策をしてきて、海外も多く経験しましたし、日本全国を回るなかで支援、応援をたくさんしていただき、その力をしっかりと力にして、明後日はモスクワで戦える自信をつけたいと思います。
ムワンギ (日本語で)去年福岡を走って2位になれて嬉しかった。今年も良い結果を出したいと思っています。ベストタイムで走りたいです。ハイレさんが強いから、私も強くなりたいと思います。ありがとうございます。
尾田賢典 予定していたオリンピック選考会の2月の東京に、直前に疲労骨折をしてしまって出られずすごく悔しい思いをしました。世界ともっと戦いたい気持ちが強くなり、この福岡に向けてやってきました。今回世界レベルの選手が来日し、国内も強い選手ばかりなので、挑戦する気持ちを持って走りたい。また、福岡は(大牟田高出身の自分にとって)地元なので、地元の人たちに良い走りを見せられるよう頑張りたい。
堀端宏行 3月のびわ湖の結果で選考から漏れてしまい、その後の練習が上手くできませんでした。自分の中で福岡に出ると決意した9月くらいから練習ができ始めてから、すごく順調にできました。その練習の成果をレース本番でキチッと出したい。また今回はすごい顔触れなので、挑戦する気持ちで、物怖じしない走りをしたい。
マサシ 今回が初マラソンです。良い走りをして(自分の)歴史をつくりたい。

「僕も川内君のメソッドを一部真似している」(藤原)
「僕はマラソンは経験の多い選手が勝つと思っています」(川内)

Q.藤原選手と堀端選手に。川内選手がマラソンをいっぱい走っていることをどう思いますか。
藤原 川内君はすごいと思います。僕もそのメソッドを一部真似して、ハーフマラソンには多く出場しています。いずれマラソンにもどんどん出場できる体にして、そうすることを楽しみにしたい。どう思っているか、という質問には、そのくらいできることは素晴らしいことだと思います。自分もそうなりたい。
Q.やりすぎだと思っていませんか?
藤原 半分くらいは(会場から笑い)。
堀端 今の僕の生涯分のマラソンを1年でやっている感じです。ひと言で言い表すなら、“すごい”につきると思います。僕もゆくゆくは何本もこなせるタフな体を作って、そういう記録というか、そういうものに挑戦したい。

Q.川内選手は今年になって7本のマラソンを走ったことが、今回どう生かせると思っていますか。
川内 今年マラソンを7回やって来て、海外もデュッセルドルフ、ゴールドコースト、シドニーと3本走りました。ケニア、エチオピア選手と競るなかで良い経験ができたと思っています。特にシドニーでは30km過ぎまでケニア選手と競り合って、そこから仕掛けて勝つことができました。その相手が強いのかどうかは別にして、色々なレース展開の経験は必ずマラソンに生きてきます。僕はマラソンは経験だと思っています。まだ、僕の世代(学年)でマラソンに挑戦していない人も多いですけど、僕は積極的に挑戦した人間が最後に勝つと思っているので、そのことを証明したい。

「30kmでペースメーカーが外れるまで一緒に行き、そのあと自分の状態を見て考えます」(マサシ)
「ペースメーカーが外れるまでリズム良く、自分の走りをしたい」(尾田)

Q.勝負のポイントはどのあたりだと考えていますか。
ゲブルセラシエ 実際に走り出してみて、みんながレースをつくりながら、ポイントがどこか決まっていきます。25kmかもしれませんし、30km、35kmかもしれません。今の時点でどこと予想するのはとても難しいですね。
藤原 1つ動きがあるとすれば30kmで、ペースメーカーが外れたところです。そこから本当の勝負が始まります。お互いに仕掛け合うということで読めませんが、37km、38kmから動きがある気配がします(笑)。
川内 僕もペースメーカーが外れる30kmだと思っています。ただ、最近僕は30kmまでつききれていません。藤原さんが“手招き”をしたときになんとか食らいついていけるくらいの脚が残っていれば、前についていけると思います。ただ、「30km、30km」と思ってしまうと、3年前の福岡では********(聞き取れず。以下同)、2年前の福岡は*******。そういう展開になる可能性もあるということは頭に入れながら行きます。本当にどこで動くかはわかりませんが、できれば30kmまでは付いて行きたいと思います。
ムワンギ ペースメーカーがいる30kmまでは一緒に走って、35kmまでペースアップすると思います。
尾田 ペースメーカーが外れてから、おそらくペースが上がっていくと思っているので、そこでどう自分が反応できるか、だと思っています。ペースメーカーが外れるまでリズム良く、自分の走りをしたい。
堀端 皆さんと重複してしまいますが、30kmでペースメーカーがいなくなるところがポイントになると思います。そこまでキチッと余裕を持って、ついて行ければな、と思っています。
マサシ 私も30kmでペースメーカーが外れるまでグループで一緒に行き、そのあと自分の体の状態を見て考えます。

「ようやく日本陸連が納得できるレベル(2時間7分台)に引き上げてくれました」(川内)
Q.日本人4選手に。世界選手権の“派遣設定記録”の2時間07分59秒はどう感じていますか。
藤原 2時間07分59秒以内ということですが、もともと1秒でも速く走るっていうスタンスでやってきました。基準のあるなしに関係なく、ベストを尽くして1秒でも速く走る。その結果、2時間07分59秒以内で走れればそれでいいし、それ以上かかったら陸連の判断になりますが、その辺は深く考えないようにしています。
川内 数年前は2時間09分30秒(未満)という、あまり納得のいくタイムではありませんでしたが、ようやく日本陸連が納得できるレベルに引き上げてくれました。もともと2時間7分台を出すことを目標にやってきたので、それに**ようなレースをしたい。
尾田 2時間07分59秒というのは高いレベルですが、世界と戦うことを考えたらそのくらいで走っていないと戦えません。アフリカ勢とは戦えないでしょう。高い設定ですが挑戦しがいはあると思います。
堀端 最初に知ったときは「かなり引き上げられたな」とビックリしました。でも昨年くらいから2時間7分台を目標にやってきています。自分の目標を達成すれば世界選手権切符も勝ち取ることにつながるととらえています。目標とする走りがどれだけできるか。それに尽きるかな、と思っています。

「川内君と戦いたいから福岡出場を決めました」(藤原)
「何回か一緒に練習したときに“それほど上の存在”とは思わなかった」(川内)

Q.藤原選手と川内選手は2月の東京マラソン以来の直接対決ですが、どんなところを意識していますか。この大会への思いと合わせてお答えください。
藤原 意識はしていません…って言うのは冗談で(会場から笑い)、川内君と戦いたいから福岡にしました。良い勝負ができれば、と思っています。川内君が積極的にどう仕掛けてくるか、楽しみです。
川内 藤原さんがエントリーしてくるかわかりませんでしたが、エントリーされてプロ、実業団、市民ランナーと色んな種類の選手が揃って嬉しかったです。どうすれば日本の陸上界が変わるかを********。ただ、僕は東京で藤原さんが手招きをしたときに、(すでに集団から後れて)そこにいませんでした。相手にならなかったんです。もしも今回それをされたときに生き残っていたら、負けるつもりはないですし、何回か一緒に練習したときに“それほど上の存在”とは思わなかったので(★ここで藤原がニヤっとして、会場の笑いがしばらく収まらなかった)……、練習中の勝っている良いイメージを残して30km以降を戦えればと思っています。

「駅伝をはさんで来たことで“バネ切れ”がなくなった」(尾田)
「駅伝の練習をしてきたおかげで、3分というスピードに対して心理的に余裕を持ちながら練習できました」(堀端)

Q.尾田選手と堀端選手に。今回のマラソン練習で、これまでと比べて良かったと感じている点は? 2人とも駅伝前のマラソンは初めてですが、そのことがどう影響していますか。
尾田 春の段階でこの福岡に出ると決めて、夏合宿から9月くらいまではいつも通りの流れでした。10月、11月と1万m記録会、駅伝予選に出てこの大会に持ってきました。今までのマラソンと違って距離を踏みながら駅伝もあったので、スピードの要求される練習も積んできました。東京マラソンのときと比べてもスピードの余裕ができていると思います。今までは長い距離をやると、僕はバネを使って走るので、バネ切れしてスピードの余裕がないことも結構ありました。今回はそれがあまりなくて、長いのもスピードもすごく良い感じで来ています。間に駅伝をはさんで来たことがすごく良い刺激になっています。ニューイヤー駅伝前にマラソンに出ることになりましたが、歴代の先輩方を見ると福岡→ニューイヤーと走っている方もいます。特に問題ないと思います。
堀端 悪かった点からいうと、春先から故障して治って練習して、また故障をしての繰り返しで、夏場は走りがまったく良くない状態でした。しかし今回、駅伝をこなしながらマラソン練習もしてきました。今までは3分ペースが目標の練習だとスピードに余裕がなかったのですが、駅伝の速いスピードが求められる練習をしてきたおかげで、今までより3分というスピードに対して心理的に余裕を持ちながら練習できました。

「タイムだけで選ぶのなら、全員を同じレースで争わせるのが正しいやり方」(ゲブルセラシエ)
Q.ゲブルセラシエ選手は目標タイムはどのくらいを考えていますか。また、日本の世界選手権“派遣設定記録”を聞いて、どう思われましたか。
ゲブルセラシエ 今回も記録は、良い記録を出したいと考えています。福岡のコースは2時間5分台が出せるファストコースです。ただ、天候の心配もありますから、ここで何分と言い切るのは難しいです。日本の“派遣設定記録”のことですが、ベルリンやシカゴのように記録のでやすいコースか、ボストンやニューヨークのように難しいコースか、そして出場するメンバーやペースによって違ってきます。タイムだけで選ぶのでなく、世界選手権で戦える選手を選んでほしいと思います。タイムだけで選ぶのなら、全員を同じレースで争わせるのが正しいやり方です。オリンピックでも、タイムだけで選ばれた選手が途中で良い走りができなくなったことがあります。タイムにこだわるだけでは世界と戦えないと思います。

「プロ、市民ランナー、実業団と色々なアプローチがあっていい」(尾田)
「藤原さんと川内君の勝負に水を差さないよう、僕は自分の走りをしたい」(堀端)

Q.尾田選手と堀端選手に。世間はプロランナーの藤原選手と市民ランナーの川内選手に注目しています。実業団で戦う選手として、そのことをどう考えていますか。
尾田 プロ、市民ランナー、実業団と色々なやり方があると思います。特に僕自身、意識していませんし、マラソンに向けて色々なアプローチがあっていいと思います。
堀端 尾田さんとほとんど同じ意見になりますが、プロ、市民ランナー、実業団と、それぞれが自分で選んだ道です。一概に誰が一番良い練習環境とか比較するのもどうかと思います。世間の注目は藤原さんと川内君ですから、その勝負に水を差さないよう、僕は自分の走りをしたいと思っています(会場から笑い)。


寺田的陸上競技WEBトップ