2011/10/29 かわさき陸上競技フェスティバル第2週
男子1500m日本記録保持者の小林がラストラン
レース後の一問一答
「一番印象に残っているのは日本記録です」

「良い選手生活だったな、と思っています」
Q.ラストランを走り終えた今の気持ちは?
小林史和 本格的に1500mを始めたのは社会人になってからですが、2000年に入社して11年間第一戦で戦ってこられて、思っていた以上の数の仲間が祝福してくれて、感慨深いものがあります。人との縁を大事にしてきたからでしょうか。良い選手生活だったな、と思っています。込み上げてくるものがありましたし、これから徐々に実感していくのかな、とも思います。
Q.今日の記録が3分47秒12だったことをどう思いますか?
小林 最後としては頑張ったと思います。僕の中でですが、最後まで抜かずに走りきることができました。最後ということでいつもより考えることが多かったですね。鐘を聞いたときは“あと1周で終わりか”、ラスト200mでは“あと200mで終わりか”と。
Q.一番印象に残っているのは日本新を出したことと国体の際に話していましたが?
小林 日本記録を出したレースが色々な意味で印象に残っています。レースを迎えるまでの具体的なイメージの描き方や高揚感、モチベーションの高さなど、レベルが高いことができました。一番に良い時期だったと思います。色んな分野で印象に残っているレースがありますが、一番は日本記録でした。
Q.記録はもっと更新できた?
小林 さらに日本記録を更新したい、というスタンスでやって来られたから、この年齢まで一線で走って来られたのだと思っています。3分40秒切りは通算9回※調べられると思うので、3分30秒台全パフォーマンスを掲載予定。10回まで行きたかったですけど悔いはありません。

「指導する立場で貢献していきたい」
Q.引退を決めた理由や経緯は?
小林 次のことをそろそろ考えないといけないと思い始めて、会社とも相談を始めました。言葉は悪いのですがボロボロになるまで続けるか、一線で活躍できているうちにスマートにやめるのか。今年はNTNとしても新しい総監督(亀鷹律良氏)を迎えて変革期にあります。いつまでも選手でいるより、指導する立場で貢献していきたいと考えるようになりました。次に向けて自分の力を試したいということで、今年のトラックでやめることにしました。駅伝を走ることはないと思います。
Q.今後は指導者の道を歩む?
小林 スタッフという位置になります。来年から数年間、NTNから出向という形で外に出て、指導者関連の資格を取ったり、コーチングのスキルを学んでいく予定です。外に出てさらなる知識を得て、深めていきたい。
Q.NTNは中距離に積極的に取り組んでいる会社ですが、大学などでは良い選手が長距離に引っ張られていってしまいます。日本人が中距離を続ける難しさがあると思うのですが?
小林 その通りだと思います。中距離がもっと続けられる環境にならないといけない。選手だけの頑張りでは限界があります。企業や指導者の理解が求められる部分です。マラソンもスピード化していて、中距離のスピードを無視できない状況になっています。走っていたらなんぼという考えを改めて、僕らがスタッフになったときに新しいスタイルでできたらいいな、と考えています。陸上界全体で中距離ブロックと長距離ブロックの関係も模索していきたい。

「(箱根駅伝に取り組んだことは)あれはあれで良かった」
Q.やり方次第では日本人も中距離で戦える?
小林 そう思います。3分40秒を切る選手も、もっといると思うんです。5000mで13分30秒を切る選手は確実に増えていますから。渡辺(和也・四国電力)や上野(裕一郎・エスビー食品)がそれを示しています。(その2人は1500mも頑張っているが)中距離を重要視しないのはもったいないと思います。
Q.大学で1500m用の練習をしていればよかった、という気持ちはありますか?
小林 あまり考えたことはないですね。箱根駅伝をやったからスタミナが付き、1500mに戻ったときに“ロングスパートの小林”と言われるようになったり、中間走を落とさない下地になりました。あれはあれで良かったと思っています。選手人生全体を振り返ると、順風満帆にやってこられたと感じています。
Q.高校で5000m、大学で20kmというパターンが主流になっていることについては?
小林 どういうスタイルが良いか、これから勉強していかないとなんとも言えません。早いうちにマラソンを、と言う人もいれば、トラックのスピードをつけてからマラソンを、という人もいます。正解はないと思いますが僕は中距離で育った人間です。スピードで戦ってこそマラソンでも通用するという考えで行くつもりです。

「(1500mの魅力は)ひと言でいえば“面白い”こと」
Q.1500mの魅力は?
小林 ひと言でいえば“面白い”ことです。しんどいですけど面白い。レースパターンも速くなったりスローになったり何パターンもあって、その中で経験を積んだ選手が強くなっていきます。世界はほど遠い状態ですが、800mもそうですが、徐々に記録が出始めています。僕に誰が続くか、横田(真人・富士通)に誰が続くか。
Q.競技生活を総括できる言葉や、キーワードとなった言葉などありますか。
小林 ありきたりですが“感謝”という言葉になると思います。僕の競技人生は指導者に恵まれ、ライバルに恵まれ、中距離の仲間に恵まれてここまでやって来られました。


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