日本選手権2011・日付毎展望
混成競技編
右代の8000点への挑戦が焦点
10連勝のかかる七種・中田


●男子十種競技 エントリーリストmDEC
 右代啓祐の8000点への挑戦が焦点となる。4月の日本選抜和歌山大会では優勝したが7825点にとどまった。2日目のやり投で失敗したのが響いたが、初日の雨の中を8000点ペースで進められたのは収穫だった。「8000点へ向けて準備はできている」と本人も手応えを感じていた。前回世界選手権代表の池田大介は和歌山を欠場。冬期練習が遅れていたところに震災があり、棒高跳などの練習ができなかったため無理をしなかったという。現状では右代有利だが、池田もここ一発に強いので侮りがたい。和歌山2位の音部拓仁、同3位の田中宏昌に加え、走種目を得意とする中村明彦、昨年の日本選手権2位の村田龍、同3位の染谷幸喜らが7500点以上で争うか。
=陸上競技マガジン6月号記事。以下同
■世界選手権標準記録 8200/8000
■突破者 なし

右代の8000点への展開は?
2位争いも熾烈になるか?
 右代啓祐(スズキ浜松AC)の日本人初の8000点への挑戦が一番の焦点となる。ということで、右代の2008年群馬リレーカーニバル以降の主だった試合の内訳を紹介しておく。
右代啓祐の主要大会成績
2009群馬リレーカーニバル 2010日本選抜和歌山 2010日本選手権 
種目 記録 得点 累計 種目 記録 得点 累計 種目 記録 得点 累計
100m 11"53 (-0.6) 746 746 100m 11"27(+1.9) 801 801 100m 11"45 763 763
走幅跳 6m87 (+2.1) 783 1529 走幅跳 6m84(+1.0) 776 1577 走幅跳 7m18 857 1620
砲丸投 13m61 704 2233 砲丸投 13m41 692 2269 砲丸投 13m35 689 2309
走高跳 2m02 822 3055 走高跳 2m05 850 3119 走高跳 2m02 822 3131
400m 50"88 774 3829 400m 50"61 787 3906 400m 50"58 788 3919
110mH 15"23 (+1.7) 822 4651 110mH 15"16(+0.2) 830 4736 110mH 15"17 829 4748
円盤投 45m26 772 5423 円盤投 45m36 774 5510 円盤投 45m56 778 5526
棒高跳 4m60 790 6213 棒高跳 4m70 819 6329 棒高跳 4m50 760 6286
やり投 73m82 948 7161 やり投 69m49 882 7211 やり投 68m33 864 7150
1500m 4'37"65 695 7856 1500m 4'33"94 719 7930 1500m 4'39"52 683 7833
2010アジア大会 2011日本選抜和歌山 
種目 記録 得点 累計 種目 記録 得点 累計
100m 11"37(+1.3) 780 780 100m 11"37(-1.6) 780 780
走幅跳 6m74(-0.1) 753 1533 走幅跳 7m03(+1.8) 821 1601
砲丸投 13m93 724 2257 砲丸投 13m68 709 2310
走高跳 1m94 749 3006 走高跳 1m99 794 3104
400m 51"14 763 3769 400m 50"80 778 3882
110mH 15"39(+0.9) 803 4572 110mH 15"28(-0.1) 816 4698
円盤投 43m44 735 5307 円盤投 45m75 782 5480
棒高跳 4m70 819 6126 棒高跳 4m80 849 6329
やり投 68m57 868 6994 やり投 65m73 824 7153
1500m 4'35"66 708 7702 1500m 4'41"34 672 7825
 今年の和歌山がそうだったように、走高跳ややり投の得意種目で自己記録を更新するのは簡単なことではない。苦手意識のある100 mや400 m、砲丸投や円盤投などで頑張っておくと楽な展開に持ち込むことができる。
 参考までに、金子宗弘の日本記録の内訳も掲載しておく。
金子宗弘の日本記録(1993東アジア大会)
100m 11"23 (-0.2) 810 810
走幅跳 7m27 (+2.0) 878 1688
砲丸投 13m48 697 2385
走高跳 2m02 822 3207
400m 49"61 833 4040
110mH 14"43 (+1.9) 920 4960
円盤投 45m80 783 5743
棒高跳 4m90 880 6623
やり投 60m24 741 7364
1500m 4'47"90 631 7995

 2位争いも面白くなってきた。
 2年前の世界選手権で自己新と健闘した池田大介(富士通)が普通の状態なら最有力候補だが、陸マガ記事で紹介したように練習不十分で和歌山を欠場。田中宏昌(モンテローザ)も7803点の自己記録は5年前のもので、今年の和歌山は7130点にとどまっている。
 2人とは逆に勢いがあるのが、5月の東海インカレで7675点の自己新を出した中村明彦(中京大)だ。そのときの内訳からもわかるように走種目を得意とし、東海インカレ1日目の4090点は初日の日本最高記録だった。
 今季の状態では中村の2位が有力だが、池田と田中も黙ってはいないだろう。池田は東日本実業団はやり投に出場して6位(62m37)だった。自己記録には届かなかったが悪い記録ではない。
 2位に入ればアジア選手権代表入りの可能性が濃厚になる。田中は前回アジア選手権優勝者でもある。2位とはいえ譲れないポジションだ。
田中宏昌、池田大介、中村明彦の自己記録
田中宏昌自己記録
(2006和歌山)
池田大介自己記録
(2009世界選手権)
中村明彦自己記録
(2011東海インカレ) 
100m 10"87(+1.2) 890 890 100m 11"16(-0.3) 825 825 100m 10"73(±0) 922 922
走幅跳 7m16(+2.5) 852 1742 走幅跳 7m09(+0.8) 835 1660 走幅跳 7m47(+0.6) 927 1849
砲丸投 12m07 611 2353 砲丸投 13m43 693 2353 砲丸投 11m13 554 2403
走高跳 1m87 687 3040 走高跳 1m87 687 3040 走高跳 2m00 803 3206
400m 49"85 822 3862 400m 49"28 848 3888 400m 48"52 884 4090
110mH 15"06(+2.3) 842 4704 110mH 14"90(+0.3) 862 4750 110mH 14"29(-0.5) 937 5027
円盤投 40m21 669 5373 円盤投 39m72 659 5409 円盤投 31m63 497 5524
棒高跳 5m10 941 6314 棒高跳 4m60 790 6199 棒高跳 4m30 702 6226
やり投 63m94 797 7111 やり投 63m73 794 6993 やり投 53m42 639 6865
1500m 4'38"22 692 7803 1500m 4'22"39 795 7788 1500m 4'20"22 810 7675


●女子七種競技 エントリーリストwHEP
 中田有紀が10連勝に挑む。しかし、日本選抜和歌山大会1週間前に腰に違和感が出て、同大会は最初の100 mHから中田らしい動きができなかった。1日目最後の200 mを欠場でなく少し走って途中棄権したのは、2日目の走幅跳とやり投で試したいことがあったから。走幅跳は記録なしに終わったが、やり投は37m76を投げて終了した。5月3日の静岡国際には走幅跳単独種目で出場。5m57に終わったが腰は快方に向かっているようだ。残り1カ月で完治すれば中田に敵はいないが、準備不足で5500点を下回るようだと勝負はわからない。悪コンディションの和歌山に5132点で優勝した桐山智衣、同2位の竹原史恵、同3位の本多綾にもチャンスが出てくる。
=陸上競技マガジン6月号記事。以下同
■世界選手権標準記録 6150/5950
■突破者 なし

中田が復調していれば10連勝は確実
若手の桐山に勢い

 中田有紀(日本保育サービス)がどこまで復調しているか。走幅跳に出場した静岡国際の後は、中部実業団の100 mHに出場して14秒60(+1.8)だった。本人のブログによれば状態は上向きのようだ。不安は残るが優勝候補筆頭の座は揺らがない。
 中田の日本記録と、昨年の日本選手権とアジア大会の内訳を紹介しておく。
中田有紀の日本記録と昨年の日本選手権&アジア大会成績
2004日本選手権 2010日本選手権 2010アジア大会 
100mH 13"97 983 983 100mH 14"01 977 977 100mH 14"03(+1.1) 974 974
走高跳 1m75 916 1899 走高跳 1m69 842 1819 走高跳 1m65 795 1769
砲丸投 11m74 644 2543 砲丸投 10m61 569 2388 砲丸投 11m30 615 2384
200m 25"02 885 3428 200m 26"16 783 3171 200m 25"59(+2.2) 833 3217
走幅跳 6m41 978 4406 走幅跳 6m30 943 4114 走幅跳 5m97(+1.7) 840 4057
やり投 43m16 728 5134 やり投 44m66 757 4871 やり投 44m67 757 4814
800m 2'19"76 828 5962 800m 2'21"78 799 5670 800m 2'22"32 792 5606

 2位候補筆頭は桐山智衣(中京大)だろう。4月の和歌山は初日の雨にも災いされて記録的には良くなかったが優勝した。5月の東海インカレには5463点の東海学生新で圧勝しただけでなく、100 mHで13秒55(−0.2)の東海学生新、走幅跳にも5m87(−0.9)で勝って絶好調である。
 上の中田の内訳と下の桐山の内訳との比較で、中田が昨年のような得点の仕方だと、初日から2日目の走幅跳まで桐山がリードする可能性もある。
桐山智衣の2011東海インカレ
100mH 13"69(+0.3) 1023 1023
走高跳 1m59 724 1747
砲丸投 11m60 635 2382
200m 24"71(+2.7) 914 3296
走幅跳 5m90(-1.1) 819 4115
やり投 37m59 621 4736
800m 2'27"27 727 5463


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