2011/10/23 2011実業団女子駅伝西日本大会
5km通過はトラックの自己記録を上回る15分24秒
全盛期のスピードが戻った野口が大阪国際女子でマラソン復帰を表明
「2時間20分とか21分とかで走りたい」


 周囲をアッと言わせた野口みずき(シスメックス)の復活劇だが、驚くべきはこれだけ長期間のブランクがありながら、“スピードから戻してきたこと”だ。

 出場したのは3区の10.2km。トップでタスキを受け取ると、以前と同じ力強い腕振りでスタート。1kmを2分59秒で通過した(通過タイムは中継テレビ局からの情報。以下同)。
「最初は下っていたので思い切り行けましたから、そのくらいでは行くんじゃないかと思っていました」
 野口自身も驚いたのはその後だ。5km通過は15分24秒で、15分30秒04のトラック5000mの自己記録(2007年)を上回った。
「無我夢中でした。1km以降も自分でチェックしていたのですが、まさかというタイムで、計測が間違ったんじゃないかと思いました」

 ケガによるブランクから復帰する場合、一気にトップスピードまで戻すことは難しい。練習をスピード的に追い込むと、ケガが再発するおそれがあるからだ。小さな試合などに出て故障の回復具合を見ながら、徐々にスピードの負荷を上げていくのが普通だろう。
 それを野口は、練習中にやっていたことになる。
 昨年12月に舟状骨の疲労骨折が判明。4カ月間のブランク後に練習を再開したが、6月中旬に今度は左側のお尻の上部分を肉離れ。その故障を治す過程で「(北京五輪前に故障した)古傷の方も奇跡的にゼロに近い状態」(野口)に回復したという。
 本格的な練習再開は8月。廣瀬永和監督は「7月にハーフマラソンを入れたかったのですが、それが6月のケガで出場できませんでした。しかしちょっと休んだら、どんどん良くなってきました。本人も気になる部分が少なくなり、どんどん質を上げられるようになったのです」と説明した。

 経過を文字にすると上記のようになるが、レースを使わずにこれをやり遂げるのは並大抵のことではない。「コツコツと筋トレやリハビリに取り組みました。継続してやっているので、体型は変わっていません」と廣瀬監督は言う。以前に野口の筋トレと補強を見たことがあるが、走り以外のトレーニングでここまで追い込むのか、という印象を受けた。今回のリハビリも想像を絶する取り組みをしたのではないか。それがなければ、ここまでトップスピードを戻すことはできないだろう。

 10km通過は31分47秒で、後半の5kmは16分23秒を要した。「後半は落ちてしまいましたね。5km過ぎからお腹が痛くなったことがロスにつながりました」。最後の1〜2kmは海岸沿いで向かい風も強かったことも影響した。だが、「チームのみんなの顔が思い浮かんで、残る力を振り絞れました」と、落ち込みを最低限にとどめた。
 トラック1万mのベスト記録は31分21秒03(2004年)で、それに近いタイムで走った。10kmまたは1万mを31分台で走ったのはいつ以来か「ちょっと記憶がない」(野口)くらいだ。トラックでは2006年の31分50秒13が最後の31分台なのだが。

 来年1月末の大阪国際女子マラソンが、4年2カ月ぶりのマラソンになる。廣瀬監督は「スピード的にはある程度戻ってきました。これからマラソン練習のなかで距離を踏んだり、スタミナづくりをしていきます。ここまでは順調に来ていますね」と、今後の練習方針を示した。
 女子の選考レースは中間点を1時間11分で通過するペースメーカーがつく。野口は「具体的なタイムはまだちょっと考えていない」としながらも、「2時間20分とか21分とかで走らないと戦えないと思う」と言う。女子単独レースの日本最高が、野口が2003年の大阪国際女子で出した2時間21分18秒である。全盛期のスピードを取り戻した野口なら、そのタイムをクリアしても不思議ではない。


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