2011/10/1 埼玉県実業団長距離記録会@東洋大川越キャンパス陸上競技場
柏原が終始レースを引っ張って13分55秒93
ロードシーズンに向けて好感触
「3大駅伝は全部優勝したいです」

 柏原竜二(東洋大4年)がスタート直後から先頭に立ち、レースを引っ張り続けた。17:50のスタートでかなり涼しかったが、風は少しあった(気になる選手が気にしていたくらいだが)。
 レースは4000m前に田中貴章(東洋大4年)、設楽啓太(同2年)らが後れてトップ集団は4人に絞られた。柏原、市川孝徳(同3年)、池邉稔(Honda)、川上遼平(東洋大4年)。残り400 mで池邉が柏原の前に出たが、柏原が最後の直線でスパートしてトップでフィニッシュ。ラスト1周は63秒47だった。
 1000m毎の通過タイムは以下の通り(寺田の手動計時。フィニッシュは正式計時)。
2分43秒95
5分31秒81(2分47秒86)
8分20秒42(2分48秒61)
11分09秒86(2分49秒44)
13分55秒93(2分46秒07)
 絶妙のペースメイクぶりだったといえるだろう。3位の川上、4位の田中、5位の市川、6位の設楽悠太(東洋大2年)が14分台ヒト桁と、この時期としてはまずまずのタイムでフィニッシュ。レース後の柏原は「今日は全然苦しくなかった」「やったぜ」という言葉を、チームメイトたちと交わしていた。

 8月7日に十和田八幡平駅伝に出場しているが(上りの続く5区14.1kmで49分01秒の区間新。区間2位に1分50秒差)、トラックレースはシーズン前半以来。この日の柏原は2つの目的を持っていた。
 1つめはチームメイトを引っ張ること。
「2分45秒で入るからと皆に言っていましたし、監督からは3000mを8分20〜25秒で行くように言われていました。良いペースを作れたと思いますし、波のない引っ張り方ができたと思います。最後はラスト100mまで我慢して、そこで一段階切り換えられたらと思って走っていました」
 もう1つは自身の感覚を駅伝に向けて調整していくこと。
「10kmの中の5000mという感覚を持ちたかったんです。出雲は5km以上の距離ですから、5kmでいっぱいいっぱいになっていたら大変です。実際、余裕を持って行けたので良かった」

 10月10日の出雲全日本大学選抜駅伝で開幕する駅伝シーズン。学生最後の年ということで柏原の思い入れは強い。夏にヨーロッパで記録を狙う話もあったが、「駅伝に懸けたい」という理由で遠征しなかった。7月、8月は「月間1000kmを走ったかもしれない」と言う。だが、他の東洋大の選手たちはもっと走っていた。
「みんな勝ちたい、速くなりたい、強くなりたいという一心で夏の2カ月間をやってきました。それを見て僕もやばいな、と思った。特殊区間があるから大丈夫という考えではなく、出雲や全日本を争ったら危ないんじゃないかと危機感を持てました」
 その切磋琢磨のなかで「4年間で一番良かったと思う」という練習をこなすことができた。

 東洋大は前回の箱根駅伝で3連勝を狙っていたが早大に阻止された。早大は学生駅伝3冠も達成。今季は東洋大キャプテンの柏原が「3大駅伝は全部優勝したいです」と言う。しかしそれは、早大の3冠を見せつけられたからではないという。
「学生最後ですし、4年生9人のメンバーで4年間やってきました。特に去年は、わがままも言わせてもらいました。第一前提は自分のためですけど、今年はチームのために、みんなのためにしっかりと走りたい。力になりたいと思っています。だから、最初から負ける意識でやりたくありません。出雲は例年、新戦力を試す場でしたが、今年は、そうして成長した選手や主力選手がメインになる。圧勝でなくてもいいんです。1秒でも勝てば勝ち。どんなに泥臭い勝ち方でも勝ちにこだわります」
 柏原がここまで勝利への執念を見せたことはかつてなかった。この日のレースのように、柏原がチームを引っ張っている。


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