2011/11/18 横浜国際女子マラソン前々日
日本6選手の会見を完全再現
「横浜で世界陸上よりも何か少しでも良い走りをして、今後に向かえる何かをつかみたい」(尾崎)


「駅伝レースを使いながらスピード寄りの練習をしてきた」(尾崎)
Q.(代表質問)現在の調子と、どういった練習をしてこられたかを教えてください。
尾崎好美 10月くらいまで疲労もあって思うような練習ができないこともありましたが、11月の東日本実業団駅伝くらいから本来の走りができるようになってきて、この大会に向けて少しずつ調子が上がってきました。練習は世界陸上が終わってから9月いっぱいまで、体調を上げるような内容でした。10月に、阿蘇でのチームの駅伝合宿に合流しましたが、すごく距離を踏んだわけでもなく、スピードを上げたわけでもありません。どちらかというとスピード寄りの練習でしたけど。駅伝レースを使いながらスピード寄りの練習をしてきたという感じです。
堀江知佳 東日本実業団駅伝の前までボルダーで合宿して、走り込むことはできました。でも、毎日走っていたなかで、今日はよくできたな、と自信を持てる日はほとんどありませんでした。どちらかといえば不安の方が多かったと思います。しかし、横浜に来る前の最終刺激で、(小出義雄)監督からよく仕上がったな、と言ってもらえました。現在の調子はちゃんと上がってきていると思います。
永尾薫 7月からボルダーで高地合宿を長期間してきて、走り込みとスピード練習と、今までにやったことのない練習をしてきました。最初は思うように走れませんでしたが、時間をかけた甲斐あって今は調子が上がってきていると実感しています。
木崎良子 先週から今週初めにかけて合宿疲れがなかなか抜けず、体がダルい日が多かったのですが、今週に入って刺激やポイント練習を入れると、調子が上がってダルさも抜けてきました。脚も痛みから張りに変わって、調子がどんどん上がってきています。6月から7月に北海道で走り込んで脚づくりを行ってきました。8月のアメリカ合宿でもう一度、土台となる脚づくりを行って、9月にスピード練習として一度、記録会に出場しました。10月にアメリカに戻って1人で、最後の土台とレース勘を持つため、スピード練習をしてきました。
藤田真弓 現在、不調や故障はなく、しっかりと練習が積めてきています。この大会に向けては8月から、徐々に距離を伸ばして、駅伝練習と合わせながら、距離を中心にやってきました。
吉田香織 コンディションは普通に、まあまあだと思います。トレーニングの流れは7月、8月と毎週40km走を入れ、脚をしっかりとつくりました。9月に一度、疲労を抜くように心がけて、10月にスピードを戻して今に至る感じです。

応援してくださる人に恩返しをする思いで走りたい」(木崎)
Q.(代表質問)今大会の目標は何でしょうか。できるだけ具体的にお答えください。
尾崎 オリンピック選考レースなので選考は頭にありますが、世界陸上で力を出し切れなかった悔しさがあるので、今回のレースでは自分の力を出し切りたい、という思いが強いです……優勝できればそれが一番いいのですが、ゴールしたときに力を出し切った思えれば、その結果には満足できると思うので。タイムとかは走り出してから決めたいと思います。
堀江 具体的なタイムは描いていませんが、4年前の選考会(2008年名古屋国際女子マラソン)では自分から仕掛けて逃げ切れませんでした。オリンピック切符が取れなかった。そのための4年間を、この日まで頑張ってきました。夢を叶えられるよう、優勝目指して頑張りたいと思います。
永尾 前回(今年2月の第2回横浜国際女子マラソン)は35〜36kmで離れてしまいました。そのときは(急きょ出場することになり)30kmまで先頭につくことが目標でした。30kmまでつくことはできましたが、自分の中でそこでゴールしてしまったんです。今回は42.195km、最後まで勝負に参加して、優勝を目指して頑張りたいと思います。
木崎 過去2本マラソンを走って、どちらも最後まで勝負に参加できなかったので、3回目となる今回は最後まで粘って、あきらめない走りをしたいです。横浜を走れることに感謝をして走りたいですし、応援してくださる人に恩返しをする思いで走りたいと思います。
藤田 前回も横浜を走らせていただきましたが、自分の走りができずに、横浜が悔しい思い出となってしまいました。今回はしっかりと力を出し切って、横浜を良い思い出にできるようにしたいです、タイムは2時間28分を切って、自己記録を更新することが目標です。
吉田 自分よりも実力のある選手ばかりなので、皆さんの胸を借りて、最低でも自己新を出せたらと思っています。

「世界陸上では考えが浅い部分があったので、そこを見直しました」(尾崎)
Q.尾崎さんがテグの世界陸上で学んだことは何でしょう? そして、それを今回どう生かしたいと思っていますか。
尾崎 世界陸上前は金メダルを取ると言い過ぎて、自分で自分にプレッシャーをかけて潰れてしまった部分も少しありました。それだけでなく、まだまだマラソンへの姿勢が弱かったというか、考えが浅い部分があったので、そこを見直すことができました。見直して横浜に向かうことができたので、世界陸上が走れず気づけたことがあったな、と思います。あと、世界陸上ではアフリカ勢との力の差を改めて感じました。横浜で海外勢との力の差を埋める走りができるか。そこは自信がありませんが、これからそこを見ての努力をして、埋めていくことが目標になります。そこに向けて、この横浜で世界陸上よりも何か少しでも良い走りをして、今後に向かえる何かをつかめたら。そういう気持ちでいます。

「ペース設定に不安がないと言ったらウソになりますが、きつくなってからのレースに不安はない」(堀江)
Q.オリンピック選考レースでは初めてペースメーカーがつき、16分50秒から55秒という設定になっています。その速さをどう利用するつもりですか。
尾崎 前回大会も同じくらいのペース設定で行ったので、不安はありません。自分で行くよりも人の後ろにつかせてもらうことの方が得意なので、リラックスして、力まずに行けたらいいかな、と思っています。あとはペースメーカーがいなくなってからの走りが大事です。そこから大きく崩れないようにしたいと思っています。
堀江 私自身、スピードがある方ではありません。今回の設定ペースは、私のマラソンの入りとしては速いので、不安がないと言ったらウソになります。そのペースに乗って行ければベストですが、速く感じてきつくなったときに頑張れるのが自分の特徴です。ペースに対する不安がないというよりは、きつくなってからのレースに不安はないと言った方がいいと思います。上手く利用していきたいですね。
永尾 前回はペースメーカーが上手に引っ張ってくれたおかげで、良い記録で走れたと思っています。今回も、ちょっとだけそれよりも速いペースですが、前回と同じように引っ張ってくれる。気象状況とか影響すると思いますが、上手く利用していきたいですね。いなくなったときに自分がどこまで頑張れるかが大事だと思っています。
木崎 ペースメーカーに引っ張ってもらっているうちはリラックスしてついて行きたいです。課題はそこから、25kmを過ぎてからです。そこをしっかりと走れるように頑張りたい。
藤田 自分の今の力からすると厳しい設定になります。いつも物事を硬く考えるところがありますが、引っ張っていただくペースにすごくとらわれるような考えをしないで、自分の走りをしていこうと思っています。
吉田 前回よりも速い16分50秒ペースは自分にはちょっと速いので、自分のペースを守って行きたいと思っています。

「オリンピックは“やるからには行きたい”」(永尾)
Q.ずばり、何がなんでもオリンピックに出たいと思っていますか。イエスの方にはオリンピックへの思いをうかがいたいと思います。オリンピックへの思いがどう変わってきたかも、お話しいただけると嬉しいです。
尾崎 実業団に入ってからオリンピックは夢の舞台でした。最初はぼんやりと出てみたいと思っていましたが、少しずつ力がついてきて、結果を残せるようになってきて、手が届きそうだなと思い始めてからは、本当に出たい目標に思えるようになりました。今回も一番オリンピックに出たいと思っている人が勝つと思うので、そういう思いは一番強く持ちたいと思っています。それが変なプレッシャーになったり、自分の力みにならないよう、内に秘めて走りたいと思います。
堀江 オリンピックに出たいか、という質問に対してはもう、“イエス、イエス、イエス、イエス”という感じなんですが、4年前、北京オリンピックの選考レースで結果的にダメだったのですが、それまで夢だったオリンピックが、あのレースをきっかけに夢から目標に変わった気がします。でも、目標になってからの方が怖くなったというか、目標を達成しなければという思いが強くなりすぎて、空回りしてしまった部分もたくさんありました。だからもう一度夢に戻すかといったら上手く言えないのですが、夢だった頃の純粋さで素直に行きたい。そういう思いでやっていけたらと思っています。かといって、行ける自信があるかというと1%もありません。自信はないのですが、支えてくれているみんなのおかげでここまでやってこられている、という思いが29%くらいあります。あとの70%は気合いと行きたいという気持ちでやっていきます。
永尾 行きたいかという質問に対しては、“やるからには行きたい”と思っています。自分は入社当初、オリンピックのことは考えていませんでした。チームに残れるか、何年やれるかというレベルだったんです。ただ、マラソンをやりたいという思いはあって、前回の横浜で走れたことはすごく嬉しかった。オリンピックというと、次のリオデジャネイロもありますが、今回のロンドンもすごく大事かなという思いもあります。やっぱりオリンピックは4年に1回しかチャンスがありません。つかめるときに思い切って行きたい、と思っています。
木崎 こういうチャンスはめったにないので、オリンピックには出場したいと思っています。陸上をやって来られたのは多くの応援があったからです。今まで何回もやめそうになったことがありましたが、それでも支えてくれた人のためにも、最高の舞台に立って、最高の走りをしたいと思います。だからオリンピックには出たいと思っています。
藤田 永尾さんの言葉と少しかぶるのですが、入社当初は(実業団に)残れるかどうか、というレベルでした。入社3年目に今の監督に出会って、こうしてマラソンを走ることができるようになりました。でも、今の力ではオリンピックは夢でしかありません。これからもっと力をつけて、“出たい”とか、“狙います”と言える選手になりたいです。
吉田 オリンピックは実力からすると遠い存在ですが、1%でも望みがあるならチャレンジしていきたいです。

「世界陸上まで練習を積んできたベースが残っているうちに次のマラソン練習を」(尾崎)
Q.尾崎さんが世界陸上が終わって横浜に出たいと決めた経緯は? その過程で監督とどんな話をされましたか。
尾崎 世界陸上が終わった直後は、マラソンはいいかな、と思いました。でも、納得できない部分があって、もう一度走りたいと思いました。どのレースにしようかと考えたとき、世界陸上のダメージがものすごく残っている感じがありませんでした。世界陸上までマラソン練習を積んできたベースが残っているうちに、次のマラソン練習を始めたら今までよりも良い練習ができるのでは、と思って横浜に決めました。監督との話は今までと変わったことはありません。練習ができない時期に色々と話したこともありますが、そこはまあ、マラソンに対する気持ちの面で話をしました。

「市民ランナーの方にとって励みとなったり、目標でいられる存在で居続けられたら」(吉田)
Q.堀江さんと吉田さんは、何回目のマラソンですか? ベテランらしさをどう発揮しようと思っていますか。
堀江 すいません。回数は覚えていないのですが、覚えていないくらい経験をさせてもらってきました。そのなかには優勝させていただいたこともあれば、途中棄権したこともあります。良いところも悪いところも全部わかっていると思っています。自分の信念としてはレースの中で必ずどこかで見せ場を作りたい、ということがあります。そして自分で楽しんでレースをつくれたときに、見てくれている人からも良かったよと言ってもらっています。今回もそういうレースができるようにしたいですね。
吉田 確か14回目くらいだと思います。仕事として走るマラソンもあるので、実業団選手よりも回数は多くなりますが、1回1回違ったレースの内容ですし、ベテランといえることは全然ありません。クラブチームでやっているので、市民ランナーの方にとって励みとなったり、勇気づけることになったり、目標でいられる存在で居続けられたらいいなと思ってマラソンを走ろうと思います。


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